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3DプリンターでIIDXコントローラーを作る ボタン編

Amazoのセールで3Dプリンターが2万円を切っていたため、これを機に購入した
工作をしているといろいろなパーツが必要になるが、例によってそれらはニッチなものばかりで、田舎のホームセンターなどには売っていない。ネットでポチろうとも到着するまで時間がかかるし、寸法が合っているかも実物を見てみないと不安だ
それならやはり自分で作ってしまうのが一番という結論に行き着く。そうすれば失敗しても自分の責任だし、3DCADについても学べる
このnoteでは音ゲーのコントローラーを自作したり改造したりする記事が多い。それらは売っているパーツを組み合わせたり、木材を加工したり、半分は手作りだが半分は既製品の構成だ
どうせならボタンも3Dプリンターで作れればいいんじゃないか?と思いつつ、今回は制作までの道のりを当記事にまとめることにした

1,3Dプリンターの購入

購入したのはClearityのEnder 3。最初はもっと上位グレードのものを買おうとしたのだが、結局ケチってこれを買ってしまった。Ender 3 S1が5万近くするのに対し、こちらはタイムセールで2万を切っていた
販売ページを見ていると、どのモデルもちょくちょくタイムセールを行っているようだ。購入を考えている方はセールを狙ってみてはどうか

3Dプリンターは単体では使えない。プリントのための材料(フィラメント)が必要になる。まとめ買いがお得なのでこれもClearityの純正品を購入した

2,テスト印刷をしてみる

3Dプリンターに使うモデルイメージはインターネット上にもたくさん公開されている。せっかくなので音ゲーっぽいもので試作してみようと思い探したらこれが出てきた

これをサイズ50%に縮小して印刷。できたものがこちら

小さいせいで少し粗が目立つが、造形は良し

ついでに3Dモデルの作成にも慣れるため、ポップンのコントローラーも作って印刷してみた

着色7級

かなり良い感じ。ポップンのほうはキーホルダーとしてギターケースに付けることにした
↓STLファイルはこちら
ポップンキーホルダーのSTL

使用したソフトはFusion 360。おそらく3Dプリンターで一番使われている3DCADソフトなのではというほど頻繁に紹介されている。個人利用なら機能制限はあるが無料で使える。使いやすくて早速四六時中弄り回している

3,IIDXボタンの3Dモデルを作る

いきなり完成品が出てくる。寸法などは後述のSTLファイルを参照

丸一日かけて作ったものが上記。IIDXのボタンをメンテナンスしたことがある人なら誰でも分かるアレ
三和ボタンと組み合わせてみると、良い感じにハマってくれる。3Dプリンターの性能がうかがえる瞬間だ。もっとガタガタなものになるかと思っていたが、精度はかなり良いらしい
ただし印刷する段階で何度かミスがあった。Z軸が合っていないのか、ノズルが浮いてしまい、成形されるはずだったプラスチックが一本の線となって絡まり合う失敗だ。3D界隈ではこうして出来上がったものを「焼きそば」と呼んでいるらしい

工作に犠牲はつきもの

寸法などを微調整しながら数日かけてできたものがこちら

構造を単純化するためランプホルダーは諦めることにした。素材が素材なので中でLEDを光らせても透過しない可能性が高い。ランプを付けると配線がまたややこしくなる上、ボタンが光っていても光らなくてもプレイには影響が無い
では押し心地はどうかというと

左が3Dプリンター製、右が三和製。引っ掛かりは感じられないが多少のもっさり感がある。しかし音を聞いてみると、三和製はボタン同士がぶつかり合うカチカチといった音が鳴るのに対し、3Dプリンター製はほぼスイッチ音しかしない。スイッチを外すとカサカサと掠れたような音であり、静音性には期待が持てる

4,パーツ説明&バリ取りのポイント

前置きが長くなったが、お待ちかねの3DモデルのファイルをSTL形式で公開する。各寸法は手元の三和ボタンとAliExpressで注文した中華製ボタンを参考にした
そのため各パーツは多少の互換性がある。パーツごとに説明していく
zipファイル内の「iidx button ○.stl」は各見出しの番号に準拠
プリント時間と使用フィラメント量はUltimaker Curaでの測定値(インフィル20%)
下記がIIDXボタンのSTLファイル。なお、当ファイルはMITライセンスとなっています
IIDX用ボタンの3Dモデル一式

1&5,ボタン上部

互換性:微妙(ボタン下部との組み合わせ次第ではストロークが狂う)
プリント時間:2時間12分(①1時間46分+⑤26分)
使用フィラメント量:8g(①7g+⑤1g)

iidx button 1.stl
iidx button 5.stl
印刷したもの(1)
印刷したもの(5)

ボタン上部、実際に押す部分。PLA素材は柔軟性が無く、足を曲げて押し込もうとすると折れるため、2つのパーツに分ける。パーツ5と組み合わせて使う

こうすることで足を曲げたときに折れなくなる
バリ取りポイントは以下の5箇所

足を取り付ける部分とバネを入れる部分
足の部分。ここにバリが残ってるとストロークが浅くなる

2,ボタン下部

互換性:微妙(ボタン上部との組み合わせ次第でストロークが狂う)
プリント時間:2時間18分
使用フィラメント量:7g

iidx button 2.stl
印刷したもの

ボタン上部を押し込む部分。間にバネが入ることでボタン機構が出来上がる
対策はしているが、無茶な組み立て方をするとボルト部分の根本がもげやすい。インフィル率は高めを推奨
バリ取りポイントは2箇所

足の先端が引っかかる部分。ここを綺麗にしないとストロークが浅くなる

3,フタ部分

互換性:あり
プリント時間:1時間33分
使用フィラメント量:6g

iidx button 3.stl
印刷したもの

ボタン下部とプレートを固定するためのフタ。他メーカーのフタの部分と互換性があるため、そちらがあるなら作らなくてもよい
バリ取りポイントは無し

4,スイッチホルダー

互換性:無し
プリント時間:52分
使用フィラメント量:2g

iidx button 4.stl
印刷したもの

スイッチホルダー。オムロンスイッチを使用可能。本来ならランプホルダーも兼ねているが、前述の通りランプホルダーは割愛して単純な構造にしている
これも元は一体化してるパーツにスイッチをねじ込む形だったが、折れる危険を考慮して両側からスイッチを挟む形にした
ひねってジョイントするという機構上、壊れやすいのでインフィル率は高め推奨
ボタン下部にジョイントさせることで2パーツが固定される
バリ取りポイントは以下の2箇所

2パーツ間が空かないように、結合部のバリ取りが必要

6,ナット

互換性:あり
プリント時間:42分
使用フィラメント量:2g

iidx button 6.stl
印刷したもの

ボタン下部とフタを固定するためのナット。互換性があるため、三和ボタンなどが既にある場合は作らなくてもよい。ちなみに規格はM24×2
バリ取りポイントは無し

5,組み立て方

組み立て方を図解するが、三和ボタン等に触れたことがある人なら説明しなくても分かるはず。それらと同じように組み立てるとよい。三和ボタンと違うのは、スイッチホルダーが回して固定するタイプだという点だ
なお、バネとスイッチは各自用意されたし

1と5を組み合わせたパーツにバネを入れる
バネを格納しながら足を内側に曲げ、2のパーツに押し込む
ボタンっぽくなる
4のパーツでマイクロスイッチを挟み込む
2の下部、凹凸に合うようにはめ込んで
時計回りに回す
完成!

プレート(土台)に組み込む際はスイッチホルダーを外し、フタ(3)とナット(6)で固定してからスイッチホルダーをジョイントしてください
配線などについては以下の記事を参照

6,テストプレイと総評

見た目はそれっぽくても遊べないんじゃ意味がない。ということでテストプレイをしてみた

個人の主観としては「普通に遊べる」ものとなったが、純正のボタンとの違いはやはり無視できない。それをどう思うかはプレイヤー次第のため、こればかりは実際に使ってもらうしかない
多少のボタンハマりがあるがそこは設計を見直して改善していく。改善したモデルは随時この記事に載せていく予定
初期投資が必要になるが材料費だけ見ればおそらく世に出回っているIIDX用ボタンの中では最も安い(1g3円として総材料25g*3で75円。インフィル率を上げても100円以下)。壊れたらいつでもプリントして補充できる。フィラメントを変えれば色も変えられる。使い捨てボタンとして見れば悪くないと思う

DPの動画。3Dプリンター製のほうが気持ち静かに聞こえる。素材にもよるのだろうか
今回はボタンについて記事を書いた。皿については次回の記事へ続く