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第2話Part12
「でも、二人ともあすなのこと庇ってくれたじゃないですか! まつり先輩、ゆらら先輩、まりあ先輩、ありがとうございましたっ!」
丁寧にお礼を言ったあすなの頭をまりあが優しく撫でる。そして、その手でそのまま自身の胸を叩いた。
「良いのよ。困ったことがあれば、いつでもわたくしを頼ってくださいな。それでは、わたくしはこれで」
やってきた時と同じように、優美に姿勢よく去っていく後ろ姿を見て、まつりは思わずピシッと姿勢を正した。
「お、お気をつけて~! はぁ、生徒会長って、案外優しいんだね」
意外そうに目を丸くしたまつりに、あすなは「そうなんです!」と目を輝かせて返した。
「普段厳しいのも、全部優しさの裏返しなんですよ。あすな、まりあ先輩みたいな先輩になるのが夢なんです!」
そこで彼女の中の何かに火がついたのか、あすなはそのまま指折り数えながらペラペラと言葉を並べ始めた。
「あ、でもでも、まつり先輩にもゆらら先輩にも憧れてるんです! あとは、ボランティア部と園芸部のりんね先輩……あすなの周りには、憧れの人がいっぱいなんです!」
この子は小さい頃から、こういう風に尊敬の眼差しを向けてくる事が多い子だった、とまつりは思い出す。そんな彼女の性格は、それこそ『ご機嫌取り』だの『アピール』だのと揶揄される事もあったが、まつりはあすなの気持ちは全て本心から来ているという事を知っている。むしろ、素直で可愛い彼女が大好きだった。
「でた、あすなちゃんの先輩リスペクト! ほんっとに可愛い後輩だなぁ……」
「でも、さっきの人たちみたいな人には憧れないことね。あすなの悪いところは、年上に萎縮しちゃうところ。堂々としてて良いのよ?」
でれでれと笑いながらあすなを撫でるまつりに、若干の軽蔑の眼差しを向けながら、ゆららもあすなを気遣うように諭した。
ゆららから「堂々としてて良い」と言われたあすなは、一瞬驚いた顔をした後、照れたようにはにかんだ。
「へへ、ありがとうございます。でもあすなは……」
何か言いかけた彼女の言葉は、そこで不意にかき消された。誰も居ないはずの周囲から、変によく響く、一人分の拍手の音が聞こえてきた。