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【言語心理学】「あ、そうか」

この言葉をよく使う人シリーズ、今回は「あ、そうか」をみていきます。

「あ」がつかないバージョンの「そうか」は前回記事を参照
【言語心理学】「そうか」


■「あ、そうか」を多用する人


「この作業は前にも言ったとおり、こうなっているよね?」
『あ、そうでした。』

「その日は実家に帰る用事があるって言ったよね?」
『あ、そうか。確かに』

「AとBはどのようにつながっているんだろう」
「わからないなぁ」
『あ、そうか。こういう具合になっているんだ』

「あ、そうか」は
忘れていたことに対する確認の同意と、
考えていることの筋道が結びついたとき
に使います。


■「あ、そうか」を多用する人の心理


「忘れていたことに対する確認の同意」でこの言葉を使うとき、
前提として、『物事を忘れている』状態があります。
それは約束や学んだことなどの大切な場合もありますが、
もっと小さな、取りとめのない話題でも使われることがあります。

このケースで「あ、そうか」を使う人は、
忘れた物事をカバーするために

今まで私は忘れていましたが
今はもうすっかり思い出したし、
だから物事の実行や理解になんら影響はありません。
問題はないです。

ということを言っているわけです。
つまりこれは【正当化のいいわけ】(自分の非は認めるが、物事の問題は認めない)です。

会話や対人関係の中で
特に大切な物事ではないのに(今日の夕飯のことなど)この言葉を多用するようなら
それは正当化のいいわけを通り越して、
【できない自分、ダメな自分に対するフォローの言葉】となっています。

心理的には正当化と同じで、
自分はどうしようもなくダメでしょうがない人だけど、
物事には障害がないのだから許してほしい、いいじゃないか
という図式になります。
人に責められるわけでも、質問されるわけでもないのに
自分からこの図式で物事を進めるという癖がついているということです。

「考えていることの筋道が結びついたとき」にこの言葉を多用する人も
基本的な構造は同じです。
つまり誰かの質問や責めが自分に向いているわけではなく、
むしろ他の人と共同して物を考えている場合や一緒に取り組んでいるシチュエーションでこの言葉を多用する人は

自分は元々わかっていたんだけど、うっかり忘れていただけであって
またはさまざまなパターンを試すのに時間がかかっただけであって
知らなかったとか、できないとか、そういうことではない。
たまたまうっかりしていただけで、解答はちゃんと持っているんだ。

とアピールしていることになります。
でなければ「わかった」と一言言えば済みます。

わざわざ「あ、そうか」を多用して人に聞かせなければならないということは、そうでなければ自分の存在価値が問われるという心理を持っているからです。
またはごく稀に、自分の責任になることをあらかじめ回避するために使われます。(ただし、この場合はあまり強い効果を発揮しません)

「忘れていたことに対する確認の同意」で使う人も
「考えていることの筋道が結びついたとき」に使う人も、
この言葉を多用する人に共通しているのは
【自分に自信が持てない】ということで
それをカバーするために
【自分は決して無能ではない】ということを示したい心理があります。


■「あ、そうか」を多用する人の傾向


この言葉を多用する人は、
自分の自信のなさを言葉や行動によってカバーしようとしますが
人を下げることで自分を上げたり、攻撃しようとするわけではありません。
同意することが多いでしょう。

あまりに多用が目立つ人は
とにかくやたらめったら同意を示して、自分はバカではないということを
示したがるので(この言葉に限らず)
自分では気がつかないうちに周囲から疎んじられている可能性が高いです。

人の評価としては「いい人」。
行き過ぎると「悪い人じゃないんだけどねぇ・・・」。

人柄が悪いわけではないので、一方的に話をする人がこの人を相手にしたとき、第一印象や聞いてくれている間は好印象を持ちます。

仕事はあまりできる方ではありません。
「うっかりしていた」が癖になっている人は特に、問題が起こったときにもそのパターンで潜り抜けているので、問題を発生させないための前向きな努力を行うのではなく、特に何もせずに状況を引き寄せる傾向があります。
したがって問題は必ず起こり、あとから補正する。
最初から手を打つタイプではないので、仕事ができる人ということはありません。

仕事ができるタイプでこの言葉を多用する人は、負けず嫌いで周囲の意見をあまりよく聞かず、自分で自分を苦しい立場にする場合があります。
「あ、そうか」というとき、内面に「そんなことはもうとっくに知っている。たまたまうっかり忘れていただけだ」という自分に対する言い訳と同時に、相手を低く見ているという前提があります。

周囲を自分よりも低く見て、自分の知らないことやミスはたまたまという反応を示すので、人間関係に問題を抱えることになります。職場では協調性がないでしょう。

このタイプが上司になると、部下はミスを隠したり前向きな発言をしなくなります。ひどい場合だと恐怖政治に耐えるような場合もあります。自分の自信のなさを隠すために高圧的に支配しようとするからです。


■「あ、そうか」を多用する人との付き合い方


自信がない人に自信がないことや、攻撃をすると反応的な態度が返ってきます。
これはやめた方が無難でしょう。
コミュニケーション上は笑いや軽い調子で
「もぅ、しっかりしてくださいよ!」
というやり方が角が立たず、問題を起こさない方法です。
しかし、これでは根本的な問題は解決しないので
特に仕事では相手のこの傾向から生じるミスを想定してあらかじめ備えるか
相手に自覚を持ってほしいなら、あらかじめ確認に時間を割いたほうがいいでしょう。

このタイプが上司なら
軽蔑の態度や発言には敏感なので、そういう部分ではなく長所に注目してあげること。
できれば「あ、そうか」が多用されるジャンルや分野は部下で物事を片付けること。
会社の構造的に難しいのなら、あらかじめ相手を否定しないような確認を業務に組み込むといいでしょう。

このタイプが部下の場合でも、あらかじめ確認をしておくこと。
やはり長所に注目してその仕事に集中させるのが好ましいですが、現業務に必要なら完全マニュアル化してそのルールを時系列で守らせるだけでも効果は出ます。
ただしルールが増えると混乱するので、「明日報告して」などのリマインドを加えた方がいいでしょう。

もしできなかった後(「あ、そうか」を多用したとき)
「言ったでしょ」
「ちゃんとやれよ」
という発言は、単純に相手を自己嫌悪にさせるだけで、行動の改善は望めません。
相手がどのように行動改善していいか知識がないことと、
そもそも自信がないことを突っ込まれることで自己喪失の状態になるからです。
ミスは増え、より仕事に支障が出ます。

恋人がこの言葉を多用するなら
その相手はあなたを恐れている可能性があります。
しかも怖れながら、実は自分は間違っていないと考えている場合もあります。

フラストレーションがたまると一気に爆発し、
相手を責めるようになるでしょう。

このタイプとの付き合い方は、長所に注目しうまくできないことにはなるべく目を向けないことです。
全体的に自信がない相手なのであれば、その人が自信ではなく「確信」の持てるものを一緒に探してあげてもいいでしょう。
例えば、
「集中できたこと」
「感謝されたこと」
などを聞いてみます。

また、こちらからわからないことは「わからない」
知らないことは「知らなかった」などと
正当化のいいわけをしない態度で接してあげるといいでしょう。
ただしそれを真似て「自分は知らないことを知らないといえる人間なんだ」と示すことで、自信のなさを解消しようとするタイプの人もいますので、試すのなら相手を見て行った方が無難です。


■「あ、そうか」の多用を変える


職場や人間関係など、苦しい立場にある人は居場所を変えることです。
いちいち「あ、そうか」と正当化しなくてもいい状態に身を置くのが手早い方法です。
人にはそれぞれに合った場所があるので、
根本的に改善するなら、これが最も適した方法です。

それが難しい場合は、
「あ、そうか」と言わざるを得ない状況を見返して、
その状況が発生しそうな物事がある場合
あらかじめ【準備】して挑むことです。

言葉上では、「あ、そうか」を
「なるほど」
「その通りだね」

などに変えてみるのも一つの方法です。
どちらも同意の言葉であって「自己弁護」の言葉ではありません。
自分の中でどのような気持ちになったか、どう考えたかはひとまず置いて
外の世界の物事をありのままに同意してあげる言葉を使うようにします。

あまりに多用が目立つのなら、
一度その言葉を使ったときに注目してメモを取ってみます。
数日間その傾向をよく観察して、
「○○という場合にこの言葉をよく使っている」ということがわかったら
その物事で「あ、そうか」を使わないためにはどうしたらいいかを考え、
実践してみます。
意外と簡単に行動の成果が手に入り、
それによって自分も周囲も変わることを実感できるはずです。

ただし、観察した結果の物事が
あまりにもストレス過剰な場合は
やはりその物事からは手を引いて、自分の得意分野に集中した方が
結局は(長い目で見て)自分のためになるでしょう。



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