回旋異常で88時間苦しんで出産した話

初めまして。先日、回旋異常のために帝王切開で出産しました。その時の話をどうしても沢山の人に知ってもらいたくて、記事を書いています。


出産の際、赤ちゃんは回転しながらお母さんのお腹から出てきます。回旋異常とは何かしらの原因でその回転がうまくいかずに出産が進まなかったり、完全に止まってしまったり、母子ともに危険となる可能性があるものです。自然になおることもあれば、帝王切開しないといけない場合もあります。


以降は長々と自分の話になってしまうので、先に伝えたい結論を書いてしまいます。


まずお医者様・助産師様へ。

・あまりにも妊婦が痛がっているときは、何か異常性を感じてエコーなり、何かしら対処をしてください。

・わからない痛みに対して「わからない」で済まさないでください。


妊婦様へ。

・陣痛は痛いものだと思いますが、分娩第1期で気が狂いそうなほどの痛みは異常です。「陣痛」は痛いものだからと済まさず、助産師さんやお医者さんをすぐに呼び、もし何も対処してくれないなら言いづらくてもエコー等してもらえるよう頼んでください。


これらが皆様に伝えたいと思ったことです。

では、ここから私の体験記に入ります。


木曜日の18:00頃から大体5分間隔の腹痛がきたため「陣痛が始まった!」と思い、22:00に病院へ。

子宮口は指一本ぐらいで赤ちゃんもおりてきてないから帰宅してもいいぐらいだけど、張りもきてるし念のため入院することに。この時の腹痛は生理痛を少しきつくしたぐらいで、まだまだ我慢できる程度。

痛みは少し強くなっていたけれども、陣痛の間隔も変わらず5分程度で子宮口も広がらなかったため、金曜日の14:30には帰宅することに。

しかし18:00ごろに段々と陣痛が強く痛むようになり、20:00ごろにははっきりと恥骨が痛むようになりました。陣痛を経験していなかった私は「赤ちゃんが骨盤を通るのだから痛いに決まってる」と思っていました。

陣痛間隔はまだ5分程度でしたが、堪えるのが辛くなってきたため再び22:00頃に病院へ。

子宮口は指2本分程になっていました。そして再度入院。その晩は既に恥骨が結構痛くて、我慢しても少し声が漏れるようになっていました。しかしこの段階では、1番痛かった時の10%にも達していなかったんです…。


土曜日もひたすら痛みに耐えましたが、陣痛5分間隔なのは変わらず、柔らかくなってはいるものの子宮口も大して開かず。

しかし痛みは徐々に強くなっていきます…。そしてこの夜からが本当の痛みとの戦いの始まりでした。

恥骨が激しく痛み、それに加えてなぜか骨盤から太ももにかけての痛みと腰痛。しかも骨盤から下にかけて触れられるだけで強い電気ショックのような激痛が走る。腰痛に関しては夫に頼んで尾てい骨辺りにテニスボールを当ててもらうことで和らぎましたが、それ以外の痛みは完全な激痛になっていました。

痛みは徐々に強くなり、日曜日の明朝には恥骨と太ももの痛みが気が狂いそうなほどの激痛に。テニスボールも意味がなくなっていました。我慢しようとしても雄叫びが出てしまい、寧ろ声を出す振動で痛みが増す。呼吸するだけで痛みを感じ、それでも赤ちゃんに酸素を送らないといけないと思い「あ"…が…ご……っ…あ"……」というような呼吸を必死にしてました。

人間って想像を絶する痛みを感じると、目玉がひっくり返るんじゃないかというぐらい上にいくんですね。


朝方に助産師さんに無痛分娩に切り替える相談をし、午前中には完全に無痛分娩に切り替えることに。

お医者様には「最初から無痛分娩を希望していればよかったのに」と言われ、「確かに最初からしとけばよかったなー」と思いました。…が、この無痛の麻酔も結局は意味がなかったんです。

色々説明を聞いて(聞いている間も大変でした)、昼過ぎには麻酔開始。背中に針を刺すので激痛の中動かないようにするのが大変でした。助産師さんに抑え付けてもらいなんとか処置終了。

麻酔をいれてもらうとすぐに痛みはやわらぎ、無痛分娩のありがたさを実感しました。

痛みが出て来たらナースコールをして麻酔を注入してもらうよう指示をいただき、お昼と晩御飯までは幸せなひと時を感じていました。

しかし、19:00頃に麻酔を注入してもらったはずなのに効かなくなってきている。むしろ痛みは悪化。助産師さんいわく麻酔には上と下があるらしく、そのどちらかが腰痛でどちらかが恥骨と太ももにきいてるんじゃないかと。そしてその上と下は交互で30分ごとにしか注入できないとのこと。

そこからは30分腰痛に耐え、30分恥骨と太ももの痛みに耐える状態に。しかし明らかに麻酔が切れるのが早い。30分の安らぎもなくなり、すぐに恥骨は常に痛くなってしまい完全に麻酔が効かない状態になりました。

陣痛の波は相変わらず5分間隔であるものの、波が来ていない間も恥骨は痛い。そして陣痛の波が来た時には激痛でもがき苦しむ状態で意識は朦朧とし、助産師さんの声かけにも反応できなくなりお医者様にパニック状態と判断されました。

すぐさま分娩室へ移され診断してもらうも、恥骨を触られるだけで激痛が走るということで「少し触れるだけで触覚が痛みと勘違いしている」と言われました。でも数時間は麻酔が効いていたし、勘違いしているような痛みではないと私は確信していました。そして太ももの痛みについては「わからない(笑)」とのこと。

その後も強めの麻酔を定期的に入れてもらっていましたが、激痛は全く変わらず。途中で隣の分娩室に出産間近の人が来られてからは数時間ほぼ放置状態が続きました。

隣の方が出産されてからしばらく待つと別のお医者様が来てくださりました。診断結果として「麻酔は効いている」「もしかしたら恥骨が割れているのかもしれない」とのこと。太ももの痛みについては再度聞くも「わからないよ。わかる人なんて誰もいないよw」と軽く笑いながら返されました。

もういっそ帝王切開してほしいとお願いしましたが「陣痛で帝王切開する人なんていないからwww そんなんだったら昔の人は出産できないよ?w それに帝王切開したら後が痛いよ。それの方が嫌でしょ?w 絶対後から自然分娩にした方が良かったって思うからw」と言われました。つまりは赤ちゃんが自然に出てくるまで待てということ。しかしまだ陣痛間隔は5分ほどで、子宮口もこのとき5cmほどしか開いていませんでした。そのためこのペースだと2日以上はこの激痛に耐えなければいけない可能性があるということ…。

私の頭の中は絶望しかありませんでした。頭の神経がおかしくなるんじゃないか、心臓がショックでいつか止まるんじゃないか。もういっそ止まってほしい、死にたい。…と思ってはいけないことを本気で思ってしまっていました。

月曜日の明け方頃、2名の助産師さんがやってきて手で子宮口を広げる手伝いと、赤ちゃんをおろすお手伝いをしてくれました。そして子宮口はついに8cmまで広げてもらえました。陣痛も3〜4分ほどに短くなりましたが、赤ちゃんはなかなかおりてこない。

赤ちゃんの向きが悪いと判断した助産師さんは、ついにエコーを見てくれました。そしてやっと言われた「回旋異常」。赤ちゃんは私のお腹側…つまり真反対を向いていたんです。

今までも赤ちゃんの向きが悪いとは言われていましたが、それについては「赤ちゃんは賢いから自然になおるよー」としか言われていませんでした。しかし助産師さんは子宮口に手を入れて、赤ちゃんの向きを少しずつ回転させてくれました。長い奮闘の末に赤ちゃんが横を向いた瞬間、あの頭がおかしくなるような恥骨痛と太ももの痛みは完全に消え去りました。私の恥骨痛と太ももの痛みは勘違いでもただの陣痛でもなく、回旋異常のために起こっていたものでした。

その後も赤ちゃんが背中側に向くように頑張ってくださりましたが、なかなか動かず…。恥骨痛はおさまってももちろん陣痛はありましたが、「痛い」と日本語を話して意識をはっきりと保てる全然耐えられる痛みでした。感覚としては、ものすごい便秘で腹痛なのを強くした感じ。無痛分娩の麻酔が効いていたからなのかもしれませんが。

その後は赤ちゃんが背中側に向きやすくなるように、しばらく左向きに寝転ぶよう指示されました。しかし…しばらくすると段々と痛くなる恥骨。

「もしかしたらまた上向いてきたかも」と言葉を発した後にエコーを見てもらうと、案の定赤ちゃんは斜め上まで向いていました。再び手で回してもらおうとするもなかなかなおらず…。

陣痛室に戻って様子見をしようということで、朝方に陣痛室に戻りましたが…その直後にあの激痛が帰ってきました。もう耐える気力も体力も残っていない私は、理性も消えて暴れ狂っていました。

そしてしばらくしてやっとお医者様から「帝王切開してもいいかもしれない」との判断がくだされました。それでもやはり帝王切開は母体が死ぬリスクもあるし、術後の回復も悪いため自然分娩の方がいいとは言われました。夫は「本人に任せる」と言い、私は首を動かすだけで痛くなる中も必死に首を縦に振りました。

そしてやっと決行されることになった帝王切開。夫に手術の説明が行われ、私は本人記入のサインをぐちゃぐちゃながらも書きました。そして暫く待機して、やっと手術室に運ばれました。もちろん待機中も常に恥骨は痛く、神経が狂ったんじゃないかと思うほどの激痛が5分以内ごとに襲ってきます。

過呼吸になりそうな私に沢山の助産師さんが「お母さん息してー。赤ちゃんに酸素いかないよー」と声をかける中、赤ちゃんを回転してくれた助産師さんだけは「大丈夫、お母さん息してる。頑張ってるよ。あともうちょっとで楽になるからね」と言ってくださり、激痛の中でしたが本当に心から救われました。

手術室内についたらすぐに麻酔を入れてくれるのかと思いきや、服を脱いだり剃毛したりと様々な準備が。そのちょっとした時間の合間に何度も襲ってくる激痛。激痛の波から痛みに変わる度に「まだ?」「すぐって言ったのに」と助産師さんに尋ねて困らせてしまいました。非常に申し訳なかったですが、その時は本当に必死でした…。

剃毛が終わって少しするとお医者様が入室されたようで横向きにされる私。少し触られるだけでも激痛なので、頭の中は本当にパニック状態。雄叫びをあげたり息が止まりかけたり。暴れ回りたいのを残り少ない理性で「あともう少し、あともう少し!!!」と自分に呼びかけて、震える身体を助産師さんに抑えつけてもらいながら麻酔を注入してもらいました。そしてフゥ…と激痛が消えました。

激痛が消えたことに一瞬理解できずボーッとしている合間に、真上に寝転がされ目の前にカーテンがかけられ、お腹を消毒されていきます。この時私は「あ、やっとあの痛みから解放されたんだ…」とゆっくり理解できました。

そして現れる罪悪感。ずっと経膣分娩の方がいいと言われたにも関わらず結局帝王切開に逃げてしまったな…と思い、周りの人にすごく申し訳ない気持ちでした。そんな中スタートする手術とともに、ミスチルのしるしが流れました。

妊娠中、ドラマ「14歳の母」を見て何度も元気をもらっていた私は「この曲の中出産できるなんて幸せだ…」と感じつつ、色々なことを思い返して涙を流しました。数分してお医者様の「赤ちゃん出るよー!」の声が聞こえた後、ついに聞こえた我が子の産声。

「やっと、やっと聞けた!! ずっと会いたかった!! やっと会えた!!」その思いがいっぱいで、私はボロボロと泣いてしまいました。

その後すぐ眠くなる薬が体に入り、私は気づいたら手術終わりまで寝ていました。手術後に夫と手術をしてくれたお医者様がお話したようですが、経膣分娩では難しかったらしく、結果論ですが帝王切開じゃないと産めなかったとのこと。


こうして、私の88時間の戦いは幕を閉じました…。意識も朦朧としていたので、若干の記憶違いはあるかもしれませんがほぼこんな感じでした。

もっと早くエコーを見てくれれば、レントゲンで見てくれれば、自然に戻るからと放置せずに赤ちゃんを見ててくれたら…。それにもしこのまま自然に赤ちゃんがおりるのを待つ選択をされていたら、赤ちゃんも私も危険だったのでは…。終わった後、私はこの気持ちでいっぱいでした。


この記事を書いている現在は手術の翌日です。なるべく細かいことを忘れていない内に書き残したい、伝えたいと思い、今書いています。

帝王切開後に麻酔が切れた後は、痛みで起きられない、上半身は少しも動かせない、咳払いもできない、あくびもできない、ただひたすら寝ることしかできませんでした。それはそれで苦しかったですが、寝れば痛みから逃げられる…。それだけで幸せでした。

今日もお腹は痛いですが痛み止めのためか大人しくしていればあまり痛みを感じないし、大変だけれど起きることも歩くこともできるし、すぐに疲れたり気持ち悪くなったりクラクラするし、鼻をかんだり咳をしたり笑ったりするのも大変だけれど…今私は幸せを実感しています。生きているんだなぁって、なんか当たり前のことを思って涙を流したりしてます(笑)

もしかしたら今後は院内を歩いたり、この痛みの中育児をしていかないといけない辛さとかもあるかもしれません。ですが、私は帝王切開で産んだことに後悔は全くしていません。むしろもっと早い段階で帝王切開の判断が出ていれば…と本当に思っています。



この体験を踏まえて、お医者様側には妊婦の様子を見た上で経膣分娩に拘るか、早めに帝王切開を視野に入れるかしてほしいです。もちろん赤ちゃんは自然に戻ることもあるのだから経膣分娩の方がいいのかもしれません。けれど…今回の苦しみを他の妊婦さん達に味わってほしくないと私は思っています。

そしてわからないことを「わからない」で済まさないでほしいです。妊婦さん達にとって頼りなのは助産師さんとお医者様しかいません。最終決定権のあるお医者様に「わからない」と言われてしまったら…妊婦側には絶望しかありません。


そして妊婦さん達や妊婦さんを支えてくれる方には、異常な痛みがあれば我慢せずに絶対にお医者様や助産師さんに訴えてくださいと伝えたいです。陣痛は痛いものだからどこからが異常な痛みなのか判断は難しいですが、分娩第1期にも関わらず気が狂いそうな痛みは異常だと思います。強くお医者様に訴えてほしいと願います。


そして出産ではこんなこともあるのだと、できる限りたくさんの人に知ってほしいです。なのでこの記事に目を通してくれた方にお願いしたいのですが、なるべくこの話を周りの人によって伝えてください。転載しても構いません。別の場所で記事にしても構いません。

帝王切開でないと産めない状態の妊婦と胎児に、負担をかけるようなことが二度とないことを願っています。



追記として。

色々と書いてますが、私も夫も助産師さん、お医者様には感謝しかしていません。こうであればよかったのに…という思いはありますが、それは私の運が悪かっただけなんだと思っています。院内設備もよく、とてもいい病院で出産できたと思っています。

もし関係者の方がこの記事を見られた際に、これだけは知っておいてもらいたいです。本当に、本当にありがとうございました。

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