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BSモデルが難しい理由


難解なことで有名なBS式であるが、導出のための考え方の基本的枠組みは、プライシングの容易なフォワードやスワップと同じで、

・オプションと同じ価値を生み出す原資産と金利資産からなるポートフォリオ(複製ポートフォリオ)を考える。

・「無裁定理論」より(無裁定理論については同項目参照)、同じ価値を生み出す2つの資産の現在価値は同じでなければならない。よって、上のポートフォリオの現在価値を計算すればそれがオプションの価格となる。

というだけのものである。では何故そんなに難解になったかと言えば、オプションの場合、原資産に対して価値が非線形なので、実際の金融取引で容易に価値が複製できない、ということが基本的な原因である。通常の金融取引は資産を買うか、売るかだけであるから、それらの行為によって作り出されるポジションの価値は資産価値の一次式すなわち線形の形で表現されざるを得ない。よってオプションのように原資産に対して非線形の価値が実現するものは通常の考え方では複製ポジションはできないことになる。そこでブラック及びショールズの取った考え方は、オプションの原資産の価格の変化について一定の仮定をおくことであった。

このように原資産の価格変化に一定の仮定をおくことで、連続的に複製ポジションの内容を調整していけば最終的にオプション価値と同じ価値を生み出す取引が可能であることになった。しかし、ここで彼等が使った原資産の価格変化を表すモデル式が「確率微分方程式」と呼ばれるかなり高度な数学を使った式であったため、その厳密な理解及び数学的な処理が極めて難解なものになってしまったのである。確率微分方程式のきちんとした理解は大学教授レベルの数学者でも手こずると言われており、かなり専門的な教育を受けたものでないと深い理解は難しい領域である。

よって、一般の実務家がオプション理論を理解しようという場合、この部分をどれだけ「スマートに」こなしていけるかが重要になる。


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