第3話プロローグPart5
「二人とも、何を言い合っているんです? モーヴェは早く支度をしてしまいなさい。ソンブルくんはこちらへ」
冷静な声と共に、背後からかたんと音がする。モーヴェが振り返ると、右手に鍵を持ち立ち上がったデザストルと目が合った。何か言いたげに口を開きかけるモーヴェを遮って、ソンブルが彼に近寄っていく。すれ違いざま、ソンブルはモーヴェにだけ見えるようににやりと笑って見せた。
「じゃーな。オレと違ってお前はデザストル様に信頼されてる。だからその分反動も大きいだろ? 失望されないように気を付けろよ」
「はぁ? 当然よ、あんたほど使えない奴何て、我が社には居ないわ」
モーヴェはそのまま口喧嘩を続行しようとしたが、ソンブルはそんな彼女をサラリと躱し、デザストルに連れられて部屋を出ていく。モーヴェは、去っていく二つの背中を、唇をかみ締めながら見送った。
一人残された彼女は、やり切れない感情を吐き出すように、宿敵の名を口にする。
「……見てなさい、プリキュア!」
暗い部屋の中で、モーヴェの首元を飾るネックレスの宝石だけが、煌々と自らの存在を主張していた。