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第2話Another side 1(小説版限定ストーリー)

「地球を壊すことが可能な人たちと、普通の中学生の私たちが戦えるわけないじゃん!」

 突然聞こえてきた少女の大声に、碧月りんねは驚いて顔をあげた。一緒に昼食を食べていた友人達も、何事かと声のした方向に顔を向けている。

(あれは……桜宮さん?)

 屋上の隅に、三人の生徒が固まって座っている。声を発したのは、ピンク色のカーディガンにお下げ髪の小柄な少女、桜宮まつりだった。りんねのクラスメイトである彼女の傍にいるのは、同じくクラスメイトの汐風ゆららと和泉 藍。転校生の藍とあの二人が仲良くしているのは知っていたが、三人の雰囲気はどことなく不自然だった。一体あんな隅で何をしているのだろうか。

「何だろう、劇の練習かな?」
「さぁ。そんな事より、早く食べないともうすぐ休憩終わっちゃうよ」

 友人達は暫く様子を伺っていたが、特に何も無いと分かるとすぐに興味を無くしたようだった。
 しかし、りんねだけは、何故だか後ろ髪を引かれる様な、不思議な心地に陥っていた。自分でもどうして気になるのかは分からないが、友人達と話を合わせながらも、横目に彼女達を見てしまう。
 すると、ふと汐風ゆららの手元に、キラリと光る鍵のようなものがある事に気がついた。その瞬間、りんねの中で何かがドクンと脈打つ音がした。
 あの鍵に吸い寄せられるような感覚。まるで、土から芽吹いた双葉が、日の光を欲してぐんぐんと伸びていくような。

「りんねちゃん? どうしたの?」
「えっ? あぁ、何でもないわ。少しぼーっとしていただけ」
「碧月さんでもそんなことあるんだね。意外~」

 友人達の笑い声に、少しずつ意識が浮上していく。先程のあれは一体なんだったのだろうか。頭の片隅に疑問を置いたまま、りんねは再び友人達と談笑を始めた。