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同じ轍は踏まない



お母さん!女の子ですよ!
ほら!見てください
おちんちんがないでしょ
女の子です

テンション高くかかりつけの医師がそう教えてくれた時

またかと思った

第一子なので、一般的に人々が想像する意味のまたかではない
また女が増えた
そういう意味のまたかという感想だけだった
そして同じ轍は踏むまい、その後にぼんやり思った

私は父と母がいて姉がいる
父はずっと海外で働いていたから、
姉と母とほぼ3人暮らしだった
私は中高大と女子校出身で
だから女だらけの人生だった
寝ても覚めても身の回りに女しかいなかった
それが私の人生にネガティブな影響を及ぼしているのかもしれないが、私自身は意外とそうも思っていなくて、そんな自分を気に入っていたりする。なにより、女だけの環境はすごく安心する。慣れているから。

どうでもいいけど前に、Twitterで若い女の子をおじさんが評価するみたいな動画が流れてきて、画面に映る、基本受け身姿勢だけど余計なことは言わず、小さなことで楽しそうに笑って、笑顔が可愛くて、率先して盛り上げるわけではないけれどいると周りが嬉しくなる、みたいな女の子のことを「男の人が多い環境で生きてるとこういうタイプの女の子になるよね」と言っていた

逆に「女の人が多い環境で生きるとこういうタイプの女になるよね」を具現化すると私みたいになると思う

基本いらんことしか言わないけどよく喋り、隙あらばおもろいことを言ってやろうとコソコソ様子を伺い、声もうるさく、ジョーカーみたいな顔で笑う

まぁそれは置いといて、
医師からそう告げられた時、また女か。と思ったのだった。

そしてその数ヶ月前、お腹の中に子供がいると告げられた時は、ひどいつわりに襲われて絶望のどん底にいたので、こいつが元凶だったのか。と思った。それだけだった。
嬉しいも、不安もなにもなかった。
これを聞いた人がどう捉えるかをあえて考えずに事実だけを伝えると、
こんなに簡単に子供ができると思っていなかったから拍子抜けだったのもある
というのも、私は欲しいなぁとぼんやり思っていて、子供どうする?と旦那に聞いてみたところ、
〇〇ちゃん、すぐに泣いたりパニックになったりしちゃうのに子供の面倒見れるの?
と横目で私のことを見てきた。どっからどう見ても乗り気じゃない様子だった
私が成長するのを待っていたら、妊娠できる期間はとうに超えてしまう
しかも成長するかもわからないしたぶんしない。
旦那は収入は申し分ないし、私も子供は好きだし(好かれないけど)、旦那は子供がすっごく好きだし、なら作ってからそんなの考えれば良いではないか
世の中には何も考えずに無責任にポコポコ産んでる親がたくさんいる
現にうちの会社の社内婚した夫婦だって
収入は少なく安定しない会社だし、資格やスキルもないのに無責任に2人目を作ってる
一般的に無責任か知らんが私には無責任に見える
大体あんなに頭も容量も性格も悪く、仕事もできない奴らの遺伝子を無闇に増やさないでほしい
日本の未来が危ぶまれる
完全に自分のことを棚に上げて言っているがここは私のnoteなので許してほしい
そういう奴らがポコポコ作っては産んでるのに
なんでお前が命を後世に繋ごうと思わないのか
メンヘラと結婚してしまったことによる足枷か
それともこれ以上メンヘラの遺伝子を残すまいとする彼なりの責任感か
知らんがもっとチャレンジングな人生を送れよと言いたくなる
やる前に考えようとするのがインテリの良くないところだ
だから危険日に、今日は安全日だから避妊なしでやってみようと誘って、乗り気じゃない彼にお酒をしこたま飲ませ、安全日だから安全日だからと半ば無理やり犯した。一回のそれでできた。
まじかと思った。一回でできるんかと

そんなもんだから
嬉しいとかよりも、うわ!本当にできた!という気持ちの方が強く、突然の嵐のようにつわりがきて、
嬉しさなんて吹っ飛んだ
毎日生きるのがやっとで、ケンタッキーのレッドホッドチキンを冷凍庫でガチガチに冷やすという気味の悪い食べ物を毎日食べてた
二日酔いの朝にテキーラを10杯飲まされてその直後に船に乗せられたみたいな究極の気持ち悪さが来る日も来る日も24時間続いた
そんな苦しみの最中に言われた冒頭の言葉に、

またか。

と思った
私の人生にまた女が増えた。
と。

娘が生まれた時のことは良く覚えている
オギャァ!という声と共に、
先生の「お父さんにそっくりですよ!」
という元気な声と、「えぇ!それはちょっと」という旦那の狼狽えた声が聞こえて、笑ってしまった
ほら!と見せられた我が子は本当に父親そっくりのつぶらな目をしていて、
性格も父親似でありますようにと心の中で願った
カンガルーケア?とかいう、生まれた直後にお腹に乗せるやつをされて、なんか感動的な音楽とか流されてるから一生懸命泣こうとしたけど頑張っても涙は出てこなくて、だから必要以上に、かわいいねぇとかちっちゃいねぇとか感無量っぽい声で言っといた。
心の中では、生まれた時に吸引されたから頭がビヨーンと伸びていて、それはそれはエイリアンみたいで
ずっとこのままなのかな。だとしたらやばいなとか考えていた
そんでその後30分くらいは暇だなぁと思って過ごしてた

生まれた次の日に、助産師さんが娘を運んできて、抱っこして、ゲップの練習をした時に、娘の吐息を耳の側で聞いて、初めて、生き物を産んだんだと思った。こんな小さい生き物を産んでこの先何十年もずっとそばにいるんだなと、不思議な感じがした

一方、彼はどう思っていたのかというと、
彼が自分の携帯につけている日記の一部を抜粋する。もちろん許可は取っていない。
私の名前はりかこ。



生まれた日のこと
9:31 りかちゃんから破水の連絡
12:30 病院に着く、りかちゃんがハッシュドビーフ食べてる!美味しそう!
最初の助産師さんは、ちょっと独特なおばあちゃん。でも優しい。
だんだんと陣痛周期が短くなる。
麻酔をしてもりかちゃんとても痛い。ずーっと手汗…
夕飯はローストビーフ、これも美味しそう!
食欲はあるみたい、りかちゃんモリモリ食べる。
食べるとすぐに陣痛強くなる。麻酔増やす。
昼間に産まれると思いきや、夕方→夜→次の日かも??
心配でりかちゃん泣いちゃう…痛くてしんどい…。可哀想。
陣痛のタイミングでチビの心拍数が減る、心配…。
体を横向きにすると降りてくるらしい。促進剤とめて、次の日か?
と、思いきや、陣痛の測定器が外れてただけ?
19:00 子宮口ひらく。
19:30 分娩室へ。
りかちゃん酸素マスク装着。
分娩室はハワイの映像と、なんかいい感じの音楽。
陣痛はさらに強く、いよいよその時が近づく。
産み方:
2回深呼吸、3回目息吸って、止めながらいきむ!
その時おへそを見るように体を縮めて、踵は踏ん張る。
俺は枕を後ろから支えてサポート。
りかちゃんはいきむの上手らしい!
3回目のいきみのときに、男の先生登場。
チビは、顔がりかちゃんの背中方向を向いていたとのこと。
これは普通と反対らしく、ちょっと出にくい。
よって吸引して一気に吸い出す!
20:30ごろ チビ誕生!!!!
お顔がお父さんにとっても似てしまった笑
でもかわいい!!!
生まれたばかりは頭が長い!
産毛がすごい生えてる!
とっても柔らかくて、ふやふやしてる。
あんまり泣かない、大人しいのかな?
最初は羊水を吐き出す。初めての呼吸、頑張っている!!
目は俺、鼻も俺?、唇も俺に似てる笑
輪郭はりかちゃん、ほっぺもりかちゃん!
りかちゃんのお胸に抱っこすると、すぐに泣き止む、なんてかわいい!
俺も抱っこ、あったかくてちっちゃい!
黒目がおっきい!!
泣き声も可愛く聞こえるのは気のせい?
なんか泣き声にビブラートをかけている笑
名前、もう一度考えなきゃ!
22:30 俺は帰宅。




ちなみに私は無痛分娩。
無痛分娩だからお昼のハッシュドビーフも夜のローストビーフも完食したわけなんだけど、無駄に泣いて旦那に同情してもらおうとした
母は強しなんて嘘
そして同じ光景を見ていたはずなのに受け取り手によってこんなハートフルになるのか。驚く。
出産後、娘を助産師さんに預けて、部屋でYouTubeを見てた時にこの日記が届いて、やっぱり彼を父親にできてよかったと思った
娘はこの前2歳になったが、
依然として、彼の中の母性は日に日に膨らみ、止まることを知らない
私は変わらず、なんか小さな同居人のように娘を見てしまう時の方が多い
生まれた時から母性が爆発するタイプと
時間をかけて母性が蓄積されるタイプと
最初からないタイプの人間がいると思う
そして、それは女も男も関係ないのではないか
私と旦那を見ていると
そう思わざるを得ない
私はどちらかというと最初からないタイプであると思う
頻回授乳の時に、
ママは子供の泣き声で自然と起きるし旦那は寝てるという類の話をよく聞くが
私は全然起きなかった
お乳の出が良かったので、胸はもうパンパンで大変なことになっていたが、
それよりも眠気の方が勝ってイビキをかいて寝ていたそうだ
旦那は娘のどんな小さな泣き声でも必ず目覚めて人肌温度のミルクを飲ませて抱っこで寝かしていた
朝起きると全てが完了した状態になっていることもしばしばあった
子供との向き合い方も違う
うちの子は割と小さい頃から1人で遊ぶタイプで、逆に人見知りでもあるのだが
放っておいてもずっと1人で遊んでる
私はそうなるとしめしめと思ってソファーに横になってスマホをいじり、
たまに娘が通りかかると、「イェーィ!」とかよくわからない声かけをして誰に向かってか知らないが最低限親として気に掛けてますよアピールをしているが多分それも娘にバレてて無視される
対して旦那は、
すごく関わっていく
異常なまでに関わっていく
「なんかいいもの持ってるねー!それなあに?どうやって遊ぶのー」と1万回は見慣れたおもちゃを持って彷徨っている娘に対してすごい新鮮なリアクションを取っていたりする
そんなだから、娘はパパ大好きで、パパがいないと「パパは?パパは?」と探している


自分の母性のなさを悲観的に捉えているかというと決してそうではなくて
育児放棄をしているわけではなく面倒は見ているからまぁこのままでもいいと思っている
うちの娘は2歳半になるが言葉が遅く
パパとママとばぁばとじぃじとアンパンマンのそれぞれのキャラと、あと、たまに外食した時だけ「ここ狭い!!!!」とキレているのと、初めて話した言葉は「どうぞ。」だった。
「どうぞ。」と言って席を譲ってくれたのが最初。おもてなしの精神が半端ない。
私が普段あまり話しかけないからかなと思ったりするけど、旦那がめちゃくちゃ話しかけてるからそんなこともないと思う。この子はそういう子なんだと思う。いつか話すだろう。

ただ、一つだけ
一つだけものすごく意識しているのは
「同じ轍は踏まない」それだけだ。
私は小さい時から親にあまり褒められたことがなく、むしろ自己肯定感が下がる声がけをされ続けてきた
幼心に沢山傷ついた
親を恨めばいいのにそれが出来なくて漠然と世の中を恨んだ
娘には同じようになって欲しくない。

だから毎日娘に歌を歌う
「◯◯ちゃん!すごい!〇〇ちゃん!上手!〇〇ちゃん!頑張れ!〇〇ちゃん!できる!」by作詞作曲私
この歌を毎日飽きるほど娘に歌っている
娘は人見知りがひどく初対面の人とか場所は基本ギャン泣きする
だからあまり他人に可愛がられる性格ではない
娘は顔が小さく、その小さい顔にもっと小さいパーツが収まってるタイプの、大変な愛嬌のある顔立ちなのだが、親として見ても美人ではないと思う
うちの親なら、世間体を気にして、この子は神経質で本当に困るとかの愚痴を言って牽制したり、容赦なく美人じゃないとか、目が細いとかを冗談まじりに言葉にして客観性をアピールしたりするが、
私は極力それを言わないように全身の神経を使って気をつけている
気をつけなくても出来るだろと思われるかもしれないが、これが私は全然できない
うちの親は、人前で私の性格や身体的コンプレックスや容姿を容赦なくこき下ろしてネタにして、私は親バカじゃないですよ客観的に娘を見れていますよ他の親バカと私は違うんです。というアピールに余念がなかった
娘の心より自分が他人からどう思われるかということに命をかけていた。
ずっとそうやって育ったもんだから、
私もつい、「この子はパパに似て目が細くて」とか、顔の小ささや色の白さを褒められると「そこだけは褒められるんですよ」とか「すみません、人見知りで」とか言ってしまったことが何度かある
バカバカバカバカ!私のバカ!地獄に堕ちろ!
集中しないとそれをやってしまう
だからものすごく集中する
他に大人がいて、娘がいるときはオーバーじゃなく額に汗をかくくらい集中して娘と関わる
そこで、保育士さん以外の大人とは娘がいるところで極力関わらないという身も蓋もない解決策を編み出した
もちろん友達にも娘を合わせないし(そもそもいないから楽勝)
ママ友も作らない
娘と私だけなら思う存分リラックスしてポジティブな声かけができる

できるできる!すごいすごい!大丈夫よ!大丈夫!
応援団さながら過剰なまでに毎日娘を応援している
娘の応援団長としての仕事は、母親業より全うしている自負がある
まだ2歳だから、いつか娘がどう受け止めるのかわからない
ママうるさいと言われる日も来るかもしれない
でも私は同じ轍は踏まない
娘には自分で自分のことを評価できる人間になってほしいと切に願う
私は、顔が大きいかもとか、勉強ができないかもとか、人よりもガタイが良いかもとか、鈍臭いかもとか、全部親によって刷り込まれた
自分の価値観が生まれる前に親のジャッジによる自己認識が植え付けられてしまった
それが事実であれどうであれ、そんなの自分で気付けばいい
自分の良いところも悪いところも本来は自分で気付けば良いんだ
自分で気付く時が来る。いつか。
自分で気付いた時にどう受け止めるか、どういう行動に出るかはこの子が決める
だから私が今からできることは、
いつかこの子がそういう局面に立たされた時に、誰を僻むわけでもなく、恨むわけでもなく、自分を信じて乗り越えられるようにその時の分まで今から応援する
できる!上手!頑張れ!すごい!

娘よ、このまま人格者である父親からの愛情を一心に受け止めて育ち、
いつか辛い壁にぶち当たったら母親の歌を思い出してほしい
その時のために私は毎日歌い続ける
歌手でもないのに、音痴なのに。
ただそれだけだ


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