見出し画像

自治体の生成AI導入におけるメリット・効果と課題

自治体の生成AI導入については各方面で議論・導入検討、実証実験が行われています。

これはメリット・効果も多いですし、課題も同じくらいあります。

メリット・効果

業務における生成AIの導入は、人間にはおよそできない高度な処理能力と生成技術によって事務作業が短縮される可能性が多くあります。

大きなメリット・効果としては以下の様なものがあります

  • 大量の資料を要約できる

  • 大量の文章から誤字を訂正してくれる

  • 与えた命題に対して基本構文を生成してくれる

  • 事業計画のアイデアとなる要素をいくつも提示してくれる。

  • 文章が伝わりやすいかどうかを評価してくれる

課題

ここでは生成AIの「デメリット」ではなく、課題と呼びます。なぜなら生成AIによって引き起こされる結果は、これまでに経験のないことが多く発生する可能性が高く、それらを即ちデメリットと呼ぶのは適切でないと考えるからです。

地方自治体にとっての課題と考えた場合、大切な業務の発信を生成AIに依存すると、官庁自体の信頼性が問われます。

例えば次のような事です。

  • 精巧につくられた事業計画書が、AIの生成結果であることを見抜ける職員がどのくらいいるか。住民が発見した場合どうなるか。

  • 文書の信頼性において承認できる上長がいるか。監査機関やソフトに人材・予算を配置できるか。

  • 生成AIの提案をそのまま議題に諮ってしまうリスク。事業方針や総合計画のような自治体の根幹を左右する資料に生成AIが介在すると問題になる。

  • 個人利用と業務利用、個人・組織情報のAI入力を規制するのが実質不可能。官庁に導入したAIをつかわなくても、外部サイトにてGoogleやBingの検索で自動的に生成AIの回答が表示される。

  • (課題ではないが)生成AIは職員の負担軽減になるが、同時に人員削減にもなるかも知れない。

課題に取り組むために

公務を扱い公平性の求められる自治体業務に生成AIを取り入れることは、倫理的な問題をはじめ、施策を正確に表現する文章ができるか、生成した文章の結果を担保できるか、など大きなリスクがあります。これらは便利さと引き換えに過去になかった課題・問題として発生する可能性が高いと思います。

しかし、生成AIの活用は今後不可避です。ならば、規制でなく成長のためにどう使うかに焦点をあてて検討すべきものだと考えます。

自治体の適切な生成AI活用想定

自治体にとって生成AIを活用する場合は、対外業務ではなく、主に内部業務での準備・整理において大きく役立つと思います。

現時点で考えられる、有効に利用できる事例は以下です

  • 情報収集したWEBサイトや資料を読み込んで、要約する。

  • 会議の音声を文字おこしして、それを議事録として改善する

  • OCR(画像の文字認識)した文章を正しく改善する。

  • 要約にいくつかの条件をあたえる。たとえば「重要な点を箇条書きにする」「資料から考察する」「内容から次に考えるべき行動指針を導く」などです。これらは自身の書類を作成する前の大きな準備になります。

まとめ

ネットリテラシーという言葉が普及しているように、生成AIリテラシーも今後顕著になっていきます。

団体・企業・自治体で活用する場合、ガイドラインや生成AIポリシーを策定し、適切な運用マニュアル、職員教育を行う必要があると思いますが、それは不適切利用の抑止になるだけで、積極的な活用にはつながりにくいです。リテラシーの高い職員・社員の育成が望まれます。

生成AIの活用は、自動的に文章を素早く生成するだけではなく、自分の思っていたことを明確にしたり、うまく伝えられなかったことを表現する、といった思考の手助けになります。

大切なのは文書結果の最終決済権を、自分自身に常に与えることです。たとえ素晴らしい文章を生成AIが産み出したとしても、それが納得できなかったり、自分の言葉でないと思えば、即座にキャンセルして書き直すか、生成履歴をもとに自分で文章入力してみてください。その結果は、生成AIで文章をみていない真っ白な状態からつくるよりも、表現力が豊かで柔軟に、しかも早くできあがると思います。これは生成AIによる思考力向上の成果です。うまくつきあっていければ良いと思います。

イラスト生成:Canva


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?