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日記:愛する街へ、そこで生きる人たちへ。

私には2つだけ誇れることがある。

ずっとやりたかった仕事をやれていることと、
ずっと住みたかった街に住めていることだ。

下北沢の近くに住み始めて、1年半になる。

学生時代、よく聴くバンドの多くが下北のライブハウスの出身であったことから、
自分もその「聖地」に足繁く通った。

最初はライブハウスだけが目当てだったけれど、
何度も行くうちに飲食店やら古着屋やら雑貨屋やら街全体の雰囲気やらに魅力を感じて、住みたいと思うようになった。
数年後、その目標は達成された。


下北沢には個人が経営している、こじんまりとした店が多い。
だからオーナーの好みとかこだわりとか、もっと言えば為人みたいなのがわかりやすく店の在り方に表れている気がする。

たとえば超音質の良いスピーカーから超素敵な曲が流れていて、食べ物だけじゃなくて音楽も味わえるカレー屋があったり、

コーヒーの種類は10種類くらいあるのに、食べ物はチーズケーキしかない(でもそのチーズケーキがめちゃめちゃ美味しい)喫茶店があったり、

バンドマンがライブをするだけじゃなくて、ミュージシャンやスタッフによるカラオケ大会が開かれたり(観覧可能)、「スナック〇〇(店員名)」という形で店員さんが客にお酒を振る舞うアットホームなライブハウスがあったりする。

この街でしか見れないもの、聴けないもの、体験できないものがあるーーそう思える瞬間がたくさんあるから、きっとこの街は多くの人の憧れの場所になったんだと思う。

私ももれなく魅了されたひとりだ。


***

昨日、下北沢に1ヶ月ぶりくらいに出かけた。とあるお店のガトーショコラがどうしても食べたくなったので、テイクアウトしようと思った。

そして駅に着いて、南口商店街の方を見下ろして驚いた。


こんなに人が少ない下北、初めて見た……。


土曜の南口商店街は、通常なら人混みが凄すぎて、多少ぶつかり合うことを承知していないと通れないくらい。
しかし昨日は、人に当たる必要がないほどガラガラだった。

加えて、自分が贔屓にしている店や、ずっと前から気になっていた店も多くが閉店状態。

昨年11月にオープンしたばかりでやっと下北に馴染み始めたシモキタエキウエも、私が見た限りでは16店舗中3店舗くらいしか営業していなかった。


緊急事態宣言が出され、外出を控えて家に籠ることが求められている今、私の目に映った下北沢の光景は、結果としては「当然」のことなんだと思う(こんなこと言いたくないけれど)。

でも、その景色が辛すぎて、泣きそうな気持ちになっている自分がいた。

…私の知ってる下北沢じゃないな。


***

目的のお店で頼んだケーキをもらう際、店員さんが物腰柔らかな言い方で一つ一つ確認してくれて、おまけで紅茶をサービスしてくれた。

これは他のお店に行った時も思ったけど、
大変なのはそちら側のはずなのに、得をするのはこちら側ばかりだ。
なんだか申し訳ない気持ちになる。


家に帰って食べたガトーショコラは、いつも通りに美味しかった。
こんな非常時でも、美味しいものが美味しいまま提供される。
その事実に感動を覚えずにはいられなかった。


…と同時に、こういうお店を守るにはどうすればいいんだろう、と思った。


今の外出自粛の状態が続けば、立ち行かなくなるお店が出てくるのはわかりきっていること。
ましてや冒頭に書いたけれど、下北は個人で営業しているところが多い。大型チェーン店ほどの安定した(?)経営基盤を持ち合わせていない店がほとんどなんじゃないかと思う(もちろん、チェーン店はチェーン店で大変だと思うけれど)。
これは飲食店だけじゃなくて、ライブハウスや劇場、映画館、古着屋、雑貨屋などにも言えることだ。


大好きな街の元気のなさを見て、私は「大切な場所を失いたくない」と強く思った。

朝までひたすら踊りまくったり、

友人と飲み食いしながらライブの感想を語り合ったり、

異国の古着の個性が強すぎるデザインに度肝を抜かれたり、

失恋の痛みを忘れるくらい美味しいパンケーキを食べたりした、

思い出の場所を失いたくない。

…いや、思い出というより今や生活の一部なのだ。


今の私にできることは相変わらず「購入」とか「利用」くらいだけど、
それでいいなら積極的にお金を使っていきたいし、他の手段があるなら、そちらもやっていきたい。

例の「10万円」がもし手に入ったら、自分がお世話になった場所で使いまくろう。


この殴り書きの文章は、祈りにもなれないお粗末なものかもしれない。
でも愛する街・下北沢とその周辺地域、そしてそこで生きる人たちに走り続けてもらいたいという思いがあって、その思いが抑えきれなくて、認めた。

どうかまた、元気に満ちた街に戻りますように。

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