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第2話プロローグPart3

 急に押し黙ったヴィナグラードを見つめ、ミルティーユは頬に手を当てた。そのままゆっくりと口角を上げ、満足気に呟く。

「ふふ、すべてお見通しと言うことね。流石わたくしの育てたレザン。試しに読心術を仕込んでおいて良かったわ。確実に使える子になるわね。素晴らしい」

 台詞の端々に怪しげな言葉を聞き取ったハイデマリーは、今度はミルティーユに注目した。表情こそ柔らかく、ずっと微笑んだまま変わっていないものの、彼女の発するオーラは明らかに高揚としていた。全ての学問に秀でており研究熱心なミルティーユの教育は、とてつもなく厳しいものであると以前から噂になっていた事を、ふと思い出す。

 ともすれば悪女のようにも見えかねない出で立ちに、ヴィナグラードは慌てて反論した。

「ミ、ミルティーユ。実の息子を、レザンきゅんを実験台のように使うのではない」
「あら、ヴィナグラードこそ。甘やかしてばかりいるのは優しい虐待ですよ。それに、成人間近の息子をそのように呼ぶなど、レザンが可哀想です。お止めなさい」

 二人の間でバチバチと火花が飛び交うさまを、ハイデマリーは何とも言えない表情で見つめていた。国王夫妻は人望が厚く、人生経験に飛んだ尊敬すべき方々である事は重々承知しているが、それを知った上で尚、この人達はどこかずれていると冷静に分析してしまう自分がいた。
 ハイデマリーは、誰にも聞こえないように小さくため息をつくと、心の中で主に問いかけた。

(……拝啓 レザン様。貴方のご両親はご覧の通り通常運転です。プリキュアについての報告まで、今日中に辿り着けるのでしょうか。わたくし、レザン様の事も、この国の事も、とても心配です)