029.18年前にタイムスリップ
5月。息子が大学の寮に入り、18年ぶりに夫と二人暮らしに戻った。家を出た息子はもちろん大きな変化を感じているだろうが、出て行かれたこちらにとってもかなり大きな変化だ。
子が生まれてからは、私と夫との間の最優先事項は子どもだった。お互いにそうしたかったし、それが当たり前だった。私たちは子育てするためのプロジェクトチームだった。プロジェクトから離れてゆっくりしたいときは、お互いに一人で過ごした。どちらかが一人で行動し、どちらかが子守りをした。子守りが必要のない年齢になってもそれは続いていたが、子が家を出たのを機に、いよいよプロジェクトチームは解体した。
さて、二人暮らしに戻って1週間。まず、家がだだっ広く感じる。家事の量が減り、子が生まれる前の生活の感覚にだんだんと戻っている。それなのに、ふと目の前をみると、やたら整った生活が繰り広げられていて驚く。もちろん実際は昨日までの延長なのだが、思いがけない場所にいきなりきたような気持ちになる。
子が生まれる前の私は「生活をする」のが不得意で、ルーティンが苦手だった。平日は終電まで仕事。週末は気が済むまで寝て、目が覚めたらコーヒーを飲んでぼーっとして、頭と体が起きてきたら1週間分の洗濯と掃除をしてあっという間に夕方になり、夜は飲みに出かけた。それが普通だった。
子育て期間の18年を経て、気づけば日々を心地よく過ごすルーティンが決まっており、体もそれに馴染んでいる。家事は日々きちんと行われ、週末はのんびり過ごしている。子がいたおかげで生活習慣が整い、なんだか人並みにきちんとした暮らしができるようになったのだった。
そんなわけで、私は「生活すること」の上級者になった。元々「生活する」のが得意な夫との二人暮らしは、あまりに静かで落ち着いている。老後ですか?っていう感じだ。でも、若い時には死ぬほど退屈に感じただろうこの生活、今は悪くないなと感じている。飽きたらまた一人でどこかに出かけて、しばらくしたらまたこの日々に戻るんだろう。そういう感じでこの後は暮らすのだと思う。子育て中にパートナーシップについても取り組んだので、もう特段、夫に文句や不満がない。このままお互いに健康で、好きなことをそれぞれやって、お互いに応援し合えたらいいなと思う。
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