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めちゃめちゃ詳しい腸脛靭帯の解剖学

こんにちは。ライターの冨山です。
 前回のコラムでは腸脛靭帯の基礎となる知識として、組成や名称から靭帯なのか・筋膜なのか・腱膜なのかをまとめました。世界的な基準としては現時点では腸脛靭帯は腱膜として認識されています。
 さて、名称などがわかった所でなかなか治療・リハビリには結びつきにくいです。まだまだ基本的な内容になりますが、今回は腸脛靭帯(Iliotibial band :ITB )の解剖学の話をしたいと思います。論文を紹介しながら、腸脛靭帯がどこから始まり、どこを走行し、どこに付着するのかを詳しく説明させていただきます。


【起始停止の通説と実際】

 ITBの起始はどこでしょうか?
  教科書的には、①大腿筋膜張筋からの移行、②大殿筋からの移行と答えられているものが多いです。当然、この2種類の筋から移行するITBの線維がほとんどですが、それ以外にも多くの起始を持っています。
 また、ITBの停止部としては脛骨の前外側にあるガーディー結節がよく知られています。しかしながら、ITBは膝の周囲で細かく様々な部位に分かれて付着しており1本の線維となって下腿の表層に付着するものではありません。

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 筋膜が身体を縦横に走り様々な部位と連結していることは近年の研究で明らかになり、多くの方が知っている内容でしょう。ITBも大腿筋膜が肥厚したものであり、様々な部位から派生し、付着しています。実際には表層のみでなく深層にも走行していることが多くの研究から判明しました。そういった研究をまとめてITBの全体像をつかみたいと思います。


【ITBの起始】

 大腿筋膜張筋は腸骨稜の前面を起始としている筋ですが、実はその幅は非常に大きいです。Deshmukhらの研究から大腿筋膜張筋が腸骨稜の前方1/3に付着している事がわかりました 1)。解剖学の教科書などではここまで広い範囲に付着するようには書かれていません。なぜならば、大腿筋膜張筋のほとんどをITBが表層から覆っているためです。つまり、大腿筋膜張筋はITBに移行するというより、ITBに包まれている大腿筋膜張筋が遠位に進むにつれて薄くなっていき最終的には膜状の線維となってITBと合流するという方がいいかもしれません。

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