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【大学編】オンライン模擬授業実践会をやってみた[2020/5/3]

大学のオンライン授業が本格的にスタートする前の5月3日に、大学教員の友人たちに協力してもらい、Zoomで模擬授業実践ラボを開催した。

大学での単発講義を担当させてもらってはいるが、教員ではない私がなぜこの会を実施しようとしたのか。
素直に「この急激な環境変化に、教員の皆さんはなかなかに困っているだろうなぁ」と思ったことに加え、私自身の研修事業のクライアントが、全てオンラインへの移行ができなかったことにより、私自身にただただ時間ができたからである。

半分白目で虚無な時間を迎えると、ひたすらにいろいろなアイデアが浮かんだり、今まで社会課題として抱えていた疑問が一気に湧いてくる性分も大きく働いている。

そこで、大学で教員をしている友人数名にインタビューをさせてもらった。
この時点で進捗がわかったことは、

・大学として、どのe-ラーニングシステムを使うかの決定
・オンラインを使う場合のツールの決定と、使用方法についての研修実施
・学生の接続デバイス環境の調査

などであった。

しかし、対面からオンラインに切り替わったことによる、インストラクショナルデザインの再構築は各教員に任されており、これはもう教員本人のオンラインツールに関する知識と能力によって、学生への授業の届け方が異なってくる、ということでもある。
教員同士で補完し合いたいと思っても、もはや連休明け、もしくはその翌週からスタートする授業1-3回目くらいの準備を今すぐなんとかせねばならない状況であろう。

◇◇◇

そこで、日頃研修の仕事をするうえで、模擬講義をしたりチームティーチングをする機会が多い私に、何かできないかを考えた。

温かい場づくりのファシリテーションを大事にしながら、模擬授業と健全なフィードバックをし合える機会を、私自身が作ればいいのではないか、と思ったのだ。

指導の場ではなく、体験から相互学習する場。主催の私自身が大学教員でないことも、逆にしがらみがなくていいだろう。

そもそも、オンラインではなく対面授業であっても、教員同士が学会や大学を越えて、自分の授業を研鑽していく必要性も感じていた。
大学は開かれているようで、閉じている部分が多い。
外部にだけでなく、組織横断的な共有などもなされていないことが多いのではないだろうか。
(私も過去に、このわちゃわちゃに巻き込まれた経験が何度かある...)

だがしかし、悩みながらもこの機会に学びを深めようとしている、大学教員の友人たちがいた。
みんな、大学のシステムや状況が異なり、一度予定をしたものが崩れたりしながらも、未だ会えぬ学生たちのことを思っていた。

まずは、オンラインツールの効果的な使い方や、授業の回し方、教員と学生の関係構築のためのツールなどのアイデア共有に加え、自分が設計した授業を一部模擬で実施することで、学生にどのように伝わるか、をテストしてみようということになった。

図らずも変化が求められるときがやってきた。
三文字の新型ウィルスは、公衆衛生や経済の不安と共に、そんな機会をも運んできたのだ。

◇◇◇

なお、開催当日に「急速なオンライン授業環境への移行に伴い困っていること」についてヒアリングをした。
以下が回答が多かったもの。

・学生のオンライン授業環境の不足(通信機器など)
・インストラクショナルデザイン変更の急務

大学も教員も、学生の環境に合わせ補完もできるよう、ひとつの授業でも複数の届け方のパターンを持たねばならない。
また、対面授業とオンラインでは、届け方が異なることに苦慮をしていた。

予算がある大学ならば、学生全員に通信環境やPCなどを渡すことができるのかもしれない。
しかし、全ての大学がそうではない。

学生は予定していた全てが覆ってしまった感じだろう。
しかし、それは教員も同じなのだ。
だからきっと、教員と学生が相互に授業を作り上げていくのだと思う。
教室が自宅に変わっても。

そしてイベント当日を迎えた。

◇◇◇

当日の参加者5名の属性は以下の通り。

【模擬授業担当:2名】
・私立短大(幼児教育)
・国立四大(キャリア教育)
【フィードバック担当:3名】
・国立四大(共通教育部キャリア教育)
・私立四大(教育学)
・私立四大(全学共通教育)

模擬授業担当者には、事前に以下を確認した。

【授業の届け方】
・リアルタイム(Zoomなどの同期型)
・オンデマンド(YouTubeなどの非同期型)
・ポッドキャスト型(音声のみ)
【学生の想定使用デバイス】
・PC
・スマホ
【配布資料】
・印刷して手元にある
・PCもしくはスマホから閲覧

当日は、上記のどの組み合わせを想定しての模擬授業なのかを確認し、フィードバック担当者に事前に伝え、それぞれの役割を分散して担ってもらった。

今回模擬授業をされたお二人は、下記を想定して準備、実施をした。

①教員:ポッドキャスト型(音声のみ)
 学生:デバイス→PC、スマホ
    配布資料→印刷、スマホで閲覧
②教員:ポッドキャスト型(音声のみ)、オンライン
 学生:デバイス→スマホのみ

以下、当日の感想を要約、抜粋。

【模擬授業担当】
・実際に授業をやらせてもらえて、具体的なコメントをもらえた
・授業設定を(誰が何役など)かなり細かく受け入れてくれて助かった
・次回どのようにしたら良いかの代替案も提示してもらえ、モチベーションが高まった
・コメントもスプレッドシートを用意していただけたので、記入する側としても、コメントをもらう側としても、文字媒体で残るのでよかった
・会を進めるファシリテーターと技術的なサポート役とお二人いたのがよかった
・信頼する人たちのクローズドな集まりだから安心して参加できた
・なかなか学内の人間とはできず(同じモチベーションの人がいない)、さまざまな事例を知ることもできて大満足

【フィードバック担当】
・実際のオンライン講義を見ることができた
・教員がこういった講義の相互見学に参加するという機会は少ないので、いい機会になった
・実際に大学で授業を持たれている先生方が、今回のオンライン化の要請を受けてどのようにご準備をされているのか、具体的なご意見を聞けた
・実際の授業計画も拝見することができて、大変勉強になった
・同業者ゆえに授業あるあるも難なく共有でき、話もスムーズに聞くことができた

大学によっては、オンラインの届け方、使用ツールが異なると思うが、今回はZoomを使用しての実施を試みた。

私がファシリテーションを担当した以外に、テレカンマスターのパートナーに共同ホストをお願いした。
今はツールの使い方も不明な点が多いので、わからない点が発生した場合には、その場でもう一度試し、修正しながら理解を進めていった。

ちなみに、こういうイベントでは、共同ホストは必須だなと感じている。
特に、参加者が10名を超えると、ホスト一人では万が一のトラブルや、チャット、出席者管理が行き届かない予感がする。
実際のオンライン授業では、TAに入ってもらえると助かる部分が大きいと思う。

◇◇◇

今回は情報交換会ではなく、模擬授業を行う機会とした。
これにも理由があって、情報交換だけならSNSやチャットのほうが記録として残るし、対面時代からすでにそういう場は存在していたからだ。

また、実際に授業を実施してみてわかること、受けてみてわかることがある。
体験こそが重要で、ノウハウ収集の場にはしたくなかった。
そのあたりが、オンラインで体験できるようになったことがまた新しい変化なのだと思っている。

これは私個人の感想だが、当初音声のみのポッドキャスト型は、オンラインでも内容が入ってくるのか不安があった。
しかし意外なことに、ポッドキャスト型が私にとっては有益だった。
スマホでテキストを見ながら、先生の行間説明を追いメモをとる。
これ、すごくよかったです。
(あくまで個人の感想です)

集中しないと聞き逃すから、結局集中する。
アクティブラーニングには不向きだが、ナレッジのみなら、画面に人物が映る意味は何だろうか、とまで再考してしまったくらいであった。
ポイントはいかにロジカルな説明になっているかにかかっている、と感じた。

要するに、対面でもロジカルな説明ができている必要があったということで、自戒を込めていくつかの自分の講義の内容を練り直すことにする。

一方でまだまだ課題もある。
見た目ではわからなくても、聴覚障害や視覚障害、その他の障害をもっていて、対面の授業でも、ひょっとしたら情報保障が得られていない学生がいたことにも着目する必要がある点だ。

オンラインで授業を届けるようになって、届け方によっては、情報保障がさらに得られなくなっている可能性がある。
逆に恩恵を得られている学生もいるかもしれない。

今こそ学生と対話をしてほしい。
「わからないから教えてほしい」というのも、教員の役割だからだ。
学生からも歩み寄ってほしい。
先生も世界のほとんどのことを知らないから、教えてくれたら助かるはずだ。

◇◇◇

最後に、「オンライン/オフラインに関わらず、教員同士が模擬授業をし合って学ぶ場があったほうがよいと思いますか?(学会や発表の場を除く)」のアンケートに、
「あったほうがよい」と回答した60%の方の意見を紹介する。

・並行で同内容で同タイムスケジュールで行っていたとしても、講師によるアプローチで印象も異なってくるため
・自分の授業改善につながる
・学生には多様化な社会になるから、さまざまな人と接すること!と伝えておいて、自分たちが閉鎖的なのはよくない。教員同士助け合っていくべきだと思う

「その他」40%への自由記述は以下の通り。

・教員間のコミュニケーションが比較的活発なのと、知識スキル獲得型の授業ではないので、模擬授業よりも情報共有が大切だと考えている
・FD関連のイベントはあるが、教員のモチベーションは総じて低いのではないだろうか

そのほかにも、
「授業のオンライン化で感じている、自身の困りごと、問題、課題」や、
「そもそもの対面式の授業で感じていた同内容」についても自由記述をしてもらっている。

恐らくこのあたりは、皆さんそれぞれに抱えており、更なる意見交換ができるといいのかな、と思っている。
大学により環境が異なるし、任せられている役割により差異はあると思うが、グッドプラクティスから、自分なりのベストプラクティスを見つけ出すことはとても大事だ。

また、会に学生に参加してもらい、直接意見を聴いてみたいという声もあった。

ひと月もすれば、学生のほうが多くの授業パターン(受ける側)の体験値があがるわけで、逆に学生のほうが先生になるのかもしれない。

学生も交えた相互学習の場も作りたくなってきた。
オンラインでもオフラインでも、アクティブラーニングでもナレッジでも。
教室はいつでも相互学習なのだから。

◇◇◇

また、練ります。

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