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富山旅行2日目@富山城跡, ガラス美術館, おわら風の盆

2日目は1日目と異なり、あまりせっかちな移動はせず、富山駅周辺の観光と八尾やつおの「風の盆」鑑賞をして参ります。


富山

富山城跡

9時前にホテルを出て、富山城跡に向かいます。徒歩数分なので、朝の散歩感覚で到着しました。ちなみに富山城は現在、(本丸の敷地にあたる)城址公園の中にあり、富山市郷土博物館として富山産業大博覧会のさいに建設されました(公園内には他にも、佐藤記念美術館があります)。そのため、城の中身は新築の建物のようになっています。

富山城の本丸

ここ富山城は、神保長職じんぼながもとが築城して以来、様々な勢力が奪い合う争奪の場となっていましたが、豊臣秀吉が征討してからは旗下きかの前田家が(初代利次から明治時代に至る)13代に渡って居城していました(めちゃくちゃ長い…)。ちなみに現在の19代目は「イノダコーヒー」という老舗喫茶店の社長を務めているそうです。

昔の富山城域
▶富山城といえば、「神通川じんづうがわ」です。現在の富山県庁を丸ごと飲み込むほど大きな川で、当時はこれを天然の堀として活用していました。ただ、氾濫したときには西之丸が潰れたりで大変だったみたいです。

城の敷地に入ると、日本庭園越しに天守閣が見えて参りました。どこから向こう岸に行けばいいんだ?と思いながら道なりに進んでいくと、「この紋所が目に入らぬか」と言っていそうな銅像が現れました。

前田正甫まさとし
▶富山藩の第二代藩主(父親は利次)

なぜ初代藩主の利次でなく、正甫が銅像になっているのでしょうか?どうやら、正甫が「富山売薬を広めたお殿様」として有名だったからのようです。実は富山県は「くすりの富山」として有名で、人口あたりの医薬品生産金額、製造所数、製造所従業員数が全国1位を誇っています。そのため、「反魂胆はんごんたん伝説」で有名な正甫を、富山の重要人物として銅像にしたらしいです。

反魂胆伝説:
元禄3年(1690年)、正甫が参勤交代で江戸城に登城した折、とある大名が激しい腹痛を訴えました。そこで懐中に常備していた「反魂胆」をすすめたところ、たちどころに治りました。その様子を見た諸大名は「反魂胆」の効能に驚き、自分の領内で販売を求めるようになったため、正甫の命で諸国に行商させたのが富山売薬の始まりである。

▶「反魂胆」は江戸時代に富山で誕生した胃腸薬であり、いまでも売られています。

正甫像の横には、慰霊碑がありました。消防団員の霊を弔うため、1940年に建てられたそうです。富山城がぼろぼろになってしまったのも、度重なる大火が原因です。しかし、空襲だけは免れることができたらしい。

殉職警防団員之碑
▶見切れていますが、年始の能登半島地震により崩れている箇所があるため、正面への道は閉鎖されていました。

正甫像の正面に向かって進むと、頭にシャチホコの乗った天守閣を望めました。よく見ると、鏡石かがみいし(大きな石の土台)があるのが見えます。一説では、鏡石を使うことで権力の大きさを誇示したそうです。

富山城天守閣
▶この中はきれいな博物館になっています。

博物館にあったものの中に、銀鯰尾兜ぎんなまずのおかぶとという兜がありました。これは前田家2代目の利長が着用したもので、127cmもあります。なんだか重さで身長が小さくなりそうです。

銀鯰尾兜
▶「銀」とあるように、むかしは兜の表面に銀箔が施されていたため、大層目立ったそうです。

じつは博物館入場時に「共通券」というものを買いました。これは、佐藤美術館への入場券も兼ねているので、博物館見学後は美術館に行きました。

佐藤記念美術館
▶外観も城みたいで格好いい

撮影禁止ではありましたが、素敵な山水図や蒔絵、和室があった小さ目ながらも良い美術館でした。

喫茶チェリオ

富山城から歩いて10分弱で、チェリオに到着しました。雰囲気のある看板と内装で気分が上がります。博物館と美術館で頭を使ったので、糖分を補給しました。

喫茶チェリオ
チェリオの内装。なぞのカエルが古電話の横でくつろいでいます。

自家製プリンとウインナーコーヒー(アイス)を頼みました。プリンが一つドカっと置いてあるタイプかと思ったら、もっと豪華なタイプでした。

自家製プリンとウインナーコーヒー
▶ウインナーコーヒーは、オーストリアの都市ウイーン発祥のコーヒーです。

プリンは少し硬めで、昔ながらな感じ。カラメルも苦味が抑えられているので、コーヒーの苦さとプリンの甘さを区別して楽しむことができました。コーヒーも上のホイップが少しずつ溶けて、ミルクシュガーの感じが増えてくると、スッキリしたアメリカンからまろやかなミルクコーヒーになっていく楽しさがありました。プリンの周りにある甘酸っぱい果物を時折り食べることで、甘ったるい気持ちにならず、気分転換しながらプリンの甘さを味わえました。楽しめる工夫、味わえる工夫が多くて、とても感動しました。

近くの席に座っていた叔母様方が「何十年も変わらないね」と言っていたので、歴史の詰まった喫茶店として愛されてきたんだろうなあと感じました。休日の昼なんかは行列が出来ているらしく、たまたま平日のオープン直後に入れたのは運が良かったです。

富山市ガラス美術館

チェリオを出てすぐ近くにあるガラス美術館へ行きました。こんなに大きな建物ですが、美術館のほかには図書館くらいしか入っていません。ガラス美術館というだけあって、外装はとても綺麗です。様々な角度で矩形のガラス、アルミなどを組み合わせたでこぼことした表面が印象的です。

複合施設「キラリ」
▶富山市ガラス美術館と富山市立図書館が入っている
キラリの玄関を入ったところ

中はこんな感じで、6階から下るように展覧会を回ります。6階のグラス・アート・ガーデンでは、デイル・チフーリというガラスアーティストの作品を見られました。いくつか「トヤマ」と名前が付いた作品があり、「どうやって作んねん」って感じの色とりどりなガラスアートと富山に因んだモチーフを組み合わせた作品もあり、鮮やかさだけでない面白さがありました。

デイル・チフーリ(1941-)

次に、4階の「交錯する素材」というコレクション展に行きました。このタイトルは、ガラスとほかの素材(プラスチックや金属箔、陶土など)を「交錯」させることを意味しており、それらをともに加熱させたり組み合わせたりすることで特別な形や表情をもった作品たちが展示されていました。また素材だけでなく製作法までも複数組み合わせる(交錯させる)ことで、複数のイメージをもった他に見られない面白さがある作品たちも展示してありました。

さいごは、2・3階の「富山ガラス大賞展」です。ここは唯一写真OKでした。世界各国から応募があった785点の中から一次審査を突破した50点が展示してありました。(ほかにもいくつか撮ったのですが)2点印象に残ったものがあります:

1点目は『Blurred Flower Shadow』です。「ぼやけた花の影」という意味でしょうが、「『花の影』ってどこがやねん」というのが最初の印象です。なので、とりあえずいろいろな角度から作品を見てみました。すると、下から覗き込んだときにピンときました。これは言わば、「裏返した花が落とした影にもとの色と形を持たせたもの」だと思います。つまり、上に白くぼやけているのと下で桃色にぼやけているのが花びら、真ん中の緑が花の「がく」、丸い感じのが子房(かな…?)になっていて、たぶん真上からみると花の形に戻るようになっています。

【審査員賞】ザオ・ジンア『Blurred Flower Shadow』 中国
ガザニア(参考画像)

影をただ平面的に映るものではなく、「落ちている」ものとして動きをもった姿で形にすることで、ふだんの景色を少し変えてくれるような印象を受けました。

2点目は『Forgotten』です。形容詞を意味ありげに掲げています。『Forgotten 〇〇』の「〇〇」は一体何なのか…と思いますが、横には折り紙を展開したようなものがあったので「忘れられた」のは折り紙と繋がるものだと思います。ぶっちゃけこの作品は、「折られる前のもとの形(昔の純粋なころの自分)を忘れてしまった」とか深読みできるかもしれないし、単に「忘れてしまった子供のころの思い出」かもしれません。ただ、いろいろな想像がどんどん湧いてくるような点が印象に残っています。

【金賞】ダリア・トルスカイトゥ『Forgotten』 リトアニア共和国

ガラス美術館はこんな感じでした。とにかく建物の構造が面白い場所でしたね。ショップでは、なぞのテトリスを購入しました。

なぞのテトリス

午後からは八尾に向かうため、富山駅に戻ってお昼ご飯を食べに行きます。

天下一大声大会

富山駅に戻り、今度こそ氷見で食べられなかったお寿司屋さんへ行こうと思っていたとき、見覚えのある芸人の姿が見えました。

天下一大声大会

県民の大声大会をやっていたそうです。地元の農家や営業マン、舞台役者など大声に自信のある方々が次々と壇上あがり、何dBの大声が出せるか競っていました。そのうちの営業マンの方が、「富山の寿司が美味しすぎて、県外で回らない寿司を食べたときに『こんなもんなん?』と思った!」と叫んでいたので、一層楽しみにお寿司屋さんへ行きました。

きときと寿司

とやマルシェ内にある回転寿司「きときと寿司」にやってきました。富山には富山きときと空港という空港もありますが、この「きときと」は富山の方言で「きれい、活力がある、さっぱりした」という意味があります。

机には「きときと寿司」の醬油皿やコップなど、可愛らしいものが沢山ありました。

そして、楽しみにしていた第一陣が参りました。まずお皿が豪華なことにびっくりしましたが、右上から時計回りに、かわはぎ、太刀魚、辻の身、ふくらぎです。どれも刺身として食べたことがなかったので選びました。

第一陣:かわはぎ(右上)、太刀魚(右下)、辻の身(左下)、ふくらぎ(左上)

やっぱり次は「ブリ」ですね。氷見といえばのブリ。食べた瞬間「美味い」と思いました。特に塩炙りは初めて食べましたが、炙りサーモンとかとは違った目新しい食感で楽しかったです。

第二陣:ぶり塩炙り(左)、ぶり三種(右)

どれも新鮮な香りと味で最高でした…!さすが富山湾のお寿司です。僕も瀬戸内海沿いに生まれた人間ではありますが、余りの美味しさに恐れ入りました。

贅沢な時間を終え、今度は八尾へ向かいます。富山駅から八尾まではバスで30分程度かかりました。

八尾やつお

16:00あたりで八尾に到着しました。事前に18:00ごろから八尾の曳山展示館で開催される競演会ステージのチケットをとっていたので、それまで2時間程度時間を潰します。

ちなみにこのステージでは、諏訪町という人気地区のおわらに加え、八尾高校郷土芸能部のおわらを見ることができます。(郷土芸能部って初めて聞きましたが、実は全国各地に同じ名前の部活動が存在するようです。)

八尾駅から灯篭に沿って会場まで向かいます
井田川
▶富山城の天然の堀であった神通川へ合流する

八尾おわら資料館

という訳で、井田川を越えて15分ほど歩き八尾おわら資料館に到着しました。実際に踊りを見る前に、復習を兼ねて勉強です。

八尾おわら資料館

資料館では、まず映像資料をスクリーンで見ることから始まります。おわらがいつから始まりどう変遷してきたか、そのさいにどんな人物がかかわってきたか学べます。鑑賞後の部屋には、歴代のポスターがありました。

ポスターたち。やはり、編み笠が象徴的ですね。

ポスターを抜けて2階へ上がると、いろいろな実物資料が置いてあります。昭和初期に着られていた着物や、おわらの音楽に特徴的な胡弓こきゅうという楽器もありました。

胡弓
▶三味線のように弦を弾くのではなく、バイオリンのように擦って引く

八尾にある11の町それぞれがお揃いの衣装を身にまとっています。とくに女性が黒い帯をしているのは、初めてお揃いのものを着ようということになったときに、誰でも持っていた喪服の帯を使った名残りとされています。

各町の衣装と歌
階段のところにあった編笠のライト。可愛らしさもあるし、丁度よく間接照明になってくれます。

氷見うどん

資料館を見終えましたが、まだまだ時間はあったので、晩御飯探しに出かけました。美味しいご飯と言えば氷見なのか、ここで氷見うどんを見つけました。

氷見うどん

うどんですが、よく知る讃岐うどんとは麺が全然違います。細めの平麺で、ひやむぎに近い感じですかね?さっぱり冷たくて、麺はよく出汁に絡むし美味しかったです。

おわら風の盆競演会ステージ

いよいよ時間になりましたので、八尾曳山展示館にて競演会ステージを鑑賞しました。周りを見ると…、自分より若い人がいません。往年のファンたちで埋め尽くされていました。

そんなこんなで、八尾高校➜諏訪町の順に60分間の競演会がスタートです。(写真はOKですが、一応アップにはせず引き気味で撮るようにしました。)

八尾高校郷土芸能部のみなさま
▶司会の方が話されていましたが、瑞々しさがあるおわらです。もうワシも24じゃ。
諏訪町のみなさま
▶ベテランな印象を受けます。終わりの方に、子供たちも出てきました。恐らくですが、中学生未満の踊り手は編笠をしないのだろうと思います。

あっという間の競演会でしたが、見終わっていろいろなことを思いました。

まず、編笠をしていると、性別以外(年齢など)の見分けがほとんどつかなくなるため、踊りや楽器、歌が決まるようになった昭和初期のころから、踊り手たちの景色は殆ど変わらないのだろうと思いました。つまり、編笠によって薄められた個人の形どりが、100年前の彼らと今の彼らの姿を重ねる大きな要素になっているため、「風の盆」の踊りが歴史の風雪に耐えた変わらぬ姿として今もあるのだと思います。素直に、「きっと何十世代の前の人もこの景色を見たのだろう」と感じることができました。

また、踊りや音楽も、非常に(同じ形で後世に伝わる)頑丈さを感じました。シンプルな音調を組み合わせた、短くも何度も繰り返す曲になっているので、たった数時間しか聞いていなくても自然と耳に残ります。今もこの地区に住む(まさしく)老若男女が踊り歌う姿は、それだけ(歴史の中で)受け継がれやすい形に洗練されてきた結果なのだと感じました。

ずっと続いていたら良いなと他県民ながら思います。そんなかんじで、取り敢えず人がわんさかだったので、混みすぎるまえに撤退しました。2日目も沢山のことを勉強できたし、おわらも見ることができたので、余は満足じゃ。👴

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