見出し画像

Lil Wabi$ervy Interview

2023年8月10日、12日に仙台SHAFTにて行われたパーティ「odd flocks/148」。仙台のクラブカルチャーを次世代につなげるべく行われた本企画の試み、人のつながりをアーカイブとして残すとともに、クラブビギナーやユースたちにとってのガイドブックを作成することを目的として、本インタビューシリーズは立ち上げられた。今回は仙台にて、ベースミュージックを基軸に幅広く選曲するDJであり、2022年には京都METROにも出演を果たすなど着実に実績を積み重ねている Lil Wabi$ervy(以下、Wと略記する)に話を伺った。

(インタビュー日:2023年10月14日 インタビュアー Morizo 文 N.Yuhei)

Lil Wabi$ervy

―では、本日はよろしくお願いします。じゃあ早速の質問ですが、ワビ君がDJを始めたきっかけって何だったのでしょうか?-

W:「元々Skrillexが好きで、機材買ってみようかなと思って......そのノリでSHAFTでやっていたCRUNCH CLUB(かつてSHAFTで開催されていた、TAKABUN, GEN, RIO, ONJIらがレギュラーを務めたパーティ)に遊びに行ったのがきっかけです。」

―そのころからSHAFTに行きだして、TAKABUNさんとかRIOさんとかと出会ったのですね。何年頃の話ですか?-

W:「確か2017年とかその辺じゃないですか?あのパーティはマジでカッコよかったですね。」

―DJとしてもプレイを始めたのはちょうどその辺りですか?―

W:「そうですね、初めてCRUNCH CLUBに行って、ONJIさんにLil Wabi$ervyって名前を付けてもらいました。元々わさびが好きだったっていうのと、当時はラッパーの名義に何でもlilをつけるノリがあったので、この名前になりましたね。名前をつけてもらったあとTAKABUNさんに『Mix録って送りなよ!』って言われて、人生初Mixを作ったらDJに呼んでもらったって感じです。」

―命名はONJIさんだったのですね。―

W:「懐かしいですね。当時からPCDJの時代だったので、DJは始めやすかったです。OTAIRECORDのおすすめの安い機材を買って練習を始めました。」

―なるほど、その後はDJのキャリア的にどんなパーティに出演していたのでしょうか?-

W:「CRUNCH CLUBに出演することはその後あんまりなくて......とにかく呼んでもらったパーティはジャンルレスに出演していました。当時は年に現場は3,4回くらいしかありませんでしたけど。」

―自分が初めてワビ君と会ったのは確かbar famだったのですが、当時はSHAFTとbar famの両方でDJしていたのでしょうか?-

W:「いや、SHAFTのほうが断然多かったですね。当時自分は『YODOSI』っていうMARTYさんなどが出演されていたパーティに頻繁に出演していたりと、DiscoのDJの人と同じ現場に出ることが多かったです。」

―そういうパーティに出演したりするときは、やっぱジャンルもディスコとかに寄せていたのですか?-

W:「ベースとかジャージー・クラブとか、Editでなるべくそういう文脈に合わせていこうとしていて......わかりやすいサンプリングとかもありますよね。自分はちょっと変わり種になるようなDJをしていました。」

―なかなか、ワビ君のDJ初期の話を聞いたことはなかったので、とても新鮮だなと思います。さて、ではそんなワビ君にですが、特に影響を受けたとか、思い出深いパーティを教えてもらってもよろしいでしょうか?-

W:「やっぱCRUNCH CLUB, 『GHETTO WILD』(仙台で不定期開催されているジューク/フットワークに焦点を当てたパーティ)は外せないですね。音がめちゃくちゃかっこいいので。あとはテクノの面白さを教えてもらった......っていう意味でNEXX(かつてKAPI, 6969,Shiraishiがレギュラーを務めていたテクノパーティ)です。あれは何か、いろいろな面で最先端を感じました。全てのパーティで鳴る音がかっこいいんですよね、自分にホント刺さるものばかりで......GHETTO WILDは当時ジューク/フットワークってジャンルを初めて知るきっかけになったパーティで、演者も豪華でしたし。みんな、DJが安定しているんですよ。」

―ありがとうございます。確かに、GHETTO WILDを主催していたモトコさんは、ほんとパーティについてあれこれ考えながらオーガナイズしているのをとても感じました。さて、この流れで、今出演しているパーティについて、主観でいいから簡単に教えてもらえればと思います。今レギュラーで出演しているのは......―

W :「『愛撫大学付属高校女学寮アンソロジー』(sewashiがMonetにて主催しているパーティ)です(笑)。このパーティ......やっぱり説明するのは難しいですね。どんなパーティかって言われてもパッと言えないし。急にストイックになってみたり、ちょっと崩してふざけてみたり。演者の気分次第で大きく変化していく感じで、めちゃくちゃストイックなベースとかをやって、飽きたらなんか沖縄っぽくしてみたりしています。」

―なんかゲストにもよるのだろうけど、これ!といった型はないけどかっこいいですよね。そういったパーティの空気感ってどういう風に共有しているのでしょうか?-

W:「特に事前の打ち合わせとかはしてなくて、パーティの中で『あ、そうきたか~』『んじゃこういくか~』みたいなお互いの音でのやり取りです。」

―それって結構すごいことだと思います。お互いが考えていることを無意識に共有できるというか、感覚的なものをお互いに理解しているというか。あと、みんな引き出しが多いと感じています。―

W:「そうですね......仙台はベースの現場ってあんまり多くないので、自分たちのようなベースが軸にあるDJは引き出しが多くないとやっていけないです。」

―ある意味、どんな現場でも対応できるような回路的なものが必要なのですね。ワビ君もそういう環境に適応する中で、いろいろな力を身につけていったってことですよね。―

W :「はい、宮城県内でベース・ミュージックで定期的に開催しているパーティ、実際ないですし、愛撫大はベース・ミュージックはかかりますけど......別にベースだ!UKだ!とか、そういうので打ち出しているわけじゃないです。」

―別にベース・ミュージック以外もかかりますよね。-

W :「愛撫大は愛撫大です。」

―そこは自分の目で確かめて、ということですよね。ワビ君も今時々『ZERO』ってパーティをオーガナイズしていて、結構それはストイックめにやっているイメージが強いのですが.....そういうパーティを続けていきたいというような、何かしら展望はありますか?―

W:「んー......今ちょっとそういうストイックな気分じゃないんですよね。」

―意外です(笑)。何か理由はあるのでしょうか?-

W :「んー......シンプルな話、お金が結構かかってしまうなと感じています。新しい車を買いたいなと思っているところなので。」

―ありがとうございます。クラバー的な話に戻すのですが、最近よく遊びに行くパーティとか、おすすめのパーティってありますか?-

W :「んー、別にこれは遊びに行くってパーティを決めているわけじゃないのですけど、ryuuさんのやっている『理由』ってってパーティはすごいなって思いますね。若い子たちが多いパーティですけど、あのバイブスは......本当にすごいです。呼んでいるゲストとかもいいですし、ryuuさんシンプルにDJが上手いですし。」

―8月のパーティの時もすごかったですよね。安定感もありつつ、しっかりみんなが食いつくようなDJをしていました。―

W:「やっぱ長く続けられているのが一つでかいなって思いますし、作り方が本当にすごいと思います。」

―理由自体はコロナ以前からずっと続いているパーティですが、それはそんな厳しい中での積み重ねがあってのことですしね.....話題が移るのですが、コロナ渦でDJやパーティを運営していた頃の話を聞いてもいいでしょうか?

W :「うーん......正直何もなかったですからね当時。あのころHI-HATの休業中(2021年夏まで仙台にて営業していたナイトクラブ)、昼間の営業としてカレーとかコーヒーとかありましたけど、あそこのコーヒー上手かったなあ......DJ的な話をすると、俺はもともと高スパンで現場があったわけじゃないので、その辺は変わってないですけど、一人のクラバーとして遊びに行ける場所が少なくなっちゃったのはしんどかったですね。」

―さて、ワビ君個人の話に戻ります。今後DJを続けていく中で今はどんな音楽の聴き方をしていこうとかは、考えていたりしますか?-

W :「あー......答えになっているかは微妙ですけど、最近いろんな音楽にアンテナを立てているんですよ。アイドルソングとか聴こうと思っていたり。」

―アイドルソング!それは、DJでかけられるなと思いながら聴いているのでしょうか?-

W:「結構いい感じの音を鳴らしているんですよ。Yohji Igarashiがプロデュースしてたりとか。ASPの『I HATE U』とかはSATOHも参加してますし......ここ最近はトランスっぽかったりユーロビートっぽいやつとかが多いので、そこらへんはベース・ミュージックに織り交ぜていくことで自分の色を出して行けたりするのかな......って思っています。」

W :「DJってお客のことをしっかり、客層を見ながら選曲していかないといけないなって感じてもいます。フロアを見ることで今日どこまでストイックに言っても許されるのか、逆にガラッと変化をつけたほうがいいのかってのがわかるのかなって思いますしね。」

―確かに、自分が気持ちよくなることだけじゃなく、如何にお客の気持ちを汲み取れるかっていうのはとても大事なことですよね。そういう意味ではワビ君の言っていることも納得します、ありがとうございます。じゃあ、そんなワビ君のDJ観に影響を与えたDJって誰ですか?-

W :「第一にKAPIさんですよね。あと、ほんとにいろんな曲をかけられて上手いってとこでTAKABUNさん、加えてsewashiさんですかね。」

―確かに、sewashiさんがBad Disco(現在Monetにてsasara氏がオーガナイズするパーティ)でプレイしていたディスコ, ハウスのセットはDJとしての幅の広さを感じさせられましたし、めちゃくちゃカッコよかったですよね。―

W:「いつも刺激受けています(笑)。」

―じゃあ、このインタビューもそろそろ終わりに近づいているのですが、最近聴いているワビ君の3曲、教えていただいてもいいですか?-

W :「えーと、まずあのちゃんです(笑)。あのちゃんの『スマイルあげない』、あれめっちゃいいですね。」

―あ、あのちゃんですか(笑)。『スマイルあげない』ってどんな曲でしたっけ?-

W :「ケンモチヒデフミ氏がプロデュースしている曲ですね。いやあ......あのちゃんは結構名曲多いんですよ。この曲はMVで手遊びみたいなダンスしているじゃないですか。最近のTikTokとかのシーンを考慮して作られているんだな......と思います。盆踊りネキとかも流行っているじゃないですか。振り幅があのちゃんは本当に広くて......『ちゅ、多様性』とかはあれ絶対相対性理論(やくしまるえつこがボーカルを務めるバンド)ですよね。」

―なんか相対性理論にああいう曲ありましたよね、なんでしたっけ?-

W :「えーっと......『LOVEずっきゅん』ですね。マジで最高ですよ。あとあのちゃんは顔がいいので(笑)。」

―あのちゃんは喋りも上手いですよね。あのちゃんのANNはよく聴いているのですが、ゲストよりも喋りが上手いから、逆にゲストを引き立てるような仕事をしているのがすごいなって。-

W:「あのちゃんって、決して歌わされている感じにならないのがまたいいですよね。あれだけキャラ濃くて自然なのって、あとは椎名林檎くらいしか思い浮かばないです。
あとあのちゃんは歯並び悪い男が好きらしいので......あのちゃんが近くに来たら自分は歯をアピールします(笑)。」

―狙っているんですか(笑)。―

W :「いや、そんなやらしい感じじゃないですけど(笑)。」

―......というわけで、一曲目はあのちゃんの「スマイルあげない」を挙げていただきました。じゃあ二曲目の話に行ってみましょう。-

W :「そうですね......二曲目は、きくおの『そのまんまそのまんま、そのままずっとそのまま』か、OMORI OSTの『My Time』ですかね。二つ目のほうはどこかDJでもかけられるんじゃないかなって思っています。MVの世界観もすごいですし。なんか......気づいたらぼーっとこの曲を何回も再生していて、テクノパーティで味わえるような感じをこれらで味わえちゃうので最高ですね。」

―ボカロとかにも食指が向くことあるんですね、ありがとうございます。それでは最後の曲を聞いてもよろしいでしょうか。―

W:「本当はクラブトラックを紹介したいのですが、なかなかうまく言葉で感じていることを伝えるのは難しいです。なので最後はHazeにします(笑)。」

―Haze? 自分は初めて聞きました。―

W :「香椎かてぃってアイドルの女の子がいるんですけど、その子のバンドで......自分めちゃくちゃ好きなんですよね。最近モンハンのCMにも出ているんですけど。」

―あの子、バンドやっていたんですね......あのちゃんもそうですが、最近のアイドルは多彩ですよね。ただマイクを持って歌うだけじゃなくていろいろなことに取り組んでいます。―

W :「そうですね。Hazeの『シュシュタイト』って曲がめちゃくちゃいいです、聴いてみてください。」

―ありがとうございます。では最後の質問になるのですが、仙台のクラバー向けおすすめフードってありますか?―

W :「まずSHAFT近くの肉まん家(茶寮 仙台国分町店)、定番だけども萬寿山の水煮肉片、一閃閣ふろ家ですね。」

―ふろ家だけ知らないです、何のお店ですか?―

W:「一閃閣の隣にあるんですけど、家系ラーメンのお店ですね。」

―僕も家系はよくめぐっているのですが、アンテナに引っかかってはなかったので、今度仙台に行く際には食べに行かなきゃなと思いました。
と、インタビューはここまでになります。今日は長い時間お付き合いいただき、本当にありがとうございました!-

W :「お疲れさまでした。」

Lil Wabi$ervy DJ Mix

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?