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英雄か、独裁者か
「ナポレオンは英雄だったのか、それとも独裁者だったのか。その理由を述べよ」
高校の世界史のテストの問題用紙に書かれていたのは、たったこれだけだった。45分のテストである。年号やら出来事やら人名やらを必死で覚えてきたわたしは、想定外の設問に大いに戸惑った。
ナポレオンは英雄だったのか、それとも独裁者だったのか。
分厚い教科書にはたくさんの情報が書いてあったけれど、その設問の答えは載っていなかった。要は、あなたはどう思うの?それをこれまで授業で学んだことをもとに論じなさいね、というテストだったのだ。
軽くパニックになりながら、とりあえず思いつくままに支離滅裂で何の論理性も説得力もない文章をつらつらと書き連ねた。どちらの結論で書いたのかすら覚えていない。けれど、「そうか、学校での勉強というのは、覚えりゃいいってもんじゃないんだ」と、高校生にしてようやく痛感した出来事だった。
というのを、テレビを見ていたらCMにナポレオンが出てきて唐突に思い出した。
仕事も一緒だ。
教科書が上司やマニュアルに替わっただけで、教えてもらったノウハウや知識や基軸を知ってるだけでは、覚えてるだけでは、意味がない。暗記科目じゃないのだ。解決すべき課題があって、その解決のために使いこなしてなんぼなのだ。
なんだかずっと、長い長いトンネルの中にいる。全然成長してない自分に焦る。むしろ退化しているような気さえする。けどそれはたぶん、いつのまにがまた、あのナポレオンのテスト用紙を前にして固まっていた頃のわたしに戻っていたんだ。頭に詰め込んで、満足していたあの頃に。
さて、もっかい、ふんばってみようかな。
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