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第6話Part10

 同時刻、中庭にて。りんね、まりあ、あすな、みづきの四人は、生徒会の雑務を終えて帰路につこうとしているところだった。

「生徒会ってやっぱり大変ね。私にできることがあれば、これからも手伝うから、いつでも頼ってね、まりあちゃん」
「ええ。お世話になりますわ。あなた達も、手伝ってくださってありがとう、あすな、みづきさん」
「お礼には及びません! 一度やって見たかったんですよね~、生徒会の仕事!」
「私も、全然苦じゃなかったわよ」

労うまりあに、得意げに返す二人の後輩を見て、りんねは嬉しそうに目を細めた。

「あら、それじゃあ、二人は生徒会に入りたいと思ってるの?」
「うーん、興味はあるけど、あすなは、今はダンスの方が大事なのでパスです。でも、みづきちゃんは人をまとめるのが上手そうだよね」
「そう? 生徒会って、皆のリーダーみたいな存在なのよね。悪くないかも」

そういうが早いか、腕を組み真剣に考え込み出したみづき。まりあは頷き、安心したように息を吐く。

「ふふ、下級生に意欲のある方がいて良かったですわ。夏休みが終わったら、早速生徒会長選挙がありますし」
「へえ、私、立候補してみようかしら」

みづきの小さな言葉を聞いて、あすなは思わずぴょんと飛び上がった。はしゃぐ様子は、まるで誕生日を迎えた子どものようだ。

「ほんと! あすな絶対みづきちゃんに投票するよ!」
「私も。みづきさんは、優しくて頼りになるもの」

あすなに賛同するようにりんねも頷き、その場にほんわかとした空気が生まれた。

「ありがとう。嬉しいわ」

その流れを崩さないように、みづきも適当な柔い言葉を述べておく。だが、彼女の本心は今なお、深海のように冷えきったままだった。

(本当に馬鹿ね。優しさなんて所詮は見せかけ。いくらでも演じることが出来るのに。……と、そろそろかしら?)

みづきは、制服のポケットに隠した紫水晶型の通信機にそっと指をはわせ、合図の信号を送った。
 そしてその直後、不意に大地がゆるぎ、絶望を告げるスキホーダイの咆哮が校内に響き渡ったのだった。