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note|ミチムラチヒロさんのnoteを読んで

毎週気になったり、考えさせられたnoteを紹介していく土曜日。今週は、僕も以前、Humanで書かせてもらった料理人、大野尚斗さんのインタビュー記事を書いていた、ミチムラチヒロさんのnoteを紹介します。

ミチムラチヒロさんは、飲食業に勤めながら小説の執筆活動をしています。僕は、料理に対する感性は、芸術の分野でも活かせると思っていて、たとえば、ミチムラさんのように文筆業もしたり、作陶、絵画や、スポーツインストラクターとかヘルス関係も親和性が高そう。今後こういった、二足の草鞋のような方は増えてくるんじゃないか、と思います。

ミチムラさんは、今年の初めに、飲食特化したインタビューnoteを始めたいいと宣言していました。

その第1弾が先日公開されました。それが、下のnote。料理人の大野尚斗さんです。

実は僕も、ミチムラさんがインタビューした1月に大野さんにお会いしていました。しかも、そのことをもとにしたnoteを書いています。

読み比べてみてみるとわかるのですが、だいぶどのように大野さんを見ているのか、何を聞こうとしていのかが、見えてきて、おもしろいのではないかと思います。

書いたこと書かなかったこと、聞いたこと聞かなかったこと

僕自身としてはミチムラさんのnoteを読んで、自分が執筆した当時のことを思い出しました。もちろん書こうとしている記事の分量もありますが、自分が何を書いて、何を書かなかったのか、何を聞いて何を聞かなかったのかをあらためて認識することになりました。

その「書かなかった」「聞かなかった」の中には、2種類あったように思います。聞いたけどあえて書かなかったこと、企画のなかでも聞かなくてもいいと思ったことです。ここが、編集者のもつ視点になるわけです。

僕が書いていたnoteは、大野さんの記事だけでなく、基本的に取材対象者のデメリットなることは書かない、という考えを持っているので、「書かなかった」「聞かなかった」のなかには、それが含まれていることもあります。つまり、「書かない方がいいな」と自制している部分があるんですね(それは、大野さん以外の記事でも同じことです)。

具体的には書きませんが、ミチムラさんのnoteには、僕が自制した部分が書かれていました。

そこがすごく面白い。

事実として2つのnoteを読み比べてみると、ミチムラさんが書いている部分には、僕も聞いていて、そのうえで書いていないことがわかります。そこがきちんとまとめられているのを読むと、自分が不必要に「おもんばかった」って自制していたことが、恥ずかしくなってしまいました。

書くというとは、取材相手に対峙することです。僕はなんだかんだ言って、取材対象者に対峙できていなかったのだと感じてしまった。もちろん、noteで趣味的にやっていることはある、という言い訳はできるのですが、でもやっぱり出来上がったものを読んだときにすべては判断されるわけです。

やっぱり、僕のnoteよりも、ミチムラさんのnoteの方がおもしろいし、大野さんをよく理解できる。そう感じざるを得なかったのです。

興味の差を埋めるのか、活かすのか

こうして、同じ取材対象者のことを、別々な人が自分で好きなようテーマを決めて書くというのは、とても学びが多いなと思いました。それは、雑誌のように、企画趣旨という決められたフレームのなかで記事を書くのとは違い、自分でフレームから決めるという作業をしているので、書き手の存在がとても大きくなります。

そうなった場合、「興味の差」が創作物のおもしろさにつながるよな、ということもいま実感しています。

そして、改めて僕自身、知ってしまったこと、理解してしまったことが、「聞かなくてもわかる」というような、慢心のようなことがあるんじゃないかと。それは文章を書いたりすることだけでなく、普段の生活のなかにも潜んでいそうです。

知識を得ることは、その事実をしっていることだけでなく、まったく関係がないもの同士をつなげたり、比較したりすることができるので、新しい価値に早く気づけたり、また、新しい価値を作ることもできる大切なことだと思います。

しかし、一方で、その知識だけでは、やっぱり創作のエネルギーにはならないし、慢心や自制によって、人の心をつかむようなものを作るのに何かの作用をもたらしてしまうのではないか。

ここ数年は、「好きなことがオリジナリティになる」ということが言われています。つまり、「書きたいこと」「聞きたいこと」があるということは、オリジナリティを生む、最初の一歩だと思うのです。

それが自分の中にあるのか。

ミチムラさんのnoteでそんなことを考えさせてもらった。

とはいえ、僕がミチムラさんのnoteのように、情熱的に「書きたいこと」「聞きたいこと」に向かっていったとしたら、それはそれで、自分の役割を果たしていないことになるな、とも思う。

ミチムラさんが書けることは、ミチムラさんにおまかせして、僕は僕で、慢心や自制をできるだけ良い方向にコントロールしながら、これまで得た知識や経験をいかして、料理人の方を書いていきたいな、と思っています。

けっきょくやることは変わらないですよね。改めて、自分の道を確認することになりました。

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