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Art|アンリ・ルソー《婚礼》

アンリ・ルソーは、ルノワールの3歳年下で、ほぼ印象派の画家たちと同じ年代である。もともと、パリ市の税関に勤める税関吏で、本格的に絵を描くようになったのは40歳になってから。そのため、色彩重視の印象派の影響はまったくみられない。61歳で描いた代表作《婚礼》のように、切り絵のように画面に押し付けられた人物と、遠近感のない構図の画風は、異質といえるだろう。

現実世界を写真のようにカンヴァスに再現することが、長く西洋絵画のルールだった。印象派すら乗り越えられなかった、このルールを素人画家のルソーが軽々と乗り越えたのだ。このルソーの革新性をいち早く見抜いていたのが若き日のピカソだった。ピカソは当時のほとんどの観衆が笑いものにしたルソーの絵を絶賛。写実と幻想が交差するルソーの作風に敬意を表し、ルソーを招いた夜会を開いたほどだった。

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アンリ・ルソー《婚礼》 1905年頃
油彩/カンヴァス 163.0×114.0㎝ オランジュリー美術館蔵

後に、素朴派と称されたルソーは写真をもとに絵の構成を組み立てており、本作もおそらく同様の方法をとったと考えられている。しかし、もとにした写真は見つかっておらず、新郎新婦などの登場人物たちが誰なのかはわかっていない。

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