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五感を揺るがすフードペアリング@京都

フードペアリング。

それは、飲み物とお料理を一緒に味わうことでお互いの良さを引き立てあう組み合わせのこと。

ワインを愉しむ時、同じ意味合いで、フランス語で「結婚」を意味する「マリアージュ」という言葉を使いますが、マリアージュというと「この相性は素晴らしい組み合わせです」的な感じで、組み合わせの方程式のようなものも多数存在しているのに対し、「ペアリング」は肩ひじ張らずに「相性、よいいかもしれないですよ」くらいのニュアンスで、一つの提案にすぎないイメージです。そもそも人それぞれ好みは違うのだから、感じ方が違って当然ですよね、的な柔らかさがそこにはあります。

そのペアリングをとことん楽しめそうなイベントがあり参加してきました。

日本で今最も注目されているソムリエの一人、岩田渉さんが、今年9月に、京都駅前の新しいラグジュアリーホテル「ザ・サウザンド キョウト」のシェフソムリエに就任され、その記念で開かれたディナーでした。

まずはメニューを見てください。素材が書いてあるものもあれば、ナニコレ? と思ってしまう料理名らしからぬものも。見るだけでワクワクしちゃうメニューです。

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提供されるワインはメニューには載っていません。お料理と同時に提供されるワインは、事前に岩田ソムリエがお料理に合わせ厳選した11種。まずは、何も先入観なしに私たちの前にグラスに入ったワインが置かれます。

まずは「なんだろう、このワイン」と今までの記憶を手繰り寄せながら飲むわけです。その後、銘柄が種明かしされて飲む。さらにお料理と合わせて飲むと…。

それぞれ不思議と感じ方が違うから、3回楽しめちゃう感じなのです。

さて、ディナー開始です。1品目は「京都市左京区東塩小路町産トリュフ」。え、京都でトリュフ? なわけないよね‥‥‥。

すると、宝箱のような木箱が目の前に置かれました。

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箱を開けると、鮮やかに色づいた紅葉とトリュフらしきものが。

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何だろう? そう思いながら食べるけどわからない。でも、なんだかとってもトリュフ。種明かしを聞くと、想像もできないものから造られてました。もちろん本当のトリュフではありません。気になるでしょう。でも言えません笑
ちなみに、葉っぱもちゃんと美味しくいただけました。

これに合わせるシャンパーニュは、フレッシュで果実感がありながら、旨味や気品もしっかりある。前述のトリュフと一緒に味わうと、もう皆さん笑顔しかありません。

そして7番目に出されたのは、一番気になっていた「天下一武道会」

お皿の端と端に、お互いが睨み合っているかの如くのっているお料理は、パスタとカンノーリ。一見別々に食べるのが美味しそうな2品。

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「もちろん別々でも美味しいのですが、真ん中にチーズと柑橘から造られたソース。このソースに絡めるイメージで、真ん中で二つを混ぜ合わせて食べてみてください。」

ケンカしそうな両者を合わせてみたら、これが最高の味わいに変貌。さらに、これに合わせるワインがスモーキーさと柑橘のニュアンスを持ち合わせていて、さらにその組み合わせへの感動が増していきます。

これはすごい。お皿の上でどんどんイノベーションが起きている感じ。最初は別々にやってたけど、一緒にやってみたら意気投合。さらに繋ぎ役の出現で、さらにいい感じに。これはまるで「理想のチーム」とも言えるお皿。いいなあ、私も、このお皿のソースやワインみたいなつなぎ役になりたい。なんて、突然人生を見つめ直してしまいたくなった極上の一皿。

そしてもう一品。書いてあるメニュー名と見た目が全く違ったお皿。 
「スパゲティー トマトソース」

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見ているだけで吸い込まれそうになる美しいバイオレット色のパスタとソース。ただ、見る限りどう見てもトマトじゃない。でも、食べるとものすごくトマト。なんだこれは……。どうやら化学反応でこの色になっているらしい。

このお料理にあわせたピノノワールがまたこのお料理のイメージにぴったりだったこともあり、ここで既に10品目だったのに、この日一番、五感を揺さぶられた組み合わせでした。

それにしても。もし、「トマトソース」とメニューに書かれていなかったら、私はこれがトマトだとわかったかな、と思うと自信がない。

普段は無意識に「この食材ならこの色、この料理ならこの形、このワインならこの味わい」というものをどうしても持ってしまっている。それが強すぎると、本質が見えなくなるのかもしれない。

以前体験した「暗闇ごはん」でも同じ気づきがあったのを思い出しました。 https://note.mu/erinporin/n/n3a4d6da9a604

素材や銘柄を知らずに「これはなんだろう?」と五感をフル稼働できるからこそ、本質が見えてきて感動が増すのかもしれません。

目の前で料理が仕上がっていくのを見ながら料理を待ち、説明を直接受けながら食べるフードペアリングディナーは「究極のフードエンターテイメント」でした。

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菱田シェフは「今日は岩田が主役ですから」と言い、岩田ソムリエは「ワインはあくまでも料理のわき役ですから」と言う。

いえいえ。誰が何と言おうとどちらも主役です。この謙虚で真摯な二人の若いリーダー二人が醸し出す新たな世界、すごいことになりそうです。

このイベントは今回限りでしたが、会場となった「ザ・サウザンド キョウト」のイタリアンSCALAEの中央にあるオープンカウンターの特等席では、毎夜こんな革新的なお料理、そして素晴らしいワインとのペアリングが愉しめます。このためだけに京都に行く価値があると思えるお店です。

参考HP
ザ・サウザンド キョウト 「SCALAE」
https://www.keihanhotels-resorts.co.jp/the-thousand-kyoto/restaurants/scalae.html
岩田ソムリエ就任記念イベント
https://www.keihanhotels-resorts.co.jp/the-thousand-kyoto/plan/000283.html


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