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第4話Part8

 りんねとまりあは、そのまま楽しげに会話を続けていたが、やがてまりあは話題に出した『お姉様』という人物を紹介したいと言って一度部屋を出ていった。そして、長い金髪が特徴的な、背の高い女を連れて戻ってきた。

「お姉様、こちらがこの前お話した後輩たちですわ」
「この子達が?……まぁ、凄い偶然だこと。あなた達だったとはね」

 女は、少しだけ驚いたように眉をあげると、紅い唇を面白そうに引き上げる。それは、忘れもしない、天敵の姿。

「お、お前は!?」
「カプリシューズの、モーヴェ!?」

 プリキュアの存在を知らないはずのまりあの所に、何故モーヴェがいるのか。思わず声を上げたレザンとあすなを見て、まりあただ一人だけが、状況を飲み込めずおっとりと首を傾げた。

「あら、お知り合いでしたの?」
「まりあ先輩、その人から離れてください! その人は……」
「なっ、急に何を言い出すのです、桜宮さん。まるでお姉様を悪者のように」

 事情を知らないまりあは、突然モーヴェを睨みつけたまつりに、怪訝そうな顔を向ける。縋るようにりんねの方を向いたが、彼女もまた、神妙な表情で首を横に振った。

「まりあさん、その人は、皆の大切なものを壊そうとする悪い人なの」
「りんねまで、一体何を言っているの?お姉様、これはどういう事……?」

 モーヴェは、おおらかな優しい笑顔で親身になって悩みを聞いてくれた。まりあを本物の妹のようだと言って親切にしてくれた。そんなモーヴェが『悪い人』だとは、まりあにはどうしても思えなかった。困惑した表情でこちらを見つめてくるまりあに向かって、モーヴェはわざとらしく顔を覆って見せた。

「あぁ、まりあ。あたしは悲しいわ。この子達に騙されては駄目。あたしを悪者扱いして、あなたをからかって陥れようとしているのよ」
「私たちは、そんな事しないわ!」

 すかさずゆららが反発する。しかし、モーヴェは一切怯むことなく、嘲笑うような目を彼女たちへ向けた。

「あら、そう?こんなに大勢でやってきてまりあの事をいじめに来たんじゃないの? 卑怯だわ。ねぇまりあ、そう思わない?」
「お姉様……でも、りんねや桜宮さん達は優しい子です。そんな事するわけが……」

 どうやらまりあは、どちらの事も見限れずにいるらしい。モーヴェは顔いっぱいに哀れみの表情を貼り付けてみせると、まりあの顔の前に紅い宝石のようなものをぶら下げた。

「可哀想に!もう流されてしまっているのね。……これを見て楽になりなさい」

 宝石には銀細工の長いチェーンがついており、それはちょうど、もう一人の敵であるソンブルがスキホーダイを召喚する際に使っていたものと酷似していた。

「あれは、ソンブルが持っていたものと同じペンデュラム……!?」

 レザンの切迫した声が、まつり達の耳にもはっきり届いた。