見出し画像

性的マイノリティーへの偏見や差別のない世界のために ―東京レインボープライド2023にエリックゼミ生と参加して想う事―


4月23日の13時、僕は青学エリックゼミの学生と一緒にパレードの列にいた。僕の左側にはトランスジェンダーの女性が俯きながら歩いていたので、声をかけた。『すごい規模のパレードになりましたね!』。彼女は嬉しそうに頷いた。性的マイノリティーへの偏見や差別のない社会を目指すイベント”東京レインボープライド2023”が今年も開催された。今年のイベントには約20万人が参加し、このパレードは約1万人で行われた。パレードはイベントが開催されている代々木公園から出発し渋谷を通って代々木公園に戻ってくるコースで、沿道には沢山の応援者で溢れていた。

大きな声援を送る沿道の応援者に隠れて自信なさげに小声で応援する多分当事者の人達もパレードを応援してくれていた。その姿を見るにつけ、この理不尽な性的マイノリティーへの偏見や差別を変えなければならないと強い想いに駆られた。沿道からは『ハッピー・プライド!ハッピー・プライド!』と声をかけられ僕らも『ハッピー・プライド!』と返した。ここで使われるプライドは単純に誇りのみの意味ではなくセクシュアル・マイノリティのパレードそのものを指し、広く国際的に認知されている合言葉。つまり『ハッピー・プライド!』はセクシュアル・マイノリティのパレードであるレインボーパレードをそのものを祝福している。欧米諸国をはじめ世界の主要な都市では、このプライドパレードと称されるセクシュアル・マイノリティのパレードイベントが恒例行事として、毎年開催されている。サンパウロのプライドパレードは、2006年にはギネスブックによって世界最大のプライドパレードとして認定されており参加人数は300万人にも上る。

そもそも、このレインボープライドはどのようにして生まれたのだろうか?
きっかけは、ストーンウォール事件と呼ばれる1969年6月28日ニューヨークのグリニッジ・ヴィレッジ地区にあるストーンウォール・イン(Stonewall Inn)というゲイバーに性的差別による理不尽な警察の手入れが入った際、その場に居合わせたゲイたちがそれに抵抗し、暴動を起こした事が発端になっている。当時のニューヨークでは、差別的に警察によるゲイバーへの踏み込み捜査が定期的に行われ、我慢できなくなった感情が暴徒化し、負傷者や逮捕者を出す暴動に発展した。事件の翌年1970年6月、ストーンウォール事件の1周年を記念するデモ行進が、ニューヨークをはじめアメリカ各地で行われ、それがその後、毎年恒例となり、現在まで続くプライドパレードにつながってきたのだ。

レインボープライドに参加するとレインボーの模様をあちらこちらに見る。なぜレインボーなのかを考えるにストーンウォール事件への流れで忘れてはいけない人物がいる。映画“オズの魔法使い”(1939年)のドロシー役でスターになった女優ジュディ・ガーランドだ。彼女は自身がバイセクシュアルでもあることをカミングアウトし映画スターとして堂々と生きたその生き様がゲイ・アイコンの代表的存在として尊敬を集めた。そのジュディが亡くなったのがストーンウォール事件直前の6月22日だった。6月27日にはストーンウォール・イン近くの教会で葬儀が行われ翌日にNY警察の手入れがストーンウォール・インに入ったのだ。彼女の死の悲しみと直後の性的差別による警察の手入れがストーンウォール事件のきっかけの一つだったことは間違いないだろう。もちろん、プライドパレードでは欠かせないシンボルソングである虹の彼方に(Over the Rainbow)はジュディの代表曲であり、レインボーのマークが多用されるのもジュディの影響が色濃く出ているのだ。

今年は企業の参加が去年と比べてかなり多くなったと感じた。僕のいたコンサル業界もビッグ4と呼ばれるDeloitte、PwC、KPMG、EYに加えアクセンチュア、ボストンコンサルティング、キャップジェミニ、そしてアバナードがブースに名を連ねた。これは本当に素晴らしいことで業界を代表する企業が性的マイノリティーの差別に対してアクションを起こしているということだ。女性活躍もままならない日本では、女性の問題も解決しないのに性的マイノリティーについて取り組むのはまだまだだと言う経営者も多い。しかし、偏見、差別と言う意味では性的マイノリティーも女性蔑視も本質的には違わないはずだ。このレインボープライドもLGBTQ+のようなジェンダーが発端ではあるが、最終的な平等な社会を実現すると言う意味で想いは同じ。日本企業の経営者には、このイベントに参加して平等な社会の実現について考えて欲しい。

普段、歩くことのない都心の道路をパレードで行進していく。性的マイノリティーへの偏見や差別のない世界のために僕らは何ができるのだろうかと考える。しかし、男女という性に偏見を持たない仲間が集まり、一緒にパレードやイベントを通して『ハッピー・プライド!』と叫び平等を訴え、お互いに讃えあう。まずは、ここから何かが始めるのではないか。ここに集うことこそに意味があるのではないかと感じた。一緒に歩き出した自信なさげなトランスジェンダーの女性はゴールに到着する頃には自信に満ちた大きな声で叫んでいた『ハッピー・プライド!』。

Peace out,

エリック


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?