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Morizo Interview

 8月10日、12日に仙台SHAFTにて行われたパーティ「odd flocks/148」。仙台のクラブカルチャーを次世代につなげるべく行われた本企画の試み、人のつながりをアーカイブとして残すとともに、クラブビギナーやユースたちにとってのガイドブックを作成することを目的として、本インタビューシリーズは立ち上げられた。今回はパーティのオーガナイズメンバーの一人でもあり、現在は東京を拠点に活動をするDJのMorizoに話を伺った。

(インタビュー日:2023年8月30日 インタビュアー・文:N.Yuhei)

―それではMorizoさん、よろしくお願いいたします。―

M :「よろしくお願いいたします―。」

―早速ですが、確かMorizoさんってDJを始められたのが福島......だったんですよね?―

M :「はい、そのとおりです。」

―大学を出てからDJを始めたっていう話を以前聞いたと思いまして。なんで福島でDJ始めようという流れになったのですか?-

M :「元々音楽は好きでしたが、DJをやろうと思っていたわけではなく、きっかけはたまたま会社の同期と一緒に福島のClub NEOに行ったことですね。その同期がDJを始めて、私はそれに引っ張られてDJを始めたのがスタートです。」

―本当に流れでDJを始めたんですね。-

M :「そうですね、割と気楽に始めたDJの例かもしれません。きっかけとしてはすごくふわっとしてるというか......。その時点では全然HouseとかTechnoとかは分かっていなくて、大学の時とかはEDMとかが流行ってたからそういうのを聴いていましたし、DJでも初めのころはEDMをかけていました。ダンスミュージックと言えばEDMってイメージしか当時はなくて。でも次第に、NEOのDJの方々に影響を受けて、ああ、こういうジャンルもあるのかって掘り下げるようになっていきました。Houseとかを聴くようになり、段々とディープになっていったという感じです。」

―元々音楽を聴くのが好きだったけど、NEOに通いだしてからもっとオルタナティブだったり、アンダーグラウンドな音楽を聴きだしていったってことですね。-

M:「そうですね。元々ポップスやその時流行ってるアーティストとかは結構チェックしてました。TSUTAYAのCDを借りまくっていて、中高大といろいろな音楽を聴くのが習慣でしたね。なのでクラブ体験はNEOが初めてではありましたが、普通に音楽がいろいろかかってて楽しいと感じました。」

―個人的な感想ですが、意外とこういう風に改めて話を聞いてみると、クラブへの入口のところでクスッと笑っちゃうようなエピソードが出てきましたね。-

M:「そうですね(笑)。初めてDJをしたのも、そのNEOで働いていた当時学生のyocchiが、『Universe』っていう学生主催のパーティーに誘ってくれたのがきっかけで。僕は最初はEDMをかけてましたね。一緒にDJを始めた彼も最初はやっていたのですが、途中で辞めてしまい、僕だけが続けることになったという次第です笑」

―あはは(笑)、ですがMorizoさん的には一つの大きな転換期だったわけですよね。少し話は変わりますが、Morizoさんは福島にいたときに遊びに行ってすごく印象的だったりとか、思い出深いパーティってありましたか?―

M:「DJはじめたての頃は音楽は好きだったのですが、クラブで何をしたらいいのかをわかっていませんでした。その学生がやってたパーティー『Universe』はオールジャンルなパーティーで、クラブの楽しみ方や、パーティの奥深さが初めて分かったかなと思います。さらに、Still MomentさんがNEOで主催されているパーティー『K.I.S.S』は空間作り含めて衝撃を受けましたね。」

―自分はまだNEO自体に遊びに行ったことがなくて、『K.I.S.S.』もSNSとフライヤーでしか見たことはないんですけど、呼んでるゲストやレギュラーメンバーの顔触れなど、すべてにおいてクオリティの高いパーティである印象を受けています。-

M :「そうですね。本当に素敵なパーティーだなと思います。最近は自分もNEOにはあまり遊びに行けていないのですが、スタッフのSAIKAZUくんもハウスのパーティー『Houseism』をやってるし、若手も多くて活気があります。」

―福島でMorizoさんはキャリアをスタートされて、3年ほど福島にはいたと思うんですけど、その後仙台に移り住まれました。それこそ仙台って当時様々な箱があった中で、どうしてbar fam(かつて仙台市に存在したDJバー、以下”fam"と略記する)に最初行こうと思われたんですか?―

M:「当時一人、インスタでチェックしているDJの方がいたのですが、その人がfamでDJをしてるのを見て、その時に感じたブースの近さや、雰囲気がすごくいいなと思いました。仙台では最初にここへ行ってみようと思ったのがきっかけだったかなと思います。」

―自分も仙台で初めて遊びに行ったのは、そのfamの流れを汲んだMonetだったんですけど、右も左もわからない自分に皆さんが優しく接してくださって、雰囲気的に人との距離の近さを感じたかなって思いました。-

M:「いろいろなジャンルが共存してる感じがいいなと思いましたし、自分も音楽体験がのスタートがクラブミュージックではなかったので、ジャンルとかのこだわりがなくいろんなのを聴きたいと思っていました。そういう意味でもfamの雰囲気が好きだったと思っています。」

―famに行き始めて、パーティ『UNITE』を始められたのですが、どういった経緯で主催をやろう!と思ったのですか?-

M :「当時仙台に移り住んで、隣県の山形にもよく遊びに行ってました。自分と同級生や、少し下くらいのDJの人たちとよく関わっており、山形には高校の同期がいました。そういった中でつながった近い世代のDJと、イベントを開催したら面白いんじゃないかなって思ったのがきっかけです。あと音楽的にも近いものとかを感じた人たちでパーティができれば、グルーヴも生まれると思いました。」

―それは3県をまたがってたMorizoさんならではの動き方だと思いますし、UNITEというパーティーのタイトルともリンクしているなと思います。人と人をつなぐというか......-

M :「あっ、パーティー名に関してはそういう意味もあるのですが、実際は当時仙台で住んでたマンションの名前から貰ったんです(笑)。パーティを始めるときに名前をどうしようかと考えたときに、ふと思いついてそのまま借用しています。」

―あはは(笑)。とてもちょうどいい名前ですね。-

M :「かっこいいしコンセプトとも合うからいいなと思いました。そういうのもあって、パーティではhairiokuさんやScrabさんといった、東北にゆかりのある方々をお呼びしたりもしましたね。」

―自分の考えですが、ローカルシーンにも、外タレ等に引けを取らない、かっこいいDJ、知られざる名DJっていると思います。DJの面白さってその人がどういう音楽の聴き方をしてるのか、ひいては切り取り方をするのかだと思うので、地域の違いによる面白さを見せるパーティってすごくいいなと思います。-

M:「ありがとうございます(笑)。でもそれは、地元が別にあったからこその考え方であるような気がします。他の場所から一回来て、しかもどちらの文化も知っているからこそ多分そういう発想が生まれると思うので。僕も転勤族で、しかも出身が神奈川なので、少し地域に対しては客人的なところもあるから、こことここをつなげたら面白い......みたいな俯瞰的な発想になるのかもしれません。ローカルでやってこうってよりかは、そういうキュレーション的思考になりやすいのかなと思います。」

―Morizoさんはそれこそ福島、仙台、東京と拠点を転々とされてきたわけじゃないですか。加えて言うと出身地でDJを始められてるわけでもなくて。そういった中で、その地域のシーンに入っていく、行動をしていくことについて、ここ最近Morizoさんが考えたり感じたりしているところってありますか?-

M:「難しいですね(笑)。でも、どうやって溶け込むかでいうと、まずは当たり前ですけど色々なパーティに行ったりとか、あまり先入観を持たずにいろんなところに足を踏み出すことかな......と思います。見知らぬ土地のパーティとか箱に最初に飛び込むときの緊張感っていうのは実際ありますよね。自分もNEOに初めて行った時はワクワクしつつも、怖かったし、famも誰も知り合いがいなくて、ドアを開けたら6969さんがいた......みたいな。最初の一歩は緊張感があって、その一歩をどう乗り越えるのかっていうのが大事なんじゃないかなと思います。そこさえ乗り越えられればみんなもう優しいので。

始めて遊んだ仙台のパーティーが、IBEさんが主催してた『DUMBO』ってパーティでしたが、そこに出てたDJのnaotroさんがすごい良くしてくれて。『UNITE』の初回にもnaotroさんのことは呼ばせていただいたんだけど、そういう温かい人って絶対いるから、最初に一人で足を踏み出して溶け込む努力っていうのは拠点をいろいろ変えてきた中で感じています。」

シーンでの立ち回りってなると難しいですね。自分がそう呼べるほどの活動ができてるのかって言われたら微妙なところだけど、でも単純に自分と音楽の方向性が近い人とつながっていくのは大事なことかなって思ってて、一緒にやってくのは大事なことだよね。それがきっと、少しずつシーンの一部になっていくんじゃないかな。そういう人が集まって同じパーティを開催していくことで、他からもわかりやすく、見えやすくなると思うし、特に東京に出てから強く感じるようになったかなと思います。」

―へー、意外ですね。-

M :「やっぱり東京って箱も人も多いし、DJをさせてもらう機会は多いのですが、そんな中で自分が心から満足できるかっていうのがより大事かなと感じるようになりました。自分でしっかりやりたいことが被る人を探していかないと、より見失っちゃうというか。仙台だとあまり感じなかったけど、東京ってDJの数もシーンもたくさんあるから、その中で自分の居場所をどう見つけるかっていうのはすごい大事だなって思ったりはしました。
居場所という点で、色々お世話になっている箱はありますが、特に大塚の「地底」には、マンスリーで四つ打ちのイベントを開催させていただくなど、大変お世話になりました。音響が本当に素晴らしくて、特にレコードの音が最高な箱です!」

―今のMorizoさんに言っていただいたことは、すごくシンプルだけど核心をついていると思いました。結局自分が居心地がいいと思える場所を見つけることが、まず自分個人にとっても大事だし、ひいては一人のシーンに関わる人間として、一番輝けることだと思いました。自分から心からやりたいことって、やっぱりやってても楽しいし、新しいアイデアがどんどん湧いてきます。-

M:「ありがとうございます(笑)。」

―自分の時間帯の役割に徹しながらも、ほかの人にはない自分らしさを提示するってのがまたDJの役割でもありますし、そういう点では本当に奥が深いなあと感じることが多いです。-

M:「自分を殺しすぎてもだめだし、でも人によってはオープンより後ろの時間帯がやりたいって人もいるし......でもやっぱりどの時間もそれぞれ楽しさ、良さがあると思うから、しっかりオープンで場を温めて、あとの時間により盛り上げていくとか頭を使って考えていくのは楽しいですよね。」

―パーティっていう音楽の楽しみ方は、ほかの音楽体験に比べて圧倒的に時間軸が長いじゃないですか。初めて遊びに来てくれた人からしてみたら戸惑うかもしれないけれど、回数重ねていくことで気づく楽しさってありますよね。オープン時のあまりお客がいないから大きな音を独り占めできる感覚とか、DJがフロアをロックしてみんなで踊る瞬間とか、そういうのをいろんな人がもっと知っていってくれたらいいなって思いますね。-

M :「クラブイベントってほんと贅沢な時間の使い方というか、今の世の中のタイパ重視な流れとは逆行しているっていうのはいつも感じていて。今はインスタとかで10秒で見れる動画とか多いけど、クラブは一晩でバトンをつないでいく、物語みたいなものだな......と思います。その面白さはどこまで行っても体験して、自分の中で内発的に面白さを感じる瞬間がないとあんまり次につながらないです。そこは我々DJが頑張るべきところだと思います。」

―そうですね、研鑽を続けていきたいなって思います。それでは終盤ですが、Morizoさんが今後仙台に期待することとか、こうなっていってほしいとかっていう願望は何かありますか?-

M:「今回こうやって橋渡し的な企画を行って思っていることというか...…自分が仙台にいた3年間や、離れてからの一年を見ていて、どんどん若い子たちが出てきてると感じています。そこはすごく仙台のいいところだと思うし、どんどんみんながいろんなパーティに遊びに行って、次なるパーティに繋がっていく、循環になってほしいなって思います。それこそオー研みたいに、今まであまりクラブに来たことのなかった人が来るようなパーティーってシーンにとってもいいことだと思うし、そういうのをどんどん続けていってもらいたいなと思います。」

―そういっていただきとても光栄です、それでは、最近ハマっている3曲を教えて下さい―

M:1曲目ですが、ニュージーランドのプロデューサーEden BurnsのFree Your Mindですね。Eden Burnsは最近来日してましたが、トライバル感と、踊りやすいキックの組み合わせがとても好きで、DJでもたくさんかけています。

2曲目ですが、Boo WillamsのDepth of Lifeです。
言わずと知れた大御所ですが、心地よい空間をキープしてくれるので、よくかけます。こちらの曲はシカゴハウス感もある曲です。


3曲目は、
new jeansのプロデューサーでもある250がリミックスを手がけた曲です。2016年の曲なのですが、今聴いても新鮮に聴こえます。どうやら、BoAのPit-a-Patというアルバム収録曲が元ネタのようなのですが、跡形もなく切り刻まれています笑

―ありがとうございます。最後に仙台クラバーズ向けのおすすめフードを教えて下さい。―

家系ラーメンが大好きでして、広瀬通にある傅助には何度も行きましたね。24時ごろまでの営業なので、クラブ前にも行ってました。
最近仙台に王道家系のお店ができたと聞いて、次仙台に行くときには絶対に立ち寄りたいと思っています。

―Morizoさん本日は本当にありがとうございました!-

M
:「ありがとうございました!」

助成:仙台市市民文化事業団


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