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第4話Part6

 どっしりと構える黒い門とその奥に見える邸宅。それらが与える威圧感に、まつりはぶるりと身震いをした。

「おおきーい! ここが門……どうしよ~!緊張してきた~!」
「なんでまつりが緊張してるのよ。えっと、ここを押せばいいのかしら? 」

 しがみつくまつりをあしらって、ゆららはもんの傍にあるインターホンに手を伸ばす。聞きなれたチャイム音の後、程なくして、スピーカーから女性の声が流れてきた。

『はい、どちら様でしょうか?』
「あの、私たち、まりあさんと同じ学校の者ですが、まりあさんとお会いすることは出来ますでしょうか?」
『お嬢様のご学友の方々ですね。かしこまりました。少々お待ちくださいませ』

 女性はそう言うと、コツコツと優美な足音を立てて遠ざかっていく。音が聞こえなくなると、声を潜めていたまつりは、キラキラと目を輝かせて皆を見渡した。

「お嬢様だって! 今の、お手伝いさんかなぁ?」
「ポムのママもこういうことやってたポム~!」
「そうなんですか? 凄いですね! 」

 ポムの一家は、代々レザンたち王家に仕えている一族らしい。城へやってくる客人の対応は、母と祖父が受け持っているのだと、ポムは自慢げに話しだす。まつり達がポムの話に聞き入っていると、スピーカーから再び音が聞こえ始めた。

「ただいま門をあけました。そのままお進みくださいませ」
「はい、ありがとうございます」
「よーし、レッツゴー!」

 まつりの掛け声に続くように、一同は夕闇邸の中へと足を踏み入れた。外からは分からなかったが、門と屋敷には少し距離があるらしく、屋敷の玄関までの道のりには、美しい花々の咲く低木や、立派な噴水、東屋などが点在していた。噴水から勢いよく吹き出す水を見て、あすなは弾んだ声をあげる。

「先輩見てください! お庭に噴水がありますよ!」
「まつり、あすな、はしゃがない!」

 噴水の方に向かって走り出した二人を、ゆららとりんねが止めに行く。わぁわぁと騒がしい四人の様子を横目に見つつ、レザンとポムは噴水の反対側にある東屋に目を向けていた。

「何だか落ち着くなぁ」
「懐かしい感じがするポム!」

 城にある温室が、ちょうどこの庭園のような雰囲気だった。記憶の中にある故郷の情景と似通ったものを目に入れる度、ポムとレザンは何とも言えない歯痒さを体験する。それは嬉しさと同時に、切なさも与えてくれる感情だった。もう少しだけ近くへ、とレザンは東屋へ足を進める。しかし、その歩みははっきりとした女性の声に遮られた。
 屋敷の入口から、先程門で応答していた女性が、微笑みながら近づいてくる。

「皆様、ようこそおいでくださいました。こちらでお靴をお脱ぎになって、私についていらしてください。お嬢様のお部屋に案内します」