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第4話Part22

「従者を亡くしたくらいで精神に異常を来すような者に、王になる資格などない」

 その声は冷酷に響いた。レザンは、裏切られたと言いたげな青ざめた表情でヴィナグラードを見上げると、唇を震わせて口を開いた。

「しかし……! 失礼ながら陛下は、己の心を簡単に殺せる者が、本当に民の上に立つべき者だとお考えなのでしょうか?」
「レザン、それは愚問だ。綺麗事にすぎないよ。其方もいずれ分かる。今のままでは、其方はこの世界で生きては行けまい」
「ですが、父上!」
「それ以上言うな」

 更に反論しようとしたレザンを、ヴィナグラードは強い声一つで黙らせた。いつもは情に溢れた優しい瞳が、今日は深海のように冷たく光っていた。

「いくら王子とて、国王に逆らう事は許されぬ重罪だぞ。お前達、今すぐレザンを部屋に連れて行け。早急に身支度を」

 ヴィナグラードが右手を振ると、傍に控えていた従者たちが立ち上がる。彼らは表面上は微笑んいて、穏やかに「参りましょう」と口にしたが、その手は力強くレザンをの腕を掴んだまま、けっして離すことはしなかった。

「父上、僕の話を聞いてください、父上!」

 従者たちに連れられ、レザンが広間を出ていく。その様子を、国王の後ろで黙って見ていたポムは、震える手をそっと握りしめた。