あふれるほどの愛なんてあるかバカ
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あふれるほどの愛なんてあるかバカ

満島エリオ

noteのアプリを開くと、左下に赤い通知の丸が光る。タップすると「◯◯さんがフォローしました」と表示される。
この人、こないだもフォローしてきてなかったか。フォロバ狙いの人か。

ああ、こっちの通知も。
この人上から順番にスキ押したんだろうな。

そういうの、その人のアカウントを見るとだいたいわかる。
釣り餌の、「スキ」。私のテキストに動かされたわけじゃない。そういうノイズが、赤い丸になって画面右下でちかちかと点滅する。

そういうの、すぐわかる。だって私もこないだまで似たようなことをやっていた。

投稿される、関係ないハッシュタグが大量についた記事。そこらじゅうで踊る「#毎日更新」。
Twitterを開けば、フォロー同士がお互いの記事を讃えるツイートやRTがタイムラインを埋めていく。形成されていくnoteコミュニティ。

noteの投稿記事数が、一日中1万を超えたらしい。
みんなこのレースに必死だ。「ただの人」でしかなかった名もなき人たちが、このチャンスに血眼になっている。

noteって、みんなが表立って讃えるほど綺麗なだけのプラットフォームじゃない。ここにだってちゃんと争いがある。
あの人は自分よりフォローが多いからフォロバしたくないとか、あの人の記事のいいねが多いのはフォロワーが多いからだとか、なんであの人あんなに簡単にフォロワーが増えるんだろうとか、醜い感情が水面下で渦巻いてる。ちゃんと。
だって私がそうだもの。
数字がつくってことはそういうことだ。

最近、noterという呼称がよく使われるのを見る。
これ、どこから始まったんだろう。
そう思ってるうちにあっという間に広がった。「noterのみなさん」みたいな文章を見るたびにざわざわする。それ、私も入ってるんですか。

私、自分をnoterと思ったことはない。
そう名乗ったこともないし、自分では一度も使っていない。
noteに投稿する前から色んな場所で、色んな名前で文章を書いてきた。今だって他のサイトに投稿してる。噛りつきでいつも見ているSNSはnoteじゃなくてTwitterだ。Twitter大好きだから。

でもこの呼称はどんどん広がっている。そこそこの頻度でテキストをあげている私は、たぶん界隈の人の中でそこにカテゴライズされている。
私、noterなんですか?

noteのことは好きだ。
誰かに褒められるのは嬉しいし、感服するしかないテキストに会えるのも、文章をきっかけに誰かとつながりができるのも嬉しい。実際それで仲良くなれた人もいる。それはnoteに投稿していなかったら得られなかったかけがえないものだ。

でも私、そのために文章書いてるわけじゃない。

小さいころ、家族以外の人間と話すのが本当に苦手だった。自分の意見というものをどう表明したらいいかわからなかった。「楽しいおしゃべり」というものが未知のものすぎてわからなかった。誰かと対面で接することは自分の不器用さを突きつけられることでしかなかった。言いたいことが言えなくて、一人になってから後悔することばかりだった。

だから文章を書き始めた。
言葉なら、時間をかけて言いたいことをまとめて、齟齬を少なく伝えることができる。
うまくできない現実の私はどうでもいい、私の書いたものを読んでほしい。
そう願ったから、この世界にきたのだ。

読まれなかったら意味がない。読まれたいならまずは存在を知られる必要がある。ド正論だ。
しのごの言わずセオリー通りにやろうって、一生懸命コメントつけたりリプライ送ったりしてみたよ。
でもあっというまに疲れちゃった。

愛想よくなんてなれないよ。マメにもなれないよ。愛嬌なんかないよ。心から好きじゃないものに「好き」なんて言えないよ。自分発信で愛をあげられるほど愛にあふれた人間じゃないよ。

だからこの世界にきたんだよ。
私がどういう人間かなんて見ないでくれよ。
文章を、ただ文章を読んで、それでジャッジしてくれよ。

ハッシュタグはたくさん付けたほうがいいとか、毎日更新したほうがいいとか、タイトルから内容がわかるもののほうがいいとか、読まれやすい時間に投稿するとか、投稿ジャンルは絞ったほうがいいとか、フォローやコメントを積極的にして仲間を作るとか、仲良くなった方がRTしてもらいやすくなるとか。
正論だよ。わかってるよ。

そんな小手先に私を巻き込むな。
私に、私の文章だけで勝負させろ。

フォロバ狙いのフォローなんかするな。大して興味もないくせに「スキ」を押すな。
私をつまんない数字の「1」にしようとするな。
つまんない数字の「1」になるな。
本当にいいと思ったものにだけ自分の感情を使え。
何が「#毎日更新」だ、書きたいこともないのに無理矢理書くな。自分自身でさえ納得してないテキストを出すな。
自分が、本当に自信を持てる文章で勝負しろ。

noteのコンセプトは「つくる、つながる、とどける」。
繋がらなくたっていいと思ってる私は、noteに向いてないかもしれないね。

私のことは知らなくていい。
私のこと好きじゃなくていい。
私だって、みんなに振りまけるような無尽蔵な愛は持ってない。
私の「好き」は、本当に好きなもののためにだけ使う。
だから、私に対してもそうしてほしい。
あなたがどんな人でもいい。
私は、あなたの文章のみであなたを規定する。

あふれるほどの愛なんてない。
いいから私の書いたものを読め。

#エッセイ #コラム #note

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満島エリオ

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満島エリオ
楽しいことぜんぶ。音楽と漫画他エンタメのライター。rockinon、リアルサウンド、badcatsweeklyなどに寄稿。noteには好きなことを書いています。連絡はこちら⇒eriomitsushima@gmail.com