56.繰り返すOD

彼の実家でも二人暮らしのアパートでも、
私は数日おきというスパンでパニックと怒りのストッパーが外れ、真夜中でも構わず大暴れしていました。

週末は必ず彼と喧嘩をして行く充てもなく家出を何度もしてみるのです。

とうとう自分も彼も耐え切れなくなり、私は精神病院へ入院できるか電話で問い合わせますが予約待ちの期間があると断られ、

ついに全世界に見放されたと絶望しODを繰り返します。

頓服にと病院からもらっていた薬を大量に巾着ポーチの中に残しておいて、それを何十錠と一気に飲んでは救急車のお世話になり、

頭が朦朧としながら知らせを聞いて駆けつけた母に今までの鬱憤を晴らすかのように『よくのこのこと来れたな!!』と罵声を浴びせました。

他にもいろいろと暴言を吐いたようですが、薬のせいで記憶が飛んでしまっています。

私は祖父の家に一時保護され、3度目のODの時についに彼は私を捨てました。

彼は私と結婚していないので私に対して何の責任も無いわけですし、こんな頭のおかしな人間は捨てられて当然なのですが、

私と別れたその晩彼はひとり部屋で眠れなくて、
『俺は自分からERIEを助けると言ったのに、その責任から逃げたのではないか』とノートに書き残し、
次の日私の自己中にも程がある着信を受けて私を迎えに来ました。

こんな獣みたいな人間を迎えに来るなんて変な人だ、と頭の片隅で思っていましたが、
私は既に彼に『依存』していたのですんなり彼のところに逃げ帰ります。

祖父から聞いた母は次の日部屋に突撃してきましたが、
彼と復縁できてハイになっていた私は母を理不尽に追い返してしまいました。

ODを経て彼の元へ戻る条件として祖父に『二度と薬は服用しません。』と母印つきの誓約書を書かされ私は医師にも相談せず勝手に薬を止めてしまいましたが、
『再燃』という症状が始まります。

数日後の朝車に乗るとカーステレオの音楽がとてもスローに聞こえる、
時間が2倍に感じる、時計の秒針が体感2秒で1針刻むような感覚に襲われ、
声が出そうとすると喉が押しつぶされてしまう感覚になってしまいました。

家にこもっているから頭がおかしくなるんだ、仕事をしてリハビリをしていこうと思い立ちハローワークに行くと、
壁に『薬物ダメ、絶対。』というポスターを見つけ、

自分のこの今の症状は禁断症状だ、私は薬物依存症なのだ、このまま警察に出頭しなければという衝動に駆られました。

頭がおかしくなった自分から抜け出したかった、
でもその方法がもうわからないのです。

その夜こころの相談に2時間もぼろぼろ泣きながら電話をしている私を見た彼に『お願いだからちゃんと薬を飲んでほしい。』と頭を下げられます。

彼に捨てられるのはもう怖かったので、私は捨てられたくない一心でまた薬を再開すると再燃症状がなくなり、
少ししてからハローワークの紹介で障碍者作業所の厨房での短時間の仕事をするようになりました。

所長さんたちは私の状況を知った上で採用してくださり、外に出始めるといろんな人に接するようになるので環境が閉鎖的でなくなり、
私の心は少しずつ落ち着きを取り戻していきました。

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