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親知らず抜歯レポ -後編-

親知らず供養エッセイ後編です。
そんなジャンルのエッセイがあるかどうかはさておき、顔腫れ〜抜歯決意までの前編はこちら↓


優しいクマさん先生達のおかげで、抜歯を決意した私でしたが準備をする先生のある一言に戦慄します。

「根の部分が太いから長期戦になるかもしれない。覚悟しておいてね」。
「長期戦…どのくらいの…?」
「20分」。
「20分!?」
「抜くだけで、ね」。
「抜くだけで!?」

脳内緊急会議スタートです(『インサイド・ヘッド』を見たことがある人はあれを想像してください)。
『20分口を開けたままでいるってことよね?』
『そりゃそうだ』
『てゆうか、抜くだけでって何?抜く以外に何かするってこと?』
『心配なら聞いてみればいいじゃない』
『やめだやめだ!こんな危険なこと、今すぐ取りやめろ〜』
『だめよ!このまま歯痛と腫れた右頬をテイクアウトして帰るわけにはいかない!』
『ここは先生の腕を信じて、任せるしか…』

緊急会議終了。
「麻酔をちゃんとしてください」とのみ伝え(そりゃするわ)、後は野となれ山となれ〜人生経験〜ナンクルナイサ〜と半泣きで身を任せました。

いざ始まり、「硬いお煎餅を噛んでもびくともしない現役の歯を、人力で引き抜くって冷静にやばすぎるだろ。コワ。ヤメタイ」とか思ったものの、時既に遅し。
心をどこか遠〜くの方に追いやり、ひたすら頭の上の時計を凝視すること約5分。
「抜けた抜けた、や〜これはすごかった。ガーゼはい、噛んでてね。僕はね、二日に一回は親知らずを抜いているけど、ここまで大きいのはなかなか出会わないね〜」。

あれ、20分て言ってなかった?終わった?先生饒舌?と、放心状態の私の口の周りをガーゼで丁寧に拭いてくれながら、
「痛かったですよね、あ〜すぐに綺麗にしますからね」
と歯科助手さん。
いつの間にか垂れていた涙もトントンと優しく拭いてくれ、天使キタ?と思いました。
まさかの5分で無事終了。

そこに、
「見て、これ!すごいでしょ。根っこが一つにくっついちゃって」
とケースに入った抜きたての親知らずを持ってきた私の推し。
「こんなに大きかったけど、どこも折れずに綺麗に抜けたよ〜!せっかくだから持って帰ってね☆」
と手渡してくれた親知らずは、なんかガジュマルみたいで、夜中歩き出しそうな仕上がりでした。


止血のため、そこから少しの間そのまま安静にしている事に。
抜歯したてのため、もちろん麻酔は効いたまま・ガーゼも噛んだままなのですが、シーンとした状態を気づかってか、先生が話しかけてくるのです。
ここからが長かった(笑)

初めは首を縦や横に振り答えていたのですが、アキネイタークイズでもなく、答えきれない質問も出てきます。

「読書が好きなんだ!どんなジャンルが好きなの〜?」
「ん〜頭ちゅかうやちゅ(頭使うやつ)でしゅかね〜」
「あぁ!推理小説とか?好きな作家さんは?」
「えっと、乾くるみしゃんとか、知ってましゅか?」
「最近の作家さんか〜わかんないな。〇〇さんは、本とか読む?」
「いや〜読書は眠くなっちゃうので全然ですね」

や、あの、どうしてみんな笑わないでいられるの?
自分の赤ちゃん言葉がナチュラルすぎて、吹き出す寸前なんだけど!?
バブ語ネイティブの方ですか?(笑)とか聞いてくれていいよ!
みんなの優しさはありがたくも、恥ずかしすぎて抜歯中よりも余程おでこに汗をかきながら時間が経つのを待ちました。(笑)

「また何か気になることがあればご連絡くださいね」
「ありがとごじゃいましゅ」
「お大事に〜」
「おしぇわしゃまでしゅた〜」

この後の過ごし方など説明を受け、帰ろうとする私にクマさん先生は左頬を指差し一言。
「次はこっちが痛くなってまた来るかもね」
「い、嫌過ぎる〜〜〜」
最後までしっかり中毒性のある元彼みたいだな、としょうもない事を考えつつ、先程のレントゲンで反対親知らずのクセの生え方を確認済みだったので苦笑いで流しました。
バブ語再来嫌すぎる〜〜〜〜〜〜!


【後日談】
以前Twitterで見た、顔がパンパンに腫れた方の画像が印象的すぎてドキドキしていたものの、幸い腫れ痛みも多少程度でピークを迎え引いていきました。

ただ、私の中の体調不良あるあるで「検索魔」が現れ、そちらの方が辛かった。親知らず抜歯後のリスクを調べ尽くし恐れ慄いていました。
中でも血餅(ずっとチモチと読んでいましたが正しくはケッペイ。チモチの方が可愛いから好き)と呼ばれるかさぶたがとれないよう注意すべしとの文言が多くあり、一週間以上をビクビク過ごしました。

振り返って思うのは、ネットにはお医者様のブログや体験談を含め様々な情報があふれすぎていて、素人には何が適切なものなのか判断しにくいため、永遠調べ続けてしまう。
結果、調べすぎ疲れる割に欲しい答えに出会えず精神衛生上良くない。

真夜中にそんな私の様子を見てパートナーが言った「今日はひとまずぐっすり眠って、明日また心配だったら歯医者さんに電話してみよう」がベストアンサーだったと思います。


私の親知らずの供養はこれにて終了です〜!

長い長い親知らず抜歯レポに、二週にわたってお付き合いいただきありがとうございました。
もちろんここに記したのはあくまで私の場合の一例なので、困ったことはお医者様に相談してみてくださいね。

今年の七夕のお願いは「親知らずがもう痛くなりませんように」だった静かな海がお届けしました。また来週〜


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