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第5話Part16

 雨足は強まり、空は暗くなる。地面に水滴が打ち付けられる音を聴きながら、レザンは必死で息を整えていた。

「はぁ……はぁ、何とか、全てのプリキュアが揃った……でも、意識に干渉していただけの僕が、ここまで体力を消耗するなんて……」

 そう息を吐いた瞬間、バンッと勢いよく窓が開いた。反射的に顔を上げると、そこには薄らと笑みを浮かべたソンブルの姿があった。

「随分と衰弱したようで、王太子殿下」
「ソンブル……!」

 どうして今君がここに? プリキュアはどうした? 聞きたいことは沢山あった。だが、息も絶え絶えな彼の口からは、名前を呼ぶ声が漏れるばかり。ソンブルは、そんなレザンの様子に気がついたのか、更に嘲笑するように目を細めた。

「久しぶり。会いたかったよ。プリキュアに邪魔されずに、な」
「奇遇だね……僕もだ……ちょうど、2年前の君の事を思い出してた」
「……どんな時でもその笑顔は崩さねぇんだな。お前のそう言うところが、オレはずっと嫌いだった」

 微笑むレザンとは対照的に、ソンブルの顔が険しくなる。彼が剣に手をかけたのを、レザンは見逃さなかった。

「今、ここで僕を殺すのか」

 冷ややかな声に、ハッとソンブルの手が止まる。血が出そうなほど唇を噛み締め、彼はそのまま暫く微動だにしなかった。が、やがて小さくため息を吐くと、そっと姿勢を正してレザンを睨みつける。

「いや……今はまだその時じゃない。無防備なお前を殺してなんの得になる。だが覚えておけ。いずれこの剣はお前を貫く」
「君は、変わってしまったね。でも……」

 レザンはゆっくりと立ち上がる。窓から吹いてきた風が、彼の全身を強く揺らした。

「君の王は僕だ。君の剣が僕に届く前に、君は既に事切れていると思うがいい」