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【感想】ガラスの海を渡る舟

私がこの本を選んだ理由はいくつかある。ガラスの海という表現が素敵なこと、ガラスは繊細で自分と似てるのかなと思ったこと、自分も海が好きなこと、本のカバーの青の色合いが素敵なこと、ちょうど同じくらいにガラス工芸展を観に行って縁を感じたことがあげられる。

吹きガラス職人の兄妹の10年間の歩みが主な内容である。皆と同じようにできないが特別な「しるし」を持つ兄とどれも普通にこなしてしまう妹。お互い憧れを持ちながら理解しあい、ガラス工芸を通して歩み寄っていく物語。

「羽依子にとっての『特別』とか『ふつう』は、ただひとりの特別な人間と、同じようなその他大勢の人ってことなんかもしれん。けどぼくにとってはひとりひとりが違う状態が『ふつう』なんや。羽依子はこの世にひとりしかおらんのやから、どこにでもおるわけがない」P118
「前を向かなければいけないと言われても前を向けないというのなら、それはまだ前を向くときではないです。準備が整っていないのに前を向くのは間違っています。向きあうべきものに背を向ける行為です。」P88

兄妹がだんだんとお互いの良さを認めあってかりあっていく様子やガラスの骨壺という死に関わるものを通して人の生きづらさを表現していくところが響いた。

「わたしのつくったものが、誰かが明日を生きる理由になった。手の震えがとまらない。」

読み終わったあとガラスの海を一緒に渡る道と羽依子はこれからも依頼者や周りの人とかかわり合い、ガラスを通して美しいものを作るんだろうなと想像した。

人とわかり合うとは自分が気になることばかりに目を向けず、相手が発言したことの意味を考え理解し、認めることなんだと改めて感じた。また死に直面したときは準備が整った状態で前を向きたい。

#読書の秋2021   #ガラスの海を渡る舟


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