スミレ(紫)(誕生花ss)
黒板の周りを、色鮮やかな熱帯魚が泳いでいく。日本史の先生の後頭部に突き刺さって、そのまま向こう側からターンして戻って来る。静まり返った教室の中で、先生の声が泡になって弾け、海藻が張り付いた机に向かって、クラスメイト達がノートを取っている。
ああ、またコレか。最近、海が多いな。
寄って来た魚をシャーペンで軽く払って、私もノートに向かう。ノートは濡れてもいないし、私の呼吸も苦しくなどない。この海は、私の夢だ。白昼夢、というらしい。言葉は知っていたけれど、実際、こんなにハッキ