ボキッといきました

人間の身体はもろい。

先日、突き指をして思った。

高い感受性をもつ僕は、箸が転べばさめざめと泣き、餃子がうまく焼けないとわめく。

そんなぼくであるからして、突き指で物思いに耽けるなんてイージー。

突き指のいきさつはホントたいしたことないんだけど、まあこんなことがあったということを。

家の近所に初心者歓迎のバスケットサークルがあって、月に3-4回行っている。中学の時はバスケ部だったので、多少はできる。ただ、当時(中3)は身長150センチそこそこで、体重は40キロちょっとのもやし体型だったわけで、今は身長183センチ、体重は90キロ弱。スリーサイズは全て120。いわばずんどう、ドラム缶、ドンキーコングの樽。

つまり最近になって、転生モノよろしく、島村は何かしらのでかい容器に生まれ変わってバスケットのフィールドに帰ってきたのです。あと念のためいうとバスケットをやり直し始めたのは1年くらい前で、決してあの映画の影響ではなく、そのことはちゃんといいたい。それだけをいいたい。

全員、流川楓


で、その家の近くのバスケットサークルについて。そこに来る参加者は押しなべてコミュニケーションの波動が高いというか、非言語でのコミュニケーションが達者というか。いわば全員流川楓のようなクールなメンタリティであるからして、会場の体育館でも挨拶なんてない。そう、ここはチームスポーツのシンギュラリティ。集合時間になったらなんとなく個別にシューティングをして、ランダムに組み分けしたら黙々と試合する。流川bot。

そんなサークルで僕が発する唯一の言葉といえば「マンツーですか? ゾーンですか?(ディフェンスの種類)」くらいであり、それさえない時もある。

で、まあ、突き指なんですけど。その日も、シャカシャカイヤホンから音漏れさせながら体育館に入って、当然誰に挨拶するわけでもなく、ストレッチして、バッシュの紐をキツく結び、「さぁーてとシューティングでもするか」とボールをぽーんと上に投げて床に弾んだボールをキャッチしたら、ボキッと、左の小指をやってしまったわけです。

結構な音が鳴ったのか、何人かが振り向いた。当然目撃者は「どあほう…」といってるような、いってないような。

これが試合中とかだったらまだアドレナリンとか出て気づかない、痛くないなんてこともあるかもしれないけど、まだアップもしてないカチカチの段階だったもんで普段よりも痛い気がする(普段よりってどういうことよ)。

痛みを隠して何事もなかったようにシューティングをしてみるものの、やっぱり痛い。利き手の小指をやってしまったので、シュートを打つ気力も出ない。

いまいち体があったまらないうちに試合が始まってしまい、試合中は突き指が気になってパスキャッチさえままならなかった。そうしてついにはチームメイトからも愛想を尽かされたのか、パスが回ってくることもなくなり、ただコートを右へ左へドタドタ走るだけの容器となってしまい、もう心は泣いていた。しかし、まだ走れているならその巨体を活かして存在感としてまだチームに貢献できるなさものの、普通に疲れてしまい歩き出す始末。試合中に歩いてしまえば、それはもう歩く容器。容器でございます。

しかし、ここでチャンス到来。歩いているもんだからディフェンスからオフェンスに変われば、誰よりも相手リングの近くにいる僕であって、速攻の鋭いパスがビュンとこちら向かってきた。

なんとかしなくては! 名誉挽回するならここだ! 

しかし当然チャンスはピンチでもある。コートの端から思い切り投げられたボールが低い弾道のまま直線的にこちらにくる。キャッチしたら確実に指が終わる。そう確信させる勢いがあった。どうすればいい…。素のままキャッチしたら指がいく。せめて、一度緩衝しなくては……。

ぼくは飛んでくるボールに対してサッカーのように胸トラップをして、球を上空に浮上させてから「バーブー」と飛びつきキャッチに成功させた。かなりみっともない奇跡的なキャッチであった。「おおっ」という感嘆の声が聞こえた(気がした)。キャッチしたものの、シンプルにシュートを外してしまい速攻は成功しなかったが(当然、利き手を突き指してるもんで)、そんなことはどうでもいい。なにかをなしえた気がする。

それ以降は活躍することもなく、再びコートを右へ左へただ走るだけの容器に成り下がってしまったがいいのである。ボールが止まって見える、体が導かれるように自然と動く。そんなゾーンに入ったような集中でアクロバティックな(そして死ぬほどださい)ボールキャッチができたのだから。

これだから辞められねえぜ……、とその日も帰ってビールをゴクゴク飲み、バスケットの消費カロリーの穴埋めしたのでした。バスケットってどんなスポーツだっけ? たまに思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?