2019.08.10神聖かまってちゃん(味園ユニバース)

開演間近で迷っていたのだけれど、まだチケットを販売してるというので
神聖かまってちゃんのライブに行った。
学生ぶりにライブにいったので6、7年ぶりだ。

最近の曲なんて全然聴いてないし、YouTubeもチェックしてない。
今どれほどかまってちゃんが支持されているのかわからないけれど、
今のかまってちゃんがどうしているのか知りたかった。
わたしが学生時代夢中になって、すくわれてきた場所。
あれから少しは成長できたところも、やっぱり変われていないところも
たくさんあるわたしだけど、今の自分がかまってちゃんに会ったら
どうなるのか、何を感じるのか、それを確認してみたかったんだ。

大阪という土地のせいなのか(学生時代は広島だったので)、
会場はおしゃれな今風の若い子たちが多くて少し意外だった。
女の子は健康的だし、男の子はしゅっとしていて爽やか。
まるで普通のフェスかなんかみたいだ。
わたしがライブに行ってた頃は
女の子はセーラー服やチャイナ服のコスプレをしていたし、
男の人は「神」と書かれたヘルメットをかぶっていたり
の子さんと同じ虹色のサングラスをしてきたりと
なんだか濃いというか、
普通の社会ではおさまりきれずにはみ出してきた人
という退廃的なムードが濃かった。

ライブではステージ前に囲われている柵の中には入らず、
端っこの前の方で見ることにした。
薄暗がりの中ラックに吊るされているピンクのギター。
なつかしいの子さんのギターだ。
まだ使ってるんだ。
そうおもったら、胸がすこしだけきゅんとした。
柵の中の方はぎゅうぎゅうで開演前にも関わらず
前列にいた女の子は貧血か酸欠かで倒れて
スタッフにお姫様抱っこで運ばれて戻ってくることはなかった。
わたしも学生時代はあの柵の中に入って、少しでも前に行きたくて
の子さんに触りたくて、もみくちゃになっていたのだけれど、
今はもうそんな勇気は出ない。

そうして始まった、かまってちゃんのライブ。
運よくの子さんが近い。
オーバーサイズのライブTシャツにパジャマのズボン、
病人みたいなピンクのだぼだぼのカーディガン。
あのころと全然変わってない、最高にロックだ。
そして本人は狙っているのか狙っていないのか分からないけれど、
あざとく可愛い。
すぐにカーディガンは脱いでしまったけれど、
Tシャツからのぞく腕が折れそうに細い、
そして血管の浮かんだ手が繊細できれい。
『の子さん、痩せた?前から細かったけど、こんなに痩せてたっけ?』
『そういえばの子さん、手きれいだったよなあ』
なんだか、いろいろ忘れていて、なつかしくて胸が痛くなる。
学生時代のわたしはの子さんに恋していたから
なつかしい昔の恋人との再会みたいだった。

学生時代のライブでは、メンバーが登場するとお客さんが
「の子さんイケメン!!」
「の子さんハゲ~~!!」(そしての子さんが「黙れ」と暴言を吐く)
「みさこ可愛い~~!!」
「monoくんブサイク~~!!」
「ちばぎーん♡♡」
と口々に叫んでいたものだったけれども、大阪ではみんな静かだった。

食い入るようにステージを見つめ、ひたむきな様子でMCを聴く。
の子さんはがなるので何言ってるか6割くらいしか
聞き取れなかったんだけど、何回も繰り返し言ってたのは
・このライブでみんなも溜まってるフラストレーションを吐き出せ、
 叩きつけろ。
・年齢なんて関係ない。動かなきゃって思いながら動けないときもあるけど
 いつスタートしたっていいんだよ、遅いなんてことはねえんだよ。
・大阪で何回もライブしてるけどこのメンバー(お客さん)は
 1回きりだ、毎回毎回「今」を大事にして俺はやるんだ。
というようなこと。

そして何回も何回もダイブしていた。

ライブは3部制だったのだけど、
の子さんは毎回衣装を変えていて、
2回目は中学校の制服みたいな白い開襟シャツに、
チェック柄の部屋着みたいなハーフパンツ
(途中からはシャツは脱いで上半身裸だった)。
3回目は別の黄色いライブTシャツに
下はズボンを脱いでパンツ1丁で現れたので、わらった。
最終的にはTシャツも脱いじゃってパンツ1枚で歌い、
客席にダイブしていて圧巻だった。

学生の頃はの子さんが暴れたり、ダイブしてくれるとうれしかった。
もっとやれ~!と思っていたのに、
今回はの子さんの身体の方が気になってハラハラした。
わたし同様、の子さんも歳を取っているわけだし(34歳)、
あんなにガリガリの細い身体で暴れまくって、
ライブ終了後は傷やアザだらけだろう。
ステージから引っ込むなり、酸欠でその場に倒れているのかもしれない。
もうの子さんの熱い気もちはきちんと届いているから無理しないで。
そんなことを思って、でもそれと同時に
あの激しいの子さんのパフォーマンスは
昔からわたしたちへの愛だったんだな、っていうのに
今更ながら気づいたりもしてちょっと胸が苦しくなった。
当時のわたしは、場を盛り上げるために
やってみせてるだけなのだと思っていたよ。
の子さんはいつも全力でわたしたちに向かってきてくれていたんだ。
なんだかわたし、全然分かっていなかったな。

ライブの途中での子さんが
「お前ら何のためにかまってちゃんのライブに来てんだよ?」
って訊いたら、
客席から男の子が「暴れるため」って答えて笑われていたけれど、
そうだ、学生時代のわたしはたぶん暴れたくて
かまってちゃんのライブに通っていた。
理不尽なこと、頑張れないこと、頑張ってみたつもりでもダメなこと、
上手くいかないことばかりで、
自分を取り囲む様々なものにわたしは怒っていて
それを吐き出させてくれるのが、かまってちゃんだった。
うだつが上がらなくて、いつも周りに劣等感があって
普段は周りから隠れるように小さく生きていることしかできないわたしでも
いっちょまえに怒ったり毒づける場を作ってくれたのが
かまってちゃんだった。

でも今のわたしにはもうそんな怒りはない。
今のわたしだって、人生に不満がないわけじゃない。
みんなが結婚・出産していく中、わたしはまだ恋愛もできないし、
仕事だってパッとせず、くすぶっている。
全然人生上手くいってない。
でもそれをどこかで「仕方ないよね」って思ってる自分がいるし、
学生の時みたいにもうそれを他人や周りのせいには
できなくなってしまった。
うっすら「まあ自分も悪いよね…」みたいに思ってるところがあるし、
不満が溜まってきたら、きちんと自分をなだめたり励ましたりして
気もちをコントロールできるようにもなった。
自分が持ってないものばかりをあげつらうんじゃなくて、
今自分が持っているものを感謝したり大事にすることも
できるようになった、そういうこと分かるようになった。

昔みたいにライブで渦巻く激情に乗れなくなったのは残念だけれども
こうやって少し離れてみることで
の子さんの言いたいことがより冷静に分かるような気がしたり
ライブに込めてる熱意やら愛やらを
きちんと受け取れるようになったのはうれしい。
(学生でライブに行ってたときも、たぶんの子さんはいろいろメッセージを   
 送ってくれてたと思うんだけどあんまり記憶にないんだもん。)

ライブの予定終了時刻は21時までで、
アンコールの締めの曲「ロックンロールは鳴りやまないっ!」まで
歌っちゃったのに、急遽まだやりたいって言いだして
照明兼マネージャーに
「俺が延長料金の50万とか100万払うからもっとやっていい?」
って言いだしたのは、の子さん最高にロックでカッコよかったな。

なんかもう放り出される、って心細くなったときに
ガッと抱きしめられた感じ。
あったかくてふいうちで、ちょっと泣きそうになるくらい
ほんとうにほんとうによかった。

OKを出してくれたマネージャーさんも器のデカい方です。
本当にありがとうございました。

の子さんは結局その後即興で2曲歌ってくれて、
ライブが終わったのは21時半前。
(途中休憩挟んだとはいえ、17時開始ですから…。
 なんてコスパの高いライブなんだ。)

ライブ中、すっごいうれしそうな表情で
「俺めっちゃ楽しいよ!お前らに金払いたいくらいだもん」
なんて言われたら、
客と演者みたいなビジネスめいた心の中の距離感も吹っ飛んで
ついつい笑顔になってしまうよね。

わたしの中では長いブランクがあったけれど、
かまってちゃんはやっぱりカッコよくてあったかくて
いろんな人に愛されていて、よかった、いいバンドだった。

あの頃かまってちゃんを好きでいた自分も間違いではない、
ということを改めて肯定することができたし、
かまってちゃんの良さを再認識できたり、
思いがけず自分の成長を見つめなおすことができたりして
迷っていたけど、今回のライブに行ってよかった。

これからもふとした時にライブに行って
また自分の今までを答え合わせするように
かまってちゃんに会えたらいいなと思う。

最近はずっと忘れていたけれど
本物の熱くて最高なロックを見せてくれてありがとう。

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