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好きとファンとオタクの境界線

奈良のお酒!

わたしは野球と酒が好き。
で、好きだけど、そこまで詳しくない。

好きとファンとオタクの境界線はどこだろうか?
わたしは「オタク」とか「熱狂的なファン」と言われると、申し訳ないような、恥ずかしいような妙な違和感を抱くことがある。

野球は好きだけど、ルールにめちゃくちゃ詳しいわけではない。酒も好きでほぼ毎日飲むけど、日本酒の「新政(あらまさ)」を「しんせい」と読むくらい詳しくない。

昔、「梵」という日本酒を見て、広島カープにいた梵英心(そよぎ えいしん)選手を思い出し、「そよぎくださーい!」と大きな声で言ったら、「ぼんですねーーー」と大きな声で返ってきた。

繰り返す。好きだけど、詳しくない。

上には上がいる

わたしは現在進行形で25年間、山本昌さんのファンをしている。

昌さんは中日ドラゴンズのピッチャーで、32年間プロ野球生活を続けたレジェンド。平均28歳でプロ生活を終える世界で50歳という最年長でプロ野球選手を引退したので、野球に詳しい人じゃなくても知っている人は結構多い(と思っている)。

2015年9月25日に引退を発表し、同年10月7日の対広島戦(マツダスタジアム)で日本野球界史上初の50歳での出場・登板を果たし、現役生活を締めくくった。

当時奈良に住んでいたわたしは、この試合を見に広島まで行った。もちろん、34YAMAMOTOのユニフォームを着て。ウォーミングアップをしている昌さんを見ながら、応援団のハッピを着たおっちゃんと話した。何を話したかは覚えていないけど、おっちゃんの声が優しかったのだけは記憶している。

ビジター応援席で、応援団の人が配った「34」のA3用紙を手に、始まる前から大号泣していた。試合が始まり、最初の打者の丸佳浩選手(今は巨人の選手)を二塁ゴロに打ち取って、昌さんの32年のプロ生活は終わった。中日ファンはもちろん、広島のファンも皆、すごい拍手をしていた。球場全体が唸るような大きな拍手だった。

応援団の人ありがとう

広島はこの試合に勝つと、クライマックスシリーズに行ける権利を得ることになっていたがーー勝ったのは中日だった。広島ファンの落胆ぶりたるや。Twitterでは一部の人から「ドラゴンズのグッズは隠して帰ったほうがいい」なんて忠告が飛んでいたほどだ。

昌さんが最後を締めくくった日に、ドラゴンズ昌ユニを脱いで帰るなんてありえない、最後まで着て帰る!そんな変な意地を見せて、ユニで広島駅まで歩いていたら大きな声が聞こえた。

「昌さんありがとーーーー」

「お疲れ様ーーー」

広島ファンはわたしに手を振ってくれた。いやいや、あなた達だって悔しかろう、せっかくのクライマックスのチャンスが最後の最後で手から滑り落ちたのだから。そしてわたしは昌さんじゃない。でも笑顔で手を振り返した。「ありがとーーー」って。

こういう話をすると、「めちゃくちゃ熱狂的なファンですね!」「昌オタクですね!」なんて言われるのだけど、わたしはファン歴が長いだけで、実際現地で昌さんが登板する試合は数試合しか見たことがない(セ・リーグは予告先発がなかったので、先発予想が難しかった)。

毎年2月に沖縄で行われるキャンプだって数回しか行ったことがない。愛知に住んでいないから、昌さんが出るテレビ番組だって見れないし、昌さんが出ている週刊ベースボールなどの雑誌だってマメに買うわけではない。昌さんのユニだって2枚しか持っていない(両方ともキャンプでサインしてもらった家宝である)

めちゃくちゃ有名な昌ファンの人は知っているので、あの人ほどじゃない、となってしまう。でも、傍から見れば、有休を使って沖縄に行ってキャンプを見る、立派な「熱狂的ファン」なのだ。むしろ「オタク」の勢いなのだ。

でも、上には上がいる。わたしなんて長い年月好きなだけで、ライトな「いちファン」に過ぎない。

だから「熱狂的なファンですね!」そう言われると、申し訳ないような、なんか変な違和感を抱えてしまい、ちょっと居心地が悪い。例えるなら、「亀梨くんかっこいいね!」と言っただけなのに「KAT-TUNのファンなんですね!」と返された感じなのだ。

好きとファンとオタクと

わたしは日本酒は好きだけど、オタクじゃない。ただほぼ毎日飲むので、ファンかもしれない。野球ファンだとは思うけど、オタクじゃない。キャッチャーオタクの友達がいて、「◯◯選手の防具はZETTで、XX選手のはMIZUNOで…」とメーカーにまで詳しい。ユニフォームオタクでめちゃくちゃコレクションしている奴もいる。毎試合バズーカみたいな一眼レフを持って試合を見に行き、腕に「カメラ筋」と言われる筋肉を身につけていた奴もいる。

わたしは球場に行ってビールを5杯飲んで、のんびり見ている、軽めのファンなのだ。

でも、野球を現地観戦するだけで、「球場にわざわざ行くのってめちゃくちゃオタク!」と言う友だちもいる。いやいや、わたしの知っているオタクはな、日本全国の球場制覇とか、キャンプは毎年行くとか、そのレベルや、と思ってしまう。

そこで気づいた。わたしが持っていた違和感は、ファンやオタクへそれぞれが持つ価値観からくるのではないか、と。

違和感とは、異なる価値観から生まれている

オタクというと怒る人もいる。多分、その人の中のオタクという単語が持つ言葉のイメージがマイナスなんだと思う。わたしはオタク=極めし者、というイメージなので「すごい…」と言葉を失う。他人に厳しいオタクもいるし、ライトなファンに優しいオタクもいる。

幼馴染のナオちゃんは音楽オタクで、好きなバンドが20公演したら13公演は追いかける人。でも、マンウィズアミッションを中々覚えられなかったわたしが「ガウガウさん」と呼ぶのを聞いて、怒ることなく「ガウガウさんテレビ出るよ」と教えてくれたりする。

人によっては、「それくらい覚えろ!」となるかもしれない。「ファンは知っていて当然だけど、それ以外は分からなくても仕方ないよね」、という人もいるだろう。違和感とは、価値観の違いなんだと思う。

上には上がいるけど、わたしも上だった

上記の通り、わたしは山本昌ファンである。その昌さんが、2021年12月、愛知でバスツアーをやった。なんとかチケットを入手したわたしは、万が一、億が一、新幹線が動かないことを考えて名古屋に前日入りした。当日の朝も、ソワソワしながら集合場所に向かった。なんとバスツアーの内容は、昌さんとの2ショット撮影とキャッチボールができるというもの。もう夢が叶いすぎて死期が近いと思った。

昌さんはめちゃくちゃフレンドリーで、2ショットを撮る場所は限られていたにも関わらず、いつでも気楽に撮影に応じてくれた。宝くじで6億円当てたら、5億円使って中日球団に「昌さんが先発の試合に始球式投げさせてください」とお願いしたいと思ってたし、さんま・珠緒のあんたの夢をかなえたろかTVに「山本昌とキャッチボールしたい」と応募しようかと思っていたので、こんなに簡単に夢は叶うのかと驚愕だった。

昌さんとキャッチボール後の2ショット

大興奮してSNSに投稿したら、友だちがめちゃくちゃお祝いしてくれた。10年来の友だちは「ずっと好きだと知っていて、そのエス姉が夢を叶えた」と喜んでくれた。皆、「すごい」「よかったね」「嬉しそう」とお祝いの言葉をくれた。

「25年間ずっと好きってすごい」

そうも言われた。そうか、年月で図ることもないけど、ここまで好きだから立派なファンと線引きすることもないけど、本人が好きで、周りもそう思っているならいいじゃないか。

違和感は価値観の違い。だから、違いを認めたらいいじゃないか。皆、好きの度合いは違うんだもの。


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