モラトリアム期間
一昨日は5月末で退職した会社の送別会だった
何回送別会をしてもらったら気が済むんだって感じだけど、
最後は結構大規模なやつで20人くらい集まった
私は大人数の飲み会だと気を使ってはしゃいだり、
ハイになったりして、ピエロのようにおちゃらけ、
舞子のように舞う。
もはやちょっとした催し。
とにかく喋りすぎるから
次の日決まって鬱になる。
冗談じゃなく誰か私を殺して欲しいと思う
アルコールの作用でそういうのあるの?
今回はいつにも増して、目が覚めるとともに一刻も早くこの世から去りたくなり、
絶望した。
おまけに二日酔いが重なって最悪だった
トイレでリバースを繰り返し、
会社に行く準備をしていた夫に、
「ちょっと保育園に送っていくの無理かも・・・」と期待半分で伝えたら、
「お散歩がてら行ってきた方が二日酔いも楽になるよ!いつも俺にもそう言ってるじゃん」と言われて返す言葉がなくなる
気持ち悪すぎて立ち上がれなかったので、
保育園に1時間遅れますと電話。
水をがぶ飲みして何とか立ち上がれるレベルまで回復。
ぼさぼさ頭に妊婦服みたいな恰好で送りに行く。保育園の先生がちょっと冷たくてなんかへこむ
その脚で、近所のネイルサロンに向かう
私はネイルが大好きで大学生から今に至るまでずっとしてる
指が太いのがコンプレックスで、
手を見るとテンションが下がるけど、
ネイルをしているとそれが相殺される気がする
最近通いだした家から徒歩5分くらいのネイルサロンは同い年のギャルが一人でやっている
ネイル歴12年になるので、
本当に色々なサロンに行ったが、
はじめここに訪れたときはおったまげた
普通、一人でやっている個人サロンて、
マンションの一角か自宅に椅子と机だけあって
みたいな感じがほとんどだと思う。
ホットペッパーの地図の通りに向かうと、
そこには路面店の、
ガラス張りの、
それはそれは立派な建物があった。
映画、キューティーブロンドを見たことがあるだろうか?
そこに出てくるネイルサロンみたいな感じ
広くて豪華なそのお店はギャルが一人で切り盛りしており、
頭のてっぺんからつま先までギャル
話し方も話す内容もギャル
どうやらそのギャルは、玉の輿に乗ったギャルで
旦那さんが費用を全部出してくれて、お店をオープンさせたらしい
俺がいるから働かなくていいのに、
と旦那に言われつつ、趣味程度に始めたと言っていた
趣味でやるには店構え立派すぎる。世田谷の住宅街の一角だけが完全にニューヨーク
そしてギャルは8LDKの家に住んでるらしい
あと毎日外食しており、
年に何回も海外旅行に行く超玉の輿ギャル。
とてもネイルが上手く丁寧でセンスが良く、
しかも安い。
とにかく安くて最初はびっくりした。
どんなアートやミラーネイルやパーツを付けても6千円
以前、「値段を決めるのがだるくてぇ、とりあえず全部6千円でいっかなみたいな~」
と言っていた
二日酔いのままギャルにネイルをしてもらっている最中、
なぜかカラオケの話になり、
何を歌うかという話題になった
私はカラオケはめったに行かない(2年に一度くらい)けど、
声が低く、女性歌手の歌は基本歌えないので、
GLAYかポルノグラフィティをチョイスすることを伝えると、
「うける!」とギャルが喜び、
急に手前の携帯をいじり出したかと思えば、
突然お店のBGMからGLAYのイントロが流れた
「全然歌っていいっすよ」
とまるで当たり前のことのように真顔で私に伝え、ネイルをもくもくと続けている
全然・・・歌って・・・いいっすよ・・・?
頭の中でその言葉を何度も反芻してる間も、大音量でWinter, againが流れている
無口な人息は白く、歴史の深い手に惹かれて
幼い日の帰り道、凛となる雪路を急ぐ
TERUの声だけが響き渡る室内
混乱する私
もくもくと爪にラメを乗せるギャル
このシュールな数秒
私は頭をフル回転させた
えっ歌えってことだよね
マイクもないのに?
この20畳ほどもある店内に大きく響き渡るこの音楽に私の肉声をのせろと?
考えても答えが出ない
このままサビになるのも気まずい
どうしよう、何が正解?
思うより前に身体が動いた
「いつか二人で行きたいね、雪が積もる頃に
生まれた町のあの白さをあなたにも見せたい~~~」
気付いたら、自分が思ったよりも数倍しっかりした声でそう歌っていた
ギャルは「最高」と言いながらも手を動かし、一緒に鼻歌で参加してきた
私は2番までフルで歌い切った
だんだん楽しくなってきてノリノリで歌った
二日酔いの身体で、
平日の昼間に
ギャルと一緒にGLAYを熱唱しながらネイルをする時間、これが無職の醍醐味なのではないだろうか
ギャルはお返しに倖田來未のbutterflyを歌ってくれた
すごい上手だった
「最後は何がいいっすか」と言われたので、
私のリクエストで、
HOWEVERを二人で熱唱した
「なんか、歌って感じっすよね、GLAYって。腹から声出してるっていうか。
最近の歌って何言ってんだかわかんないし」
とギャルが言っていてすごいわかる、すごいよかった
転職は思ったようには進んでいないが、
一つ、何回か面接を繰り返している企業がある
そこにもしご縁があって入社することになったら、どんな人生が待ってるだろう
きっと失うものも多い
挑戦してみたいとも思うが、なかなか尻込みしてしまう
自己分析の結果、やっぱり私は営業が好きだということははっきりわかったが、
それはなぜだろうかと考えた
きっと目的のあるコミュニケーションが好きなんだと思う
何かの目的を持って他人とガチンコで話すのが好き
たまには衝突したり、意見が食い違ったり、腹を立てたり立てられたりしても、それでも逃げずに額を突き合わせて人と関わるのがたまらなく好き。
あとは、自分の裁量で働きたいという思いが強いのかもしれない
他には、自分の頭で考えて何かをするのが好き
人のためになる仕事が好き
喜ばれたり、頼られるのが嬉しい
恐ろしいことに、仕事を辞めてまだ8日しかたっていないのに、
もう働きたい
解放された気分なんて1日で終わった
もう働きたいのだ
「仕事は人生を豊かにするもの」と前に夫が言っていたが、
私もそれには同感だ
趣味もなく、暮らしの中に幸せを見つけられない私のような人間は、
仕事をしない人生はあまりにも長く退屈で世界が色褪せて見える
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