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第4話Part19
ここはカプリシューズのアジトの中。ふわふわとしたソファに腰掛け本を読んでいたシャグランは、先程うきうきとした様子で部屋を出ていったモーヴェの事を考え、はてと首を傾げた。
「今日のモーヴェはやけに機嫌が良かったが、何か良いことでもあったのか?」
「なんかプリキュアの誕生を阻止したらしいよ~」
爪に塗ったマニキュアを見つめながらのんびりと答えたラージュの言葉に、シャグランは思わず本を取り落とした。魔術の力も、コンピュータの能力も持ち合わせてていない人間に何が出来るかと見くびっていたが、彼女はもしかすると、自分達二人を凌駕する存在になり得るかもしれない。シャグランは、ラージュの肩を掴むと、滅多にしないような強い剣幕で声を荒らげた。
「なんだと、それでは、我らより先にモーヴェの方が手柄を立てたという事になるではないか!」
「そうなんじゃないの。ってちょっと! 肩揺らすのやめろって! まだネイル乾いて無いんですけど!」
対するラージュは、自身の爪の心配しかしていないようだった。モーヴェの手柄の話を聞いても、以前と全く変わらず気だるそうにしているだけだ。
「なんという事だ……主からの信頼が無くなれば我らは終わりだ……」
「あー、大袈裟だなぁ。me達があの人からの信頼無くすなんて有り得ない。だってme達、それぞれあの人の一部なんだから」
指にはみ出したマニキュアを拭き取りながら、ラージュは平静に答える。二人はデザストルに望まれて生まれてきた存在だ。そうそう簡単にお払い箱にはならないだろう。そんな思いも込めて呟いたラージュを見て、シャグランはハッと我に返る。何かを言おうと口を開きかけた時、それを遮るように部屋の自動ドアが開いた。
「おい、さっきの声廊下まで響いてきたぞ。ごちゃごちゃうるせえよ。言い合いすんなら外でやれ」
「ソンブル。済まなかった。少し気を乱していた」
やってきたソンブルは、シャグランが意外にも素直に謝ったことに少しだけ眉を潜めたが、すぐにいつも通りの無表情に戻ると、ソファの端に腰掛けた。
「わかりゃいいよ。それより、聞きたいことあんだけどさ、お前らのうちのどっちか、リーラに絆創膏やらなかった?星のマークのついた、黄色いヤツ」