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第5話Part2

 ぽつりと漏れた声に、皆が一斉にまつりの方を振り返る。だが、彼女は皆が危惧していたような表情はしていなかった。いつも通り、力強い光を目にたたえ、まつりは言った。

「こうなったら、直接本人に聞いてみるしかない! って事で、レザンの家に行ってみよー!」

 突然の出来事に、まりあは目を白黒とさせる。常に冷静で相手の一手先を読むか彼女が、ここまで動揺するのは初めてだった。

「え、ええ……でも、今日レザンは風邪でお休みなのよね? 大丈夫なの?」
「だから、看病も兼ねて! どの道今日は皆でお見舞いに行く予定だったんです」

 にっこりと笑う彼女の顔が、昨日見た勇敢な戦士に重なる。まりあは目を細めて笑顔に答えると、大きく頷いた。

「あら……ふふ、それなら良いわ、行きましょう」

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「皆、いらっしゃいポム~!」

 学校のすぐ裏にそびえ立つ屋敷。その古めかしい扉の前で手を振っている小さな少女を見て、りんねとまりあは揃って首を傾げた。

「あすなちゃん、あの女の子は誰?」
「レザンの妹かしら?」
「そっか。りんね先輩とまりあ先輩は知らないんですね」

 問われたあすなは、そう言って腕を組むや否や、にやりと笑って大袈裟に少女を指さした。

「あれはポムです!」
「えっ……あの可愛い子が、ポムちゃん?」
「ポムと言えば、もっとこう、ふくよかな……」

 二人の記憶の中にあるポムは、桃色のまるまるとした羊のような生き物だった。それが、あの美少女? 理解不能と言わんばかりに唸っている二人を見て、ポムはムッと頬をふくらませた。

「ポムはふくよかじゃないポム~!」
「うわ、地獄耳」

 呆れたように引き下がるあすなの後ろから、遅れてやってきたまつりとゆららが面白そうに覗き込んだ。

「ポムは体型の事言われるとすぐ怒るからね~」
「気になるなら間食をやめればいいのに」
「やめられないから気になるんだポム」

 分かっているくせに、と、じっとりした目でゆららを睨みつけるポム。だが、その目はすぐに笑顔に変わる。

「そんな事より、今日はお手伝いに来てくれてありがとうポム!」

 文句ない程可愛らしいその仕草に、少女たちの空気が華やいだ。