![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/38308234/rectangle_large_type_2_30d0b2def4bae588d42fee365d891f57.png?width=800)
第2話Part24
今日は月の無い夜。部屋の小さな明かりだけが煌々と白いレースのカーテンを揺らしている。
ソンブルとリーラは、デザストルから、三つの部屋を繋げた特別な寝室を賜っていた。ソンブルとリーラのそれぞれの部屋には、出入口の他にもう一つ扉がついていて、その扉を開けると、そこには二人だけが入る事の出来る談話室があるのだ。
部屋の真ん中にあるソファに腰かけながら、リーラは隣に座る兄を心配そうに見つめた。
「お兄ちゃん、顔色が良くないけど、大丈夫? お薬飲む?」
お部屋に沢山あるから!とやに戻ろうとするリーラを引き留め、ソンブルは力無く微笑んだ。
「いや、良いよ、ありがとうリーラ。これくらいで疲れちゃダメだな。オレももっと頑張らないと」
ぽつりと零すように呟いた彼を見て、リーラは頬をふくらませて憤慨した。
「そんなこと無いわ! お兄ちゃんは十分頑張ってる。お兄ちゃんをこんなに疲れさせるプリキュアが悪いのよ! 私も、カプリシューズの皆さんに恩返しするために、必ずプリキュアを倒せるようになるわ!」
心から憎らしそうにその名前を口にするリーラ。その目からは、演技をしているような様子は一切見受けられなかった。ソンブルは、耐えかねたように俯く。
「……!そっか、そうだよな。お前はずっと、何も知らないんだよな……オレが守ってやんねぇと」
「え?何か言った、お兄ちゃん?」
リーラは、先程の態度がまるで嘘のように、屈託なく笑った。ソンブルは、リーラに顔を見られないように、力を込めて彼女の頭を撫でると、サッと立ち上がった。
「いや、何でもないよ。それより、今日はもう遅いから早く寝ろ」
「わかった。おやすみなさい、お兄ちゃん!」
リーラはぴょんっと可愛らしく立ち上がると、駆け足で部屋の奥へと消えていった。
「あぁ、おやすみ、リーラ」
談話室の中に、ソンブルの声だけが静かに響く。空には星一つ無く、彼の周りは再び暗転した。