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ヒッチハイク#鳥と宗教

西宮名塩(兵庫)~尾道(広島)までのヒッチハイクの記録です。

ヒッチハイク始まるまで

朝起きると事件が発覚。ケータイを充電し忘れたまま寝落ちしてしまっていたのです。そのため、本当は7時ごろには出発しようとしていたところ、充電のため少し遅らし、8時半ごろに出発しました。
実のところ、ヒッチハイクをするとは決めていましたが、準備はめちゃめちゃ雑でした。そのためか、当日の朝まで実感が湧かず、出発もちゃっかり一日遅らしていたぐらいです。でもさすがに今日は行かないともう一生ヒッチハイクできないと思って、雨の中、「行くしかないかー」みたいな気持ちで家を出ました。

歴史を感じる西宮名塩駅。

ヒッチハイクのスタート地点は、西宮名塩SA。一番ヒッチハイク成功率が高い場所がSAらしいので、そこまで自力で移動します。インターネットで調べたところ、歩いてSAに入れそうだったので、それを信じて行きました。
しかし、現地についてみると入り口は見当たりません。よくよく調べてみると、どうやら歩いて入れるのは上り(中国→関西方向)のみで、下り(関西→中国方向)は徒歩で入れなさそう。Googlemapも珍しくお手上げ状態で、町の方に聞いてもだれも分からない。完全に途方に暮れながら彷徨っていました。

駅から西宮名塩SA(下り)への道。
薄暗くて人通りの少ない場所だったのでおススメはしません。

1時間歩き回ったあげく、ようやく下り方面のSAへ入る道を見つけました。既にこの時点でヘトヘトでした。

ヒッチハイク1組目


電話ボックスの中で書いた「岡山方面」
恥ずかしさと緊張でそこから出るのが恐怖でした。

ヒッチハイクって色々流儀というか方法があるみたいです。が、此岸くんは最もオーソドックスな「画用紙スタイル」で行くことにしました。ちなみに難易度マックスは、直接車内の人に話しかけにいく「飛び込み営業スタイル」です。


西宮名塩SA。寄り道する車の量がとても多いSA。

SAの前で画用紙を持って立つと、ものすごく視線を感じます。マジで恥ずかしかったです。とある先輩ヒッチハイカーのブログで「近辺に車を停車するスペースがあるところに立つ」、「ただ画用紙もつだけじゃ車は止まってくれないから、表情、ジェスチャー、何なら声までだしてアピールする」て書いてあって、とりあえずそれだけを意識してました。

スルーされること10台ぐらい。完全無視もあれば、首を振ったり、申し訳なさそうな顔をしてくれるドライバーもいる。そんな中、スピードを落として停止してくれる車がありました。「鳥取まで行く予定だが途中まででもいいか?」とのこと。返事はもちろん「はい」一択。それなら..ということで、後部座席に乗せていただきました。記念すべき一台目。ヒッチハイクを始めてからわずか5分ほどでした。

 乗せていただいたのは、鳥取の実家に帰る途中のご夫婦の車。ご主人は、長年働いていた会社がバブルの影響を受けて倒産し、その後転職を繰り返すも人間関係の軋轢や労働環境で納得がいかず、55歳で独立を決心されたそうです。自分の会社を立ち上げ、今年で16年目。誠実で責任感の強い方でした。
 実はこのご夫妻は、キリスト教の聖書を学ばれていて、車内で聖書の話をたくさんしてくださいました。此岸くんを車に乗せてくれたのも「日頃から神様への愛、人への愛を実践しよう」と意識されていたから、困っている人を見たときに見過ごせなかったそうなんです。途中のSAに寄った際に、「うちらの話聞いてくれてありがとう。お昼御馳走するわ」とまで言ってもらって、至れり尽くせりです。別れ際には、「神のご加護を」と言って車から下ろしてくれて、内面的にも素敵なお二人でした。

ただ、一組目のご夫婦が降ろしてくださったのは、鳥取方向へと高速が分岐する手前のPA。車がほとんど停まらない、とても小さなPAでした。

ヒッチハイク2組目


2台目を待っていた揖保川PA。
トイレと自販機しかない。

 一回目はすぐ車が見つかったのに、今度は中々見つかりません。というか、PAへ入る車が破壊的に少ない。「画用紙スタイル」でしばらくたっていましたがその限界が見えてきました。
 立ち続けること30分。誰も止まってくれません。
 埒が明かず、「飛び込み営業スタイル」もやらないとまずいな、、と思い始めました。成果がでず、雨の中たちっぱなしで身体も冷えてくると、思考もネガティブになってきます。

 そんな矢先「おい、お前、こんなとこでヒッチハイクしてんか」と停車中のトラックの中からおっちゃんが大声で呼びかけてきました。そのトラックはすぐ高速から降りるみたいですが、もうちょっとだけ大きい一個だけ先のPAまで送り届けてくれました。

 そのドライバーは、長距離ドライバー歴30年以上。鶏糞(ニワトリのウンコ)を肥料として農家へ運び、空になったタンクを積んで牧場へ帰るところだったそうです。車の中で、たくさんの長距離ドライバーの裏話や、ニワトリ養鶏の話を聞くことができました。気さくでハキハキしたタイプの優しいおっちゃんでした。

ヒッチハイク3組目


トイレと自販機とちっちゃいフードコート付きPA

 画用紙スタイルには限界を感じていたので、ちょっとずつ「飛び込み営業スタイル」をやり始めました。ガンガン声かけれてたわけじゃないです。簡単には結果がでず、20分ぐらいは断られたりスルーされたりしてたと思います。でも、そんな感じでちょっと積極的になると、僕の様子を見ていた向こうから声をかけてくれました。その車も行き先は違う方面だったのですが、さらに大きなSAを途中通るので、そこまで乗せてもらうことにしました。

 3番目の車は、島根へ帰る親子の車です。親子と言っても、息子さんの方はぼくより15祭ぐらい年上、ぐらいの感じです。お仕事を聞くと、実はお寺の住職さん。キリスト教の次は浄土真宗の仏教か!と若干驚きました。が、お二人ともこれまた包容力があって、超ジェントルマンな感じでした。僕の姿に「ご縁」を感じてくれたそうです。「ご縁」に感謝するというのはどの宗教でも共通するねんなーとか勝手に考えさせられました。

ヒッチハイク4組目


最後のヒッチハイク場所。勝央SA

 4組目は、広島で農場を経営されているご夫婦。ダチョウを40羽も飼育していて、ダチョウ料理を開発しているそうです。テレビやフェスティバルにも頻繁にお店を出していて、常連客もついているぐらい人気な料理。車に乗っている間もテレビ局から電話がかかってきて取材の調整をしたりしていました。55歳で公務員を早期退職してから始めた農業の道。好きなことやって、全力で生きてる旦那さん、それをボヤキつつ献身的に支える奥さん、お二人とも根底には愛があってめっちゃカッコいいな―って思いました。
 本当は少し方面が違うので、手前のSAで降ろしてもらう予定だったんですけど、「空も暗くなってきて心配じゃけえ」ということで、遠回りをし、わざわざ高速を降りてまで、近くの場所まで送り届けてくれました。しかも、GW中に出店しているフェスのご招待までしてもらいました。「ワイン試飲し放題だし、カレーはご馳走するよ」て。いや良いんですか!?
 正直なところ、勝央を出た時点で16時半ごろで空も薄暗くなり始め、広島までは1時間半以上あったので、正直今日中は難しいとあきらめていました。最後の最後、目的地まで安全に送り届けてくださったご夫婦には感謝しかありません。


ヒッチハイクを終えて

 たった一言でいうなら、「感謝」です。ありがたい。僕を乗せてくださった方、それぞれに愛があって、人としても素敵な方ばかりで、乗せてもらっているのは僕の方なのに、降ろす時に「こちらこそありがとう」って言ってくれるんですよ。僕はガソリン代すら払ってないのに。なんなら、昼ご飯御馳走してもらってるのに。人格として出来上がりすぎてますよね。ヒッチハイク界隈で有名な言葉があります。「ヒッチハイクで一番勇気があるのは、ヒッチハイクをする人ではなく、見ず知らずの他人を車に乗せてあげる人だ。」見ず知らずの僕を無条件に受け入れてくださったことには感謝以外どんな言葉でも言い表せない気持ちです。

 ヒッチハイク、とても楽しかったです。たった1日でしたが、色んなドラマに、色んな人生に出会うことができました。どれも、普段の日常生活では会うはずがなかった人たちです。車内では、ずっとひたすら「全身傾聴」してました。自分の人としての幅、考え方の幅がまた一つが広がったように感じています

 「此岸くんは、人のあたたかみを信じているんだね」と言われた一言が忘れられません。


目的地、尾道駅。

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