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日曜の朝にバッハを

ある日曜の朝9時過ぎ、
娘と電車に乗ってマルセイユに出かけた。


一番近くの駅までは車で10分ほど、
駐車場もある。
田舎暮らしですっかり車生活に
なってしまったが
考えてみれば
ここから電車に乗れば
あちこちに行けるのだった。


秋晴れ

電車の窓からベール湖が見えて
やがて海につながり、港町マルセイユに到着した。


マルセイユ駅

さてこの日のお目当ては
コンサート。


歴史あるマルセイユオペラ座は駅から徒歩10分ほど

マルセイユのオペラ座2階ロビーで
新しく開かれるフェスティバルに
ピアニストのクレール・マリー・ル・ゲ女史が
オールバッハのプログラムで出演することになっていた。


オペラ座長の彼女を絶賛する挨拶の後、
颯爽と登場、かっこいい!
(この挨拶によると、最近の研究でバッハの目が
クレールマリーさんのように青かったと
わかったとか、面白い!)


美しい天井画の下で聴く
素晴らしい演奏に、極上の幸せを感じた。

街中のオペラ座、ホールではないから
時々外の音も微かに聞こえる。
しかしそれもまた、日曜の朝の
のんびりした雑音。
閑静なバッハを誠実な魂で紡ぐ
クレールマリーさんの音と混じって
なんとも言えない
空間を作り出していた。
パルティータのメヌエットを聴きながら
ふと涙が込み上げる。

演奏会の後、
持参した本と
購入したCDにサインをいただいた。

「あなたの音楽道にお付き合いできて幸せです」

この素晴らしいメッセージにまた涙‥
実は娘、先月パリのご自宅でピアノを聞いていただき
クレールマリーさんのレッスンを
受けられることになったのだ。

それは夢のようなチャンスであるが
マルセイユ音楽院に通いながら
時々パリにも行くということでもある。
我が家の生活にも
かなりの変化を及ぼす。

しかしパリから帰ってきて
自らピアノに向かう時間が
明らかに増えた娘を見ていると、
流れに任せるしかないと思えてくる。


「この音楽を、あなたがたくさん演奏することを願って」

娘は、このコンサートの翌日から
バッハのフランス組曲を始めた。

憧れる力は偉大だ。











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