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第6話Part8

 みづきが転校してきてから数日後。2年A組の教室で、レザンは残念そうにため息をついた。

「へえ、転校生の女の子か。僕も会ってみたかったな。いつも間が悪くて参ったよ」
「この前は先輩に呼び出されてたもんね。えーと、ほむら先輩だっけ?」

まつりは首をかしげ、カールしたポニーテールが印象的な、明るい先輩の名前を思い出す。どうやら当たっていたようで、レザンは小さく頷いた。

「うん。今度、演劇部と吹奏楽部でミュージカルをやるんだけど、その打ち合わせに呼ばれてね。でもあの人、何も無くても呼び出して絡んでくるから、迷惑してるんだよなぁ」
「そっかぁ。きっとその先輩は、レザンと仲良くなりたいんだね!」
「はは、そうかもね。まつりといると、嫌でも前向きにさせられるな」

心底羨ましそうに、だが、少しだけ嫌味のこもった言い方に、まつりはムッと頬をふくらませる。

「嫌でも……って、どういう意味~!?」
「ごめんごめん、褒めてるんだよ」

からかっただけ、とつけ加え、レザンはまつりの頭をぽんぽんと軽く撫でる。

「むー! もっと素直にいえばいいのに……」

触れられたところがあたたかくなったような錯覚を覚え、まつりは膨れたまま照れ隠しのように目を逸らした。
 くすぐったくて恥ずかしい気持ち。早く終わって欲しいと思うのに、ここから離れられないような、そんな空気。
 だがそれは束の間、突如廊下から響いてきた力強い声と共に、あっという間に崩れ去った。

️「あ、いたいた! うぃーっす!」
「ほむら先輩。部活の打ち合わせなら確か明日のはずでしたよね」
「特に用は無いけど暇だから来ちった~!」

そう言ってニカッと笑ったのは、ほむらと名乗る高等部の少女だった。まつりにとってはたまに見かける程度の認識だが、レザンとはかなり付き合いが長いらしい。「や、やっぱりそうか……」と呆れたように息を漏らしてはいるが、そんな面倒くさそうな態度も、ひとえに親しさからの裏返しだろう。
 少しだけ羨ましいと思いながら、まつりはほむらの話に耳を傾けた。

️「まーまー、meと喋んね? って、その子youのカノジョ?」
「え? え、えっと~……」
「いえ、友達です」

️ 突然踏み込んだ話題を振られ、まつりは咄嗟に答えにつまる。彼女では無いけれど、完全に否定してしまうのは、なんだか少し寂しい。だが、まつりが迷う一瞬の間に、あろうことかレザンは軽々しく否定の言葉を呟いてしまった。
 まつりの瞳が悲しげに揺らぐのを、ほむらの視線が鋭く捉える。だが、彼女はすぐに笑顔に戻ると、勢いよくレザンの手を引っ張った。

「ふーん、トモダチね。ならmeと話してても問題ないっしょ。行こ行こ~!」