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「ちょっとだけなら」、「私は大丈夫」と思うのは変じゃない

 コロナ禍の収束おぼつかぬまま、ゴールデンウイークがやってきました。
 「Say home」と叫ばれていますが、「まぁ、他人事だし」とか、「みんな自粛しているんだから、私ひとりくらいなら大丈夫」とか、「大げさだよね」などと油断してしまいがち。
 なぜそう思ってしまうんでしょう。
 心が弱い? 甘えがあるから? 
 実はコレ、誰にでも起きうる「認知の誤り」と呼ばれる、一種の勘違いかもしれません。


 「認知の誤り」にはいろいろな種類があります。よく知られているのは、先入観で、「大阪出身だからお笑い好き」、「名古屋人はみゃーみゃー言う」といった決めつけです。認知の誤りのうち「自分だけは大丈夫」といった考えは、「正常性バイアス」と呼ばれます。
 ところで、この「正常性バイアス」とは何でしょう。

 親しい人が亡くなったと聞いた時、「これは夢だ、夢であってくれ」だとか、「ウソに決まっている」と思った経験はないでしょうか。
 誰もが回避したい死。それを正面から受け止めようとすると、心に強いストレスがかかります。ストレスに長時間曝されると当然疲労し、日常生活に影響が表れてしまいます。そこで、「死」を「夢の中の死」や「ウソ」といった重大ではないイベントにおきかえ、心を平穏な状態に戻そうとするんです。これは異常ではなく、いたって正常な心の働きです。

 ただ、正常に戻そうとするのが過剰に働くのが問題なんです。そうなると、重大なことが起きてでも――正常補正がかかってしまい重大さが理解できず――、軽はずみな行動をとってしまうのです。

 今の日本はコロナ禍で誰もが疲れています。
 誰もが何らかのストレスに曝されているんです。
「外出するな」、「友達と会うな」、「仕事や学校に行くな」等等等。だからそのストレスから逃げようとするあまり、「自分だけは例外」、「ちょっとだけなら大したことない」と、自分を自分で騙して行動してしまう。
 ただそれは、誰もが陥りがちな「認知の誤り」という罠であって、何も「誘惑に弱い」とか、「心の貧しさ」だけで片づけてはならないと思うのです。

 「正常性バイアスが働くと、緊急事態でも甘く考えてしまう」という、心の働きがあることを知ってください。
 このほうが、「ダメです、自粛しなさい、愚かな外出者を晒しましょう」の三本柱の報道より効果があると思うんですが、どうでしょう。

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