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IBE Interview

2023年8月10日、12日に仙台SHAFTにて行われたパーティ「odd flocks/148」。仙台のクラブカルチャーを次世代につなげるべく行われた本企画の試み、人のつながりをアーカイブとして残すとともに、クラブビギナーやユースたちにとってのガイドブックを作成することを目的として、本インタビューシリーズは立ち上げられた。今回はパーティ「DUMBO」のオーガナイズを行い、長らく仙台のハウスシーンに貢献してきたDJ、IBE氏(以下、Iと略記する)にインタビューを行った。

(インタビュー日:2023年10月14日 インタビュアー:Morizo 文:N.Yuhei)

IBE

ーそれでは今日はよろしくお願いします。―

I:「よろしくお願いします。」

―早速なのですが、IBEさんがDJを始められた経緯を教えていただいてもよろしいですか?―

I :「大学の頃なのですが、一個上の先輩でDJをしていた方がおり、その人に誘われてパーティに行ったのがきっかけでした。そこでクラブの楽しさにハマり、自分もDJをしてみようという気持ちになりましたね。大学二年生で、二十歳のころだったのですが、先輩から機材を借りたり、SHAFTで行われていた練習会に参加したりして腕を磨きました。」

―おそらくSHAFTが今の店舗に移転する前のことですよね。ジャンルとしては、最初から今のようにハウスなどをプレイされていたのでしょうか?―

I:「最初のころはほんとに少しですが、ロックのDJをしていました。昔から聴いていた音楽だったので、そういうイベントに少し出演させていただいて。ですが、その後は先輩がハウスのパーティに出演していた影響もあって、少しずつ四つ打ちのDJをし始めましたね。」

―そうだったんですね、初めて出演されたパーティのことは覚えていますか?-

I:「当時ASAIさんがSHAFTで出演されていたりした、『ochame☆disco』っていうパーティがありまして、そこに出演したのが四つ打ちでは一番初めですね。初めて遊びにいったパーティもそのパーティでした。」

―ロックがDJの入口で、そこからさらにハウスへと広がっていったんですね。結構ロックの人口って、DJでも当時多かったんでしょうか。-

I:「DJでも聴いている人は本当に多いんじゃないかなと思います。今東京にいらっしゃるMORIさんも、結構実はロックが好きだったりするので。」

―自分も音楽の原体験はロックで、結構いろんな曲を聴いていましたので、シンパシーを感じますね。-

I :「自分は結構メロコア(メロディック・ハードコアの略)が好きで、Hi-StandardとかHawaiian6、locofrankや最近バスケで有名になった10-FEETなんかはよく聴いていましたね。ライブに行くのが好きで、当時頻繁に行けたバンドはよく聴いてて。逆にELLEGARDENなんかはあまり聴いていませんでした、当時すでに解散していたので。」

―そんなロックの好きなIBEさんですが、現在はハウスをプレイするようになっています。何かきっかけ的な面で、ハウスというジャンルへの印象の変化があったのであれば、ぜひ教えていただきたいです。―

I:「ハウスという音楽に出会った当初はやはり、少し難しかったというのが本音です。曲展開としては正直フラットだし、盛り上がるタイミングも少ないので......ですが、段々とそういうループミュージックの心地よさに目覚めてきて、Mixの仕方の違いとかの面白さにも気づいていったっていうのがありますね。繊細なMixもあればダイナミックなMixもあったりして、聴かせ方次第では知らない曲もとてもカッコよく聴こえるのが好きでした。」

―ロックとはやはり違った音楽の体験ではありますよね。そこから、いろんなパーティへと遊びに行くのにもつながっていったと思います。IBEさん自身が影響を受けたパーティだと、どんなものがありますか?―

I :「そうですね、基本仙台で行われていたパーティが中心になるんですけど、まずは『ZUNDOKO DISCO』、BOWさんとSISINOBUさんが主催していたパーティです。あとは、『GONG』っていう、ZUNDOKOの二人に加えてKAPIさん、MORIさんが出演されていたパーティが特に好きでした。どちらもSHAFTにて開催されているパーティでしたね。あとはMORIさんオーガナイズの『my House+』です。」

―ありがとうございます。いろいろなパーティに遊びに行き、ご自身もいろいろなパーティに出られる中で、IBEさんの中のハウスのスタイルって変わってきたりしましたか?-

I :「うーん、最初はやっぱりジャジーな、ピアノとかが入っているハウスは多くプレイしていたかなって思います。最近はアフロサウンドばっかりですね。基本的にはメロディや疾走感が好きです。」

―最近のプレイではアフロなハウスの中でも、少しダークさを感じる音を多くプレイされている印象があります。―

I :「そうですね、こう色々な音を掘っていく中で、今までであればソウルフルだったりディスコな音が中心になっていたのですけど、ちょっとダークな、テクノの気配が漂う音が好きになりました。4年前にベルリン・アムステルダムに旅行に行った際に、そこのクラブでプレイされていた硬めの音楽に影響されまして、それ以降はUSよりかはヨーロッパの音を探してみたりしています。」

―そうだったんですね、よければ旅行の際のお話をもう少し深掘りさせていただきたいです。行かれたクラブのお話などをお聞かせしていただいてもよろしいでしょうか?-

I :「ベルリンはBerghainに行ってみたかったんですけど、旅行のタイミングではやっていなかったんですよね。それでTresorってクラブに遊びに行きました。そのほかは24時間やっているカフェバーに行きましたね、一階ではラウンジっぽいDJもありつつ、地下では普通にクラブ営業していたりとか......。」

―なるほど、アムステルダムのほうではどうでしたか?-

I :「そっちのほうでは、De Schoolっていうクラブに遊びに行きました。5年限定の箱だった気がするんですけど、廃校舎を改装して作られていたお店です。学校っていうのもあって、駐輪場が広く確保されていたんですけど、そこがぎっしりと埋まっていた様子が印象的でした。ドイツもオランダも本当に大きな箱で、かつ平日24時のパーティに多くのお客が並んでいたので、それらの地域のDJ熱の盛り上がりを強く感じましたね。」

―すごい話だなと思います。廃校をクラブとして再利用するというのは、やはり日本ではなかなか成し得ない空間づくりかなって思います。自転車で来る方が多いっていうのも、クラブカルチャーが地域に根差していて、かつその人口が多いことの表れですよね。―

I :「そうですね、自転車が交通手段として一般的な地域ですし。」

―IBEさんご自身でも、今までDUMBOといったパーティをオーガナイズされてきたと思うんですけど、それ以外でオーガナイズされたパーティとかってありますか?-

I :「学生時代に『Ba cuss(バーカス)』というパーティはオーガナイズしていました。当時の同い年ぐらいの大学生たちでやっていたパーティで、若い人たちにハウスみたいなクラブミュージックに接する機会を作りたくて、3,4か月に一回のペースでオーガナイズしていましたね。ヒップホップのDJも入れたりしましたし、みんなが楽しめるような工夫をしつつ......ですが、軸になるハウスはあまりブレたくないと思っていました。」

Ba cussフライヤー(当時のDJネームはFAT)

―なるほど、結構初心者にとっての入口となるような、親しみやすさのあるイベントなのかなと思います。その他レギュラーでは、どのようなパーティに出演されていましたか?―

I :「そうですね、『Mosquito』っていうパーティにはレギュラーで当時出ていました。CHimuuさんとかも出演していて、これも同じ世代の5,6人でやっていましたね。」

ーなるほど、IBEさんのDJキャリアについて伺ったことはあまりなかったので、当時の話も含めてとても新鮮です。その後社会人になって、今のDUMBOのオーガナイズをスタートされたということでしょうか?-

I:「その通りです。その当時naotroさんとやっていたパーティもひと段落して、何か自分でレギュラーのパーティをやりたいと考えて。それで自分のやりたいメンバーとゲストを呼んで、今のDUMBOを始めました。パーティ一年目はnaotroさんをレギュラーメンバーに、その翌年にはMARTYさんをレギュラーに迎えてのパーティでしたね。コロナになったあたりで一度中断したのですが、時々また開催してみたり......っていう感じです。

DUMBOフライヤー

―去年はまたMonetで、「NAGI」っていうパーティで合同開催をしていましたよね。―

I :「そうですね、NAGIはOGAさんや6969さんなどがかつてbar famにて開催していたパーティだったのですが、せっかくなら共同開催の形式をとって、好きなメンバーを集めてパーティしたいよねっていうことで企画しました。」

NAGIフライヤー

―NAGI名物と言えばIBEさんのラーメンだと思うのですけど、あれは提供したんですか?(笑)―

I :「いやー、さすがに当時の時世を考えるとできませんでした(笑)。まだコロナ対策が厳重に行われていた時期でもありましたし、あとは純粋に出汁や麺の準備がとても大変なので......」

―私自身、実は初めて遊びに行ったパーティがDUMBOだったんですね。2019年のコロナ前のころだったんですけど、famの空間の中にかなりパンパンに人が入ってて、すごく心地よい空間でした。naotroさんにその際初めて話しかけていただいて、famに遊びに行くきっかけになったという思い出があります。―

I :「そうだったんですね、ありがとうございます。当時自分は、DJのお客さんは全く誘わないということをしていました。どうしてもDJ同士だとそこに変な付き合いの気持ちが生まれてしまうし、興味があれば来て!くらいのつもりでいました。クラブにあまり来ていない人たちにどちらかというと焦点をあてていて、SNSで広告を打ったりしていましたね。」

―なかなか面白い試みであると思います。とても大人な空間づくりがされていて思い出深いのですが、コロナの影響を結構受けたパーティであるとも思っています。IBEさん的には、パーティへの影響などでコロナに対して思ったことはありますか?―

I :「そうですね......コロナ前の最後にDUMBOをやったのが2020年の3月で、当時は他のいいハウスパーティが結構続いていました。その流れに乗って、もっとさらにパーティの勢いを増していけるタイミングであると思っていたのですが、結果的にコロナになって、パーティの流れがストップしてしまったのはとても惜しいことだなと当時思いましたね。」

―その時のパーティは、たしかryuuさんなどをゲストに迎えて、フロアの真ん中でDJをするような、Boiler Room形式のパーティだったなと思っています。―

I :「そうですね。それ以降、パーティとしての流れが止まってしまうのはもったいないなと思っていたので、配信をしてみたりという取り組みはしていたんですけど......自身の仕事の都合もあったため、とても難しさは感じましたね。」

―あの頃、パーティを2,3か月後に打ちたいなと思っていても、その時にどうなっているのかがだれにも読めなくて、結果身動きが取れないという状況が続いていましたよね。―

I :「去年の夏あたりから変化は感じていたので、少しずつパーティをしてもいいのかなという空気は感じていました。自分はそのタイミングで子供が生まれたというのもあって、あまり遊びに行けない状況は変わっていなかったのですけど。」

―お子さんができるとなかなか動きづらくなりますよね。まだ面会も厳しいころだったと思いますし、少ない機会を大事にしたい気持ちは湧くかなって思いました。仙台のシーンについては、コロナ前後での変化ってどのようなところで感じましたか?―

I:「やはり離れてしまったお客は多いのかなって思いました。この空いた時間で、住む場所や仕事が変わるといった環境の変化も多くあったけど、新しく人がやってくるといったタイミングは少ないと感じましたし、好きなメンバーを集めて行う単発のパーティも減っちゃったなと思います。

―IBEさんは今後のDJ活動やDUMBOのオーガナイズについて、ご自身も多忙だとは思いますが、どのようにしていきたいか考えておられますか?-

I:「そうですね......やはり子供ができたのもあって、今までのようにクラブで頻繁に遊んだり、パーティをオーガナイズしたりするのは難しいなと感じています。加えて今は生まれ育った登米市に引っ越した手前、仙台に行く機会は本当に少なくなっていて、パーティに行くというよりかは、人に会いに行くことばかりですね。ただ、だからと言って何もしないというわけではなくて、子供たちも遊びに来られるような野外イベントやマルシェのような、地域に根差した活動を続けていきたいです。」

―なるほど、登米であれば石巻のDJの方々、SAAAさんなんかも協力してくれそうですしね。―

I:「古川からTAKABUNさん呼ぶのもいいなって思っています(笑)。もちろん仙台、国分町が盛り上がっていてほしい気持ちはありますが、そっちは一旦OGAさんに任せましょう(笑)。」

―ありがとうございます。それでは終盤になるのですが、IBEさんが最近よく聴いている曲を教えていただけたらと思います。―

I:「まず一曲目はインディ―ロックから。Foalsっていうバンドなのですが、『In degrees』という曲がおすすめです。映画の挿入曲として初めは見つけたんですよ。映画の中で海に向かって車を走らせるシーンがあるんですけど、そこで流れていてとても印象深かったですね。すごい哀愁と疾走感があるのが気持ちいいです。」

―ありがとうございます、続けて二曲目もお伺いしてよろしいでしょうか。

I:「二つ目はEnoo Napaというアフロハウスのアーティストの『Redemption』という曲ですが、この曲もとても好きです。Hyenahというアーティストのリミックスも好きで、ヨーロッパから帰ってきた頃の自分のテンション感とすごくマッチしているなと思いました。ダークだけどもアフロなテイストで、Enoo NapaはDazzle Drumsともコラボしていて、結構自分の好きなテイストですね。」

―ありがとうございます。三曲目はどんな楽曲でしょうか?-

I :「三曲目はDoug Gomezというアーティストの『Rosa Blanca』という曲ですね。今年リリースの楽曲なんですけど、この曲はソウルフルな感じがあってとても好きですね。ギターソロやシンセな音の混ざり合いが結構好きです。」

―ありがとうございます。インディー・ロックからのチョイスというのはIBEさんらしいと思われますし、自分もこれらの曲はあとで聴いてみたいなと思いました。

I :「それぞれ、アーティストとしておススメです。」

―では最後の質問ですが、仙台のおすすめクラバーズフード、教えていただいてもよろしいでしょうか。-

I :「今仙台に住んでいないからなんだけど、成龍萬寿山の水煮肉片が本当に恋しくなってます。あと、なくなってしまった店の話にはなるんですが、金源というかつてあった中華料理屋のラム串、あれは本当においしかったですね。」

―ありがとうございます、またみんなで水煮肉片、食べに行きましょう。本日は本当にありがとうございました!-

I:「ありがとうございました。」

IBE DJ Mix

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