天使と嗅覚
通勤の道中、レッドブルを飲む女性を見た。その人とはかなり距離があったのに、私の鼻奥からはレッドブルの香りが漂う。私の嗅覚なんてそんなもんだ。
そんなもんだし、それでいい。
天使みたいな人に出会った。仕事でミスをした。自分の仕事は接客業だ。お客さまに迷惑をかけてしまうミスをした。
天使みたいな人に出会った。
その人は、気づかぬふり、という優しさをくれた。私のミスに気づいていないフリをしてくれた。そのミスがあっても、手続き自体は無事に終えることができる。それを知った上で、その優しさをくれた。手続きをしている最中はそのことになんて気がつかず、ただただその作業を進めていた。
天使みたいな人に出会った。
私はその人が帰ったあと、自身でそのミスに気がついてしまった。謝罪の電話を一本。その人は、私がそれで良いって思ったから、それで良いんです。逆に、気にさせてしまってすみません。と言ってくださった。
その時私の鼻奥から、レッドブルの香りが漂う。今じゃない、さすがに、良くない。それでいいとは、言えない。そう思った。
天使みたいな人に出会った。
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