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スタッフと揉み合いの大喧嘩をした話

初めて美容家デビューした頃
目に入る大人が全員怖かった。

毎日の様に怒鳴られていた事もあって
自分が何のミスをして怒られたのか把握できないほど無知だったので

かかってきた電話に
『すみません!』
…と出てしまうのは日常茶飯事。


他にも、テレビ局に入ったら出るまでに10回直角に頭を下げると心に決めていたし

生放送が終わったら、何をした自覚がなくても『ご迷惑をおかけしてすみませんでした!』
と必ず言っていたほど。


でも、そんな私も、キャリア7年目にして、最近では誰からも怒られることがなくなってきた。
あんなに毎日誰かしらに謝ってたのに、気が付けばもう何年も人から怒られてない。



むしろ思った様に売上が立たなくても

『今日も笹倉さんのトーク完璧でした!』

とか言ってもらえて、たまにちょっと怖い。
(本当は何を考えているんだ、この大人達め)





そんな中、今、私をバカスカに怒る人が1人だけいる。



それはYouTubeで、うるさい合いの手でおなじみのディレクター代田くん。

『撮影も編集も出来ます!ロゴも作れます!
僕にやらせてください!』


と言った割には、全てにおいて全くの素人で、当初は私に怒られっぱなしの普通の大学生だった代田くんも今や立派な社会人。

学生時代に私のチャンネルの立ち上げに関わりながら、有名チャンネルでも多数経験を積んで、今や600万再生をバカスカに出す優秀な男の子。若干23歳。
(どうだすごいだろ)



最初こそ、私の完全プロデュースでYouTubeチャンネルを始めたものの、今や彼も実力をつけ

『今の違う。もっとハッキリ言って。もう一回』

と話の途中でもカメラを止めて、ぶった斬ってくる。(ぎゃふん)



正直コレが、めちゃくちゃありがたくて、いつも頼りにしているんだけど

でも、意見が割れた時にも絶対に曲げてくれないので、大喧嘩に発展した事も実は一度や二度ではない笑



一応こんな私でも、最初は彼を尊重して、丁寧に論理立てて必要性を説明をするのだけど

一度『こうだ!』と思うと聞く耳を持たないのが代田という男なので、論理で勝てないと分かると感情的になって騒ぎ出す(やめろや)

『あなたは大切なスタッフだし、あなたがいないのは私も本当に困る。
でも、このチャンネルは私個人が経費を出して作った私のチャンネルなの。そして、そのチャンネルの収益からあなたに今お給料を支払っているの。
私と意見が割れた時は私に譲って。嫌なら辞めて!』

と、何度言ったか分からない。



でも、これで話が通じる事は絶対になくて、むしろ火にガソリン。

『俺を外すのか!』
『ここまでやってきたのに!!』


など、元々してた話はどこかに行ってしまい、あーでもないこーでもないと大騒ぎになり、最後は必ず大泣きする。(おい日本男子)


泣くフェーズに入ると大体そこからは解決へ向かうのだけど、そこまでが果てしなく長い。



今年37歳の私が、23歳と同等にやり合うのは、まさに老体に鞭打ち状態。(コ○ス気か)


マジで生放送の特番より体力を使う。笑





そんな激情型を代表する若手クリエイター代田が、最近またブチギレた。


『もっと本気になれよ!!!』

『そんなところで埋もれてて悔しくないのかよ!!!』



いきなり過ぎてサッパリ訳が分からない。



『え、ごめん何のこと?
悔しいとか思ったことないんだけど…』



咄嗟に言葉が出たけど本音だった。

コレだから感性で生きる人種は…
基本的に文脈が分からねぇ。



『それだからダメなんだよ!!!』


と、代田。今日もかっ飛ばしてる。



『テレビ通販なんかで埋もれてて悔しくないのかよ!』




『SNSの事をバカにするな!!
SNSのクリエイターは影響力を貸せるんだから仕組みはテレビ局と一緒。
いい加減、演者意識捨ててプライド持ってくださいよ!
こうしてる間にSNSから若手が出てくるの心配にならないのかよ!若さに負けて悔しくないのか!!』

『世界グランプリって言ったって、別に大して知名度もない大会だし』





……今、なんつった?





……テレビ通販なんて?

……大した大会じゃねえ?





実はこの時、彼が何を言いたいのかはイマイチ理解できていなかったものの
この言葉にカチンときた私は、つい


『あのさ、テレビ通販なんかって言うなら、どんな方法でも良い、どんな商品でも良い。

せめて私と同じ1日2億円売ってから言え。

そもそも、このチャンネルは、テレビ通販で得たスキルがあったから視聴者に受け入れられて価値がついたの。

頑張ってくれているのは分かるけど、あなただって恩恵受けてるんでしょ?
その言い方はないんじゃないの?

そこまで言うなら、テレビ通販のスキルに一切頼らずに、あなたのディレクション能力だけでやってみたらどうなの?』




『あと、コンテストだって、大した大会じゃないと言うなら、どんな小さな事でもいいから

一度くらいは世界一になってから言って。

大体そういうこと言う奴に限って、どんな狭い世界でも人生で一度も一番になった事ない奴ばっか。
まだ若いのに、そんなこと言ってると、あなたもそういう小物と一緒になるわよ!』



『大体、今まで私がいつSNSをバカにした? 私が過去に一度でも世界大会のグランプリだからって理由で偉そうにした?

私の中でグランプリは資格と一緒。
取る事が目的じゃない。
どう活かしたのかが大切。


私はテレビ通販の為にコンテストに出て、世界大会でグランプリを頂いて、それを活かしてスピーチ講師をしながらトークスキルを磨いて、今テレビで1日2億円売ってる。
担当商品は累計10万個以上の売上。

そして、そのスキルを活かして、あなたと組んでYouTubeチャンネルを立ち上げて、私が企画編集プロデュースした動画が270万再生を叩き出して、短期間で6万人登録者を獲得した。
タイアップ実績はメーカー比で世界トップクラスの売上。メーカーのリピート率は100%!

なんか文句ある!?』




…と、500倍にして返してしまった。
(大人気ないね)



この勢いで生放送で話せたら、控えめに言って多分あと5億は売れるだろうな笑



『違う!そうじゃない!!!』

と、代田。

『そんな偉そうな事言って、この間昼まで寝てたじゃないか!』

『遅刻すんな!』

『俺の編集をバカにしてんのか!!
俺の編集があったから良かったのに!
こんなにやってるのに!!』


と、始まったので…



『代田くんの編集は本当に丁寧だし、すごく助かってるよ。立ち上げからやってくれて本当にありがたいと思ってる。

でも、ディレクターなのに肝心の頭脳の部分である企画プロデュースは全て私に頼って当たり前。

もう2年やってるのに美容には一向に詳しくならない。
埋もれると騒ぐ割にSNSにおける美容のトレンドもチャンネルの競合も把握してない。

私のやり方が気に入らないなら
文句言うだけじゃなくて、もっと勉強して
提案するべきじゃないの?

それがディレクターの仕事でしょ!!』







…そこから、目も当てられない大喧嘩となり、辞める辞めない、外してやる外されてやるの大騒動に発展した。(あぁ…)

代田からは、ここに書けないほどの罵詈雑言を浴びせられ、私は私で、14個年下相手にマトモに正面からド正論ぶちかまして応戦。
(大人気ないね×2)





『お前もっと本気になれっつってんだよ!!』

『だから、何がなのよ!
あなたは基本的に主語がないのよ!』


『だから、いい加減にしろよ!』



と、肩を掴み掛かられそうになったところで
お互いハッとした。




…気が付けば2時間経過。


2人とも体力を使い果たし、肩でゼーハー息をして、少し距離を取った場所で、お互いに目を見合わせていた。




…まるで、野生のクマの縄張り争い。

(どんな絵面w)






しばらく時間が経って最初に声を発したのは代田くん。


『あの…すみません。俺が悪かったです。』

気まずそうに謝る代田。
今日は泣いてない。


『ささえりさんが凄いのは、分かってます。
魅力もあるし、もっと売れて良いと思う』

『だから、悔しいんです。
価値があるのがわかってるから、もっと評価されて良いのに、変な仕事依頼が来てバカにされた気持ちにもなるし…』

『ささえりさんには、売れるためにSNS本気になって欲しいんです。
テレビ通販も凄い仕事なのは今は分かってますけど、そこで満足しないで活かして欲しいんです。』






………あ、そういうこと。




ここにきて、ようやく少し意味がわかってきた。




『なら初めからそう言えばいいでしょ』

息も絶え絶えに、その場に倒れ込む私。

全人類に20代前半の体力があると思うなよ、この若造が…




『あの言い方じゃ誰も分からないじゃない』


なんだったんだこの2時間。。

相当な罵詈雑言を浴びせられたけど…




『それは、すみません。僕の言い方が悪くて。自分が仕事できないの棚に上げたのもすみませんでした。』

と、代田。




『悪すぎ!2時間も何やってたのよ…』

と、うなだれて考えた。



確かに、元々テレビ通販が好きで、テレビを続けたいから影響力を付けたくてYouTubeを始めた私は、元々SNSが好きで仕事にしている代田くんとは少し熱量が違って、それなりに頑張ってはいたものの、テレビ通販ほどには身が入っていないのも事実だった。

また、性格的にも、常に周りを気にするタイプの代田とは対照的に、意外にも超が付くほどのマイペースで、相当意識しないと周りと競争する意識が持てない所がある私。



それを現場で感じた代田がフラストレーションを溜めていたのか。



『ごめん、私も悪かったよ。
私は人として完璧とは程遠い人間から、嫌に思う事もいっぱいあるかもしれないけど、必ず結果だけは出すから。そこは信用して。』

『綺麗事は言う気ないけど、精一杯今正しいことをやっていれば、必ず後から結果はついてくるから。
私、本気出すし、あんまり気にしないで安心してついてきて。』







やべえ売れなきゃ、、


…と、思ったのが本音だった。





結果は後から付いてくるとか言っちゃったけど
そもそも売れるって抽象度高すぎだろ。

具体的に何したら良いんだ…。





代田くんと別れた帰り道に久しぶりに自分の人生や今後の仕事についてよく考えた。



頭では、このままではダメだと分っていたから始めたYouTubeだったけど

私は何年もずっと
『テレビ通販で一億円売れるゲストになる』
事を目標に頑張ってきたので、それを達成してからは、どこか少しは満足してしまっていたと思う。

だって元から考えたら、いくらトップセールスだったとは言え、どこにでもいる普通のエステティシャンだったし、もっと言うと貴花田とか呼ばれるくらい太ってて、アトピー面の子供だった訳で、それがテレビに美容家として出演して全国に夢売ってるって…もうだいぶ上出来じゃない!?とか内心思ってた。

自分の持ってる才能は、もう努力で超えたでしょ…って。



あと、さらに言うと、シンプルに自信がない。

多少の美容知識や、テレビ通販で美容商品を売る事には自信があるけど、正直、自分自身に自信なんて未だに全く持てなくて、私自身が美容家として売れるなんて、どこか実現不可能すぎる夢にしか思えてならず

『おし!やるか!』

とは、本気では思えなかった。
(チキンと呼んで)



『見ておいてください!
いつか私は絶対売れますから!』


と、口では何度も言った事あるけど、それは飲み屋で『こんな会社辞めて、いつか海外に移住したいんだ俺は!』と朝まで言い散らかして、おとなしく定年まで働くサラリーマンと一緒のパターン。

正直、全然現実味がなかった。




てか、なんなら私のその飲み屋のサラリーマンノリの会話を、まだ大学生だった代田が間に受けて信じ続けていたのかもしれない。
(おぞましき謎解きミステリー)



…まぁ、言ったか覚えてないし、どっちでも良いか。(ひでぇ)





ともあれ、それじゃあダメなんだなと、私はこの日、2000年生まれの代田くんに教えてもらった。
(ミレニアムベイビーってもう23なんだぜ)





そして、その日を境に、一応現在までの数ヶ月間、喧嘩することはなくなっている。


私は、今までよりも真剣に企画を考える様になったし、忙しくても後回しにせず台本を書いて、出不精で人嫌いだけど、色んな人に会って話を聞いたり、作戦を立てることに頭を使った。


代田くんは代田くんで、日焼け止めはもちろん、日傘まで刺して毎日通勤する様になり、真面目に美容に取り組み始めたらしい。

この間は脱毛にも行って、自分で剃毛して全身血まみれになったそうな(やめろ笑)

そして、激務の中、編集スタッフを育てながら、同時にプロも探してディレクションしてくれたし、チャンネルの事もよく勉強した内容のマトを得た提案が増えた。




ある日、偶然、代田くんが編集さんに指示している場面に出くわした時に驚いた事がある。

『このBGM変えて。流行りの曲入れるのは確かにスタンダードなんだけど、ココは、ささえりさんが専門家として説明する場面だから、個性潰してると思うんだよね。』

『ささえりさんは、低音の音量を上げると声がキレイに聞こえるから、ここイジってあげて』


…声までいじってくれてるの!?


確かに私は、高音を出すのが苦手で
低音を響かせた方が声が通るんだけど

そんなこと代田に話したことないのに、勝手に聞いて分かってたってこと?



他にも

私の特徴を活かすために
説得するポイントではこのエフェクト。
ココの角が合ってない。
テロップの位置が違う。など

想像を絶する細やかなこだわりが炸裂した指示内容で、ここまで自分の特徴を理解して良さを引き出す編集をしてくれる人には、どれだけお金を出しても2人と会えないだろうなと、その時思った。


最初は、あいずち一個マトモに打てなくて、カットすら全くセンスのなかった彼がここまで成長するのに、一体どれだけ努力したんだろうか。




そりゃあ、私に昼まで寝られてたら腹も立つわな。笑




改めて代田に頭脳の部分は全て私と言ったことを謝った。


すると…

『とりあえず本気で売れてください。
僕が神輿担ぎますから、ささえりさんは上で暴れててください。』

と、言う代田くん。
(カッコつけるなだせえぞ)






私には才能がないから、相当努力しないといけないと思うし、どれだけ努力したって売れるかなんて正直分からない。



でも、スタートラインに立たずに終わるのも嫌だから、これからは真剣に売れるための努力をしていこうと思います。


これからは私が美容家として売れるために何をするのか、売れるために、どういう日々を送っているのかをノートに書いていきます。



精一杯頑張るけど、もしもダメだった時は、誰か一緒に笑ってくれたら嬉しいな。


今回も長い文章読んでくれてありがとう!

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