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人と人をつなぐ、ワインの力

この景色が目の前に現れた時、胸が高鳴りました。住宅ばかりのわが街の近くに、こんな里山があったなんて。しかもここで、ワイン用ぶどう造りに情熱を燃やす若き栽培農家がいるなんて。

今年9月。友人が連れて行ってくれた、川崎市北部の麻生区にある里山の景色広がる「岡上」という素敵な場所。

そして、友人に紹介してもらった山田貢さんは、この土地で農家を営む家に生まれ、数年前からこの地でぶどうを育て、ワインをつくっていました。
ぶどうのほかに数百種類の作物をつくられている農家さんであると同時に、とれたての野菜とワインを楽しめるレストランの経営、近隣にある和光大学との産学連動プロジェクトも取り組んでおられる経営者でもあります。

数ある農作物の中で、なぜワインぶどう? なぜワインづくり? その想いや夢を聞いていたら、もうとてつもなくワクワクして。

「この話、みんなに知ってもらいたい」
そう思った川崎市市民館岡上分室に勤務する友人が企画を通し、市民館EXPO「川崎でワインの可能性を見出そう」というイベントが、2020年12月20日(日)に開催されました。私はワイン好き市民代表として、司会進行の役割で登壇させていただきました。

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このイベント、オンラインでも参加できる予定だったのですが、接続の問題で閲覧できない内容が多かったと伺ったので、当日のスライドから内容を一部紹介したいと思います。

まずは山田さんのお話を伺う前に、私から基礎情報をお話しました。

◆「川崎でワイン!」の文字が踊る記事にびっくり!
今年前半、タウン誌や新聞紙の地方版を見て驚きました。うそでしょ?って思いました。

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◆川崎市が神奈川県初のワイン特区を取ったらしい
調べてみると、2020年3月17日認可を受けたようで、わが街「かわさき」やるじゃん!と思ったのですが、調べてみると……。
特区とは「行政が推進する産業への参入障壁を少しでも減らす制度」と思っていましたが、川崎市のワイン特区は既に農業従事者でかつ旅館やレストランを経営している人しか対象にはならない、限定的な特区のようなのです。新規参入者を増やすには、通常の特区制度にバージョンアップする必要があります。

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◆そもそも、川崎でワインって…。テロワールは大丈夫?
一応ワインに携わる立場からすると、この地がぶどうづくりに恵まれているとは到底言えません。そこで、改めてテロワールとは?を考えました。

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山田さんももちろん、この地のテロワールが恵まれていないことはわかっていました。ただ、テロワールは持って生まれた条件だけではない。選ぶ品種、栽培方法など、土地の可能性を引き出す「人」が一番大事。山田さんの話を聞けけば聞くほど、やれることは未知数だし、そもそも、この地でやる意味がある。そう思え、この後、話を聞いていくことにしました。

◆山田さんが目指しているのは「農業の6次産業化」

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山田さんは農家の家に生まれましたが、最初は農業が嫌いで「ヘアメイク」の学校に通い、その道に進んでいました。でも、自分の故郷の農地がどんどん宅地化されていく現実に、自分が行動を起こさねば、と決意。次世代がこの地で農業をやろう、と思えるビジネスにしなければという強い使命感のもと、ワイナリーを軸とした農業法人を設立したのです。

なぜワインを農業ビジネスの中心の一つに据えるのでしょうか。その理由は、明快で至極納得の内容でした。

「自ら栽培し(1次産業)、自ら製造し(2次産業)自ら販売する(3次産業)、6次産業としての魅力ですね。自分たちが作る農作物と一緒に味わう場(レストラン)や、栽培体験もできるワインスクールの併設で、お客さんとつながることができる魅力は、ワインならではですよね。そして何より、たくさんの生活者が存在する都市農業のアドバンテージなんです。」

◆でも「都市農業の問題」は山積み。農家には向かい風が強まっている
山田さんが上げてくれた5つの問題のうち、2以下は日本の農業の問題点ですね。都市農業はさらに1の問題が大きく、向かい風が吹きまくりのよう。

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その問題がなぜ今大きくなっているのかを聞いて愕然。都市圏を対象として、農地として使うことを条件に、税金が減免される「生産緑地」指定制度の存在は何となく知っていました。現在指定を受けている多くの農地が、2022年にその指定期限を迎えるらしくて。宅地に転用することが可能になるため、宅地化が一気に進む可能性が大になるらしいのです。これまた全然知らなかった真実でした。

◆地域デザイン研究者との出会い
「この現実に打ちひしがれていたら、何も変わらない。」そう思っていた数年前、山田さんは近所にある和光大学で地域デザイン研究を専門にされている小林教授と出会うのです。地域デザインとは、地域の名産を紹介、さらには商品開発を行うなど、産官学をつなげて地域産業を応援し、地域課題を解決していく取組で、このイベントには小林教授も登壇されました。

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山田さんと学生と共に、既にたくさんの商品開発の実績があることもお話しいただきました。そして小林教授がお話しくださったことに驚き。

「山田さんとのプロジェクトにかかわった学生の中から、就職先に農業関係を選んだり、新たに農業を始める学生も出てきたんです。ただの農業体験ではなく、商品開発してお客様の喜ぶ顔を見ることまでの体験ができたことで、農業の醍醐味を知ったのではないかと思います」

ええ、これってすごくないですか。次世代の若者が農業に就くきっかけづくり。地域振興だけではなく、日本の農業にとってもこの取組は貢献していることになりますよね。

ワインは農業です。だからこそ、応援する側もこの根幹を理解しておくことが大事になるんですよね。

イベント後半は、長野県坂城町で葡萄畑とワイナリー、そしてレストランを経営し、実績を積まれている成澤篤人さんが、まさに山田さんの大先輩としてエールを送るべく、オンラインでゲスト出演されました。成澤さんは日本ワイン業界では「ワイン王子」と呼ばれる有名人です。

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成澤さんのお姉さまが川崎市在住ということで、川崎とのご縁もある成澤さんの取組は、まさに「地域デザイン」の理想系と感じ、ワクワク感が募りました。そして、成澤さんの「なぜワインを造るのか」3つの理由に感動。

1.自分のため→探求心
2.仲間家族のため→経営安定
3.社会のため→文化構築

最後、成澤さんの想いを託した山田さんへのメッセージも最高でした。

ワイン・お店を通じてできた「素晴らしい出会い」を大切に、人生を楽しく生きたいですね(^o^)/

これは、私たちワインを造っていない、ワイン愛好家、ワイン産業従事者にとっても同じです。ワイン、そしてワインを通じた「素晴らしい出会い」があるからこそ、ワインはやめられないんですよね。

◆日本ワインをもっと飲んで、皆で応援していこう!
最後に私から、日本ワインは伸長をし続けていること(10年で1.5倍の成長)。日本全国でワイナリーが増えていること(2018年で303ワイナリー)をお伝えし、皆で飲んで応援しよう!と提案させいただきました。

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情熱ある人。そしてその仲間。応援する人。
「人」がつながっていけば、可能性は未知数。夢は実現するはず。
そう強く思い、気持ちが奮い立った年末の1日でした。

【造り手のお二人について、もっと知りたい方は…】

山田貢さんの農業生産法人「カルナエスト」のHP
http://carnaest.jp/

成澤篤人さんのワイナリー「坂城葡萄酒醸造株式会社」のHP
https://sakaki.wine/








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