シノヘ歴⑥(NSC 9月~10月)
前回は万利休の結成~初舞台まで。今回はその続き。
6-①.DOOKI
8月の現役生ライブRUSHが終わり、同期が少しは僕を知ってくれた。
ただの嫌な奴ではなく、”たまたま客にハマった嫌な奴”に進化した。
ちょうどそんな時期、9月上旬。
NSC時代に現役生ライブで上位に食い込むと出してもらえる、YoutubeのWeb配信番組があった。DOOKI。
MCはNSC授業で特別アシスタントを務めているヒューマン中村さんと、タナからイケダさん。
僕はMBSお笑いアワードの高校生審査員としてタナイケさんを目の前で見たことがあったし、ハイスクール漫才のMCでヒューマンさんと一言二言お話させていただいたことがあったため、凄く嬉しかった!!
つい半年前までサラリーマンだった自分が、7年前に憧れて止まなかったプロの芸人さんと収録をさせていただく。感涙だ。言い過ぎた、泣いてはない。
緊張して、たくさん考えて挑んだ収録。
悲惨なものだった。僕はこの配信のことをネットタトゥーと呼んでいる。
タトゥーといってもオシャレでかっこいいものじゃない。
浜崎あゆみの肩、B’zの稲葉さんの胸元にチラ見えするようなのじゃない。
極道の半袖Tシャツみたいなものでもない。(アレもアレでひどいけど)
この配信がネットと僕の心に刻んだタトゥーは、「普段は尊敬できる厳格な50代男性が、妻にエロマンガの収集癖がバレて、必死で『いや、これはほら勉強用っていうかさ。』みたいな言い訳してる時の男の顔」のタトゥーだった。
もう情けなくて見てられない、頑張れば頑張るほど惨めだった。
見たけりゃその目で刮目せよ。これがお笑いじゃい。
ちなみに万利休は、これ以降すべての配信番組でスベり続けた。
6-②.M-1 1回戦
7月末に結成した僕たち。
0年目のM-1はエントリー時期の関係で1発勝負だった。
M-1予選の雰囲気は、8月に1度見に行っていた。
体感、2分間で1度でもウケれば受かる。スベれば落ちる。
丸1日観覧して、合格者32組中27組を的中させた驚異の目を持った僕が言うから間違いない。この目をぜひ競馬に活かしたいが。
M-1の予選日は発表されたら自分で確認しなくてはならない。
おおよそだが、予選日の7~10日前に発表される。
エントリー希望を出した3日ほどの日程は覚えていたので、更新されるたびに全て確認する。
ない!!!
何回見ても、自分たちが希望した日程にはコンビ名がなかった。
そういえばエントリー希望者が多い場合は、先着順でエントリーに漏れる可能性があると聞いたことがあった。
あぁ漏れちゃったんだぁ。。
漏れると聞くと、小学1年生の頃に、下校中に歩きながら我慢しきれずに脱糞した経験を思い出す。
家に帰って情けなくて、泣きながら母に相談し、世界一若い男泣きをしながらシャワーを浴びた記憶が新しい。
学校のトイレがキレイだったら。。
小学校特有の大便悪の考えさえなければ。。
なんて思いながらコンビ名検索をかけると、希望していない日程にエントリーさせられていた。こんなこともあんだね!
その日に向けてしこたまネタ合わせをした。
僕が24時までバイトの日も、バイト終わりなんばに直行して2時3時までネタ合わせを当然のようにしていた。
今思うと狂気。ただ毎日楽しくて仕方なかった、部活みたいな感覚。
努力なんてしなくて上手くいくのが一番カッコいいし、効率いいのも知ってるけど、世の中にはやらなきゃできない人っているんだよ。
俺も待ってても人が集まるようなカリスマで天才に生まれたかったね。
そんなこんなで来たる9/17、僕らはだいぶ後半ブロック。
昼前からネタ合わせをして、心斎橋 DAIMARUの14階にある、SPACE14まで向かう。難波から心斎橋なんて徒歩の時間も分からなかったので、電車に乗っていった覚えがある。
DAIMARUについて、エスカレーターで14階まで上がる。
作家の里村講師の授業で、エレベーターが激混みして間に合わなくなる可能性があると伺っていたからだ。
結論から言いますと、全くそんなことは無かったようだ(休日は混むみたい)
緊張しすぎて、集合時間の20分以上前に来てしまった。
コロナの関係で控えスペースには時間通りでないと入れないため、あたりを見渡していると、なんだか見覚えがある景色。
M-1予選を見に来た時には気づかなかったが、大学3年の夏にここでやっていたお化け屋敷に来たことがあった。お化け屋敷というかゾンビ屋敷。
懐かしいなぁとか、ここのトイレ住めるくらいキレイやなぁとか思っていると時間になったので会場入り。
受付でエントリーフィーを払って、検温をして控えスペースに向かう。
M-1の1回戦の予選は組数が多すぎて、ある程度のキャリアがある芸人以外は廊下でお着換えタイムに入る。ちょびっとがっかり。
着替えて小声でネタ合わせ。
次のブロックの武者武者さんや、ラフ次元さんが奥の控室に向かっていく。
もうお笑い大好き小僧だったので、これまたテンション上げ。
いつか梅村さんに、ドラマティックナインずっと見てましたって言いたい。
(奈良テレビの高校野球のハイライト放送の番組)
そんなこんなで出番。
前回の記事で、初舞台前の舞台袖で体調が悪くなるくらい緊張した話を書いたが、2回目も全く同じだった。ましてや飛び出す瞬間まで一言目のキッカケ台詞すらも思い出せないほどだった。
今回ももちろんグッとハグをしてから飛び出す。
当時は当たり前だったのに、あとになって考えると気持ち悪いことってあるよね。
中学の時、好きな女の子にハートの目をした顔の絵文字を送った直後とかもそうだね。布団にくるまりたくなる。
でよ、いつもより少し元気よく「はいどーも」を響かせた後、ネタに入る。
2分ネタだからフリは短い。
そこに涼太郎のシミュレーションというセリフがあったのだが、彼はこれをいきなり嚙んだ。落ちたと思った。
そこからは特に問題もなくネタをやり切ったが、僕はもう機嫌が悪かった。大事なおもちゃを親戚のおじさんがパンツの中に入れて、衛生的に触れなくされた時のような顔をしていたはずだ。
帰り道で「もう今年はダメ、来年」なんて言いながら、涼太郎に当たりに当たって煙草を吸って解散して帰った。
涼太郎は怒らなかった。すごいよねホント、俺やったら喧嘩してる。
家についてまだ夕方だったが、べッドにぶっ倒れて寝た。
M-1の1回戦は、当日の予選全組終了 1時間後くらいにインスタライブで結果発表が行われる。
本当はこれも見ないつもりだったが、たまたまちょうど目が覚めてしまったので、まぁまぁまぁ。くらいの気持ちで見ていた。
しましまんずさんがユーモアを交えて合格者を読み上げはじめる。
エントリーNo.3206番 ダリ
1組目でダリだ。ダリ!!
同期のコンビ、
まだ当時仲良くなかったが、ごしょかけ温泉のコンビ。
ネタ見せの授業では、涼太郎と面白かったなぁと何度も言っていた。
この日はバイトの面接ネタだったようで、個人的にはすごく好き。
すごいなぁなんて思いながらどんどん読み上げられていくのを聞いていた。
エントリーNo.3705番 万利休
えぇぇぇぇー、嚙んだのに!
全然ウケてなかったのに!!なんでなん?
アマチュアへのお情け合格をいただいて、不機嫌むき出しだったのなんて無かったかのように涼太郎に連絡を取った。
涼太郎は「俺は受かってるような気がしてた」と言っていた。
なんだこいつおい。嬉しかったけどちょびっと腹が立った。
ご機嫌にコンビニに行ってチューハイを飲んで寝た。
6-③.9月 RUSH
ノリにノっていた。この波をキープしたかった。
8月 RUSH →M-1予選となんか調子が良かった。
そんな気持ちで9月を過ごしていたが、正直第1次スランプだった。
(このあと第61次まで続く)
まったく面白いネタが思い浮かばないのだ。
早すぎる、早すぎる枯渇。
まだ4本くらいしかネタ書いてないのに!!
というのも、面白いというのが分からなくなってしまい、この頃の僕らは
気持ち悪い=面白い
というフェルマーもビックリの、間違えた最終定理にたどり着いていた。
そんな中で挑んだ現役生ライブ。
先月の結果を考慮していただき、ライブ全体のトリ出番をいただいていた。
この日は以後2度とやることがなかった、電車で赤ちゃんをあやすネタ。
順当ならクスクスくらい聞こえてもいいはずのネタ。
ただその日は全く違った。
1日を通してどの組も全く受けない!
MCも祇園さんですごく盛り上げてくださったのに!
唯一お客さんから声が聞こえたのは、ねぐせ若葉のおもろキモネタの時に一斉に上がった悲鳴だけだった。
なんでなんだろうなと袖でモニターを見ながら出番を待ち、とうとう最後。
いつもより元気にいくぞと決めて、大きな声で出ていく。
落ち着いて客席を見る。
誇張なしで、僕の地元くらい高齢者の比率が高かった。
日本には高齢化の波が来ているとは聞いていたものの。。。
そんななかで渾身のキモネタ。
ウケるはずもなかろう!
高齢者の前では、ハイテンポで電車内で奇行を繰り返すコントが行われている。
この会場まるまる全体を使った現代アートじゃないのか?
大衆の”喜”を生むお笑いが、“無”へと変わっていく、そんな瞬間をもう1段上の見物席から大富豪が見ているんじゃないか?
スベればスベるほど、僕の心臓のBPMと共にネタのテンポも上がっていた。
あとで録画を見たのだが、ほんとに早すぎて1.3倍速再生の早さだった。
2分ネタなのに持ち時間を5秒以上巻いていたようだ。
大トリの大スベリ後、今回からライブEDで上位3組の発表だった。
劇場の待機場所で待つも、名前は呼ばれずNSCに帰って着替えるように指示
落胆して素早く着替えて、トボトボとNSCを出る。
この日人生で初めて、負け焼肉を覚えた。
涼太郎と反省会をしながら、牛角で食べ放題。
負けてもお肉はおいしかった。
当日夜に発表された結果を見ると、1点差で4位。
なんかイラっとして9時くらいに寝た気がする。
6‐④.ゲキトウ
吉本アカデミーでは、10月上旬に年1度 文化祭が行われる。
2021年入学の44期では、2日通しで実施された。
1日目がNSC主催のお笑い、2日目がYPA主催のダンスや演劇。
1日目のNSC主催イベントは以下の2部制だった。
・1部:ゲキトウ
・2部:一笑懸命
万利休が出たのは1部のゲキトウ。
当時、調子が良かったコンビが集められての殴り合い。
ちなみに2部はコーナーメインのライブだったのだが、
ここでは各クラスから選ばれた3組だけがネタをしていた。
AB:軍艦、CD:竹虎、EF:裸虫。
作家さんだったか、ヒューマンさん&タナイケさんが自分が担当しているクラスから選んだだったかの3組。羨ましかった。そして爆おもろ。
会場はYESシアター。
NGKの地下にある階段状の客席が特徴の劇場。
朝早くに集合し、リハ。
やはり楽しいイベントでお祭りムード。
みんな元気に控室や廊下で大騒ぎ!!
こんなときには絶対に吠える男が44期にいた。
シノヘ
シノヘは幼少期から癇癪持ちで、感情のコントロールが異常に下手。
楽しいときに思いっきり笑うのはいいのだが、怒りたいと思ったら怒っちゃうし、バトルライブというワードで自分がピリピリしてるのに皆がヘラヘラしてるのを見てるとイライラしちゃう。
当時の僕は25歳、うそん。私立小学生のほうが賢い。
僕なんて空間ベクトルが理解できるだけのボノボである。
この日はたしか出順が10番前後だったのだが、ライブ前、ライブ中、ライブ後で計5回は怒号をあげていた。ほんと人間初心者。
しかも情けないのが、この日は順位が9位か10位とかで何でもない順位だった。
ドベだったら面白いし、1位や2位だったらまだカッコよかった。
この日で「たまにお客さんにハマってウケる怒りんぼうの嫌われ者」に進化した。字面で見たら終わっているが、あの裏での僕を見たらもっと終わっているなと感じると思う。
そういえばこの時期、ホルスタインとインダスガンダスが騒音麻雀事件で干されてたの思い出した。クソおもろいww。
6-⑤.M-1 2回戦
ゲキトウで更に嫌われて1週間。
もっとゲキトウが控えていた、標記の件。
毎年出場者が増加するM-1だが、この年の1回戦は5500組くらい。
だいたい2割くらいが2回戦へ進む。
アマチュアに限ると、約3000組から200組程度みたい。
変な大会だ。
まぁ言いたいことは、とにかく緊張した。
というのも、NSCで1年を通して磨くのは2分ネタと1分ネタ。
3分ネタを卸すのは初めてだった。
もちろんそんなネタはないので、あまりしないほうがいいと言われる2分ネタの骨延長手術。かかとに無理やり骨を継ぎ足してデカ人間を作る感じ。
そりゃあもうネタとしての完成度は落ちに落ちた。
秋の御堂筋の銀杏くらい落ちていた。もちろん臭い。
3回戦に行きたい気持ちは溢れていたので大丈夫だろうと思っていたが、いざ2回戦の会場である森ノ宮漫才劇場につくと打ち砕かれた。
(みんなめっちゃ3回戦に行きたい気持ちあるやん。。)
当たり前である。それで飯食おうとしてる人ばっかりだから。
楽屋に入ると出番が近かったり、もう少し後ろだったりの諸先輩方がいらっしゃった。
うるさくしている先輩を見ても、先週の自分が嘘かのように縮こまるシノヘ
無力だ。
そんなこんなで出番が近づく。
僕らの数組前に、伏字にしないといけないコンビ ち〇ぽっこがいた。
ぺつに男性器のニックネームがついてるわけではないが諸事情にて。
とにかくコイツらがバカスカにウケてた。
近い出番に劇場所属の先輩がいたが、正直ウケ量は勝ってるんじゃないかってくらい。
それを見てちょっと安心して袖に上がる。
よし行くか!くらいの気持ちで出て行ったら、ビックリするくらい横長の劇場だった。まずびっくりした。
そこから普通にネタをしたのだが、まぁ右肩下がりのウケ量。
ベタベタのネタでボケをこするタイプだったので、もう終わりごろには皆がyoutubeを見てたと思う。思うだけ。
淡い期待は淡いまま、来年リベンジしようと気合を入れておうちに帰った。
6-⑥.10月 RUSH
書いている僕が一番気付いている。
ちょっとまとめすぎて長いな、このNoteだけ。
簡潔に書こう。
10月に入って数日で勝ち筋が見えたネタが書けていた。
1ケ月間ブラッシュアップを続けて挑む。
負け!!! 気に入ったネタやったのに!!
4位!!また4位でしたわ!!悔しかったから覚えてまんねん!
ちなみに次の月からは順位を覚えてまへんわ!!
まぁ言うとくと、この月も楽屋で大ギレかまして、アシスタントの1期上で一番穏やかな先輩にも嫌われだしましたわ!
いや、もしかしたらもう嫌われとったんかもしれまへんなぁ!!
ガーハッハッハハ、ガーハッハッハッハ!!(樽のジョッキでビール飲む)
この月から選抜授業が始まっていたが、万利休は1授業だけだった。
あいはら先生を唯一の師と呼び始める生活(翌月には終わる)
以上、次は11月から!!!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?