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第4話Part4

「この辺りって、大きなお屋敷が多いんだね。初めて来たよ」
「お金持ちの人が沢山住んでる地域みたいね」
「あすな達には縁のない世界ですね」

 放課後、まつりたち一行は、まりあの家へと向かっていた。スマホの地図アプリを眺めているゆららを先頭に、各々見慣れぬ景色を見渡しながら、閑静な住宅街を歩いていく。

「皆ちょっと待って。行き過ぎたわ。さっきの交差点を左に曲がればいいはず」

 立ち止まったゆららの手元を見ると、赤い点で示された目的地を、少しばかりすぎてしまっていた。まつりは来た道を振り返り、見落としてしまっていた一つ前の道をゆびさす。

「ほんとだ。じゃあ、ここの道を曲がれば良いんだね。白い塀で囲まれてて周りが見えにくいんだけど、大丈夫かな?」
「この辺りは、既にまりあ先輩のお家の敷地内らしいわ」

 綺麗に整えられた滑らかな壁に手を当てながら進んで行ると、塀の上から顔出している木々を見つめながら、りんねがぽつりと呟いた。先が見えないほど遠くまで続いている塀を見て、まつりはギョッと目を瞬かせる。

「そ、そうなの!? ひっろーい!」
「全く中は見えませんけど、この塀に沿って歩いて行けば着くってことですね」
「そういう事になるわね。もうすぐ日も暮れちゃうし、急ぎましょ」

 赤い点の示す場所は、家の門となっているようだった。その場所は、あと十数メートルほどの距離に差し迫っている。りんねは頷きつつも、軽く震える指先をぎゅっと握りこんだ。

「そうだね。……なんだか、緊張してきたわ」
「大丈夫ですよ。皆がついてますから!」
「ポムも近くでりんねを応援するポムー!」

 りんねの背中をさするあすなに負けじと、ポムが再び鞄の中から飛び出してくる。けれど、今度は誰もポムを鞄の中に戻そうとはしなかった。ふわふわな毛に包まれた得意げな目を見て、りんねは安心したように微笑む。

「ふふ、ポムちゃんがいるととっても心強いわ」