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テクノ新譜試聴メモ:2020-04

Beatportのほぼ全曲1.29USD+最大30%オフのセールも今月いっぱいですね。この機会に、3~4年はご無沙汰だったドラムンベース界隈の新譜を漁ったりなんかして、大量に買い込んでしまいました。

4月のテクノ新譜チェックです。

C&G Southsystem - Dual EP (Mark Broom Edit) [Conform]

今月のビッグニュースといえば、何と言っても十数年の沈黙を破って本格再始動を始めたナポリ・ハードミニマルの雄Gaetano Parisio (Gaetek)、その先駆けとなるConformレーベルの復活がある。ここでわたしがいかにGaetekのファンであるかを書き出すと止まらなくなるのでやめておきますが、とにかく昨今のテクノのロウ&ハード化とぴったり重なる、これ以上ないタイミングでの復活で、これはもう期待しかないわけです(復活の経緯はこちらのインタビュー記事に詳しい)。

15年ぶりのEPとなるConformの25番は"Conform Re-Touched Series Vol.1"と題するリミックス盤で、リミキサーにBen Sims、Mark Broom、James Ruskin、Truncateと錚錚たる顔ぶれ。なかでも大好きだった3番のDual EPのB1を、原曲のドライブ感を生かしつつモダンでハイファイに仕上げた作品が良かった。他も全部いい。

原曲はMarco CarolaとGaetekのコラボ

これを記念してBE-AT.TVでGaetano Parisioのミックスが公開されたんだけど、これがまた往年のハードミニマルをアナログ3デッキで繋いでいくストロングスタイルでカッコよかった。どうやら長いブランクを経ても彼の美学は変わっていないようで、これからのConformやARTのプロジェクトで実際にどんな「今の音」を表現していくのか、ますます楽しみだな。

Mark Broom - Midnight [Rekids]

先のリミックス仕事もそうだけど、最近のマークブルームは安定してカッコよく、こういうピアノネタのローファイなハウスでもじっくりとファンクネスを聞かせてくれる。B1にこういう曲が入っているEP、好きだ…。

Mike Parker - The Melting Mask [Spazio Disponibile]

これもまあまあの事件だと思うんですけど、Mike Parkerのドラムンベースが出た! アナログシンセで脳を直接かき混ぜるようなヒプノティックなテクノを20年以上作り続けてきたMike Parkerだけど、これまでビートに関する実験はあまりしてこなくて、基本4つ打ちばかりだった。その意味で今作はかなり突っ込んでいる。

ASCとかがテクノとドラムンベースの境界を曖昧にしていくなかで、今作の精神性はそれにかなり近いものがあり、実際ミックスしてみてもまったく違和感がなかった。一口でミニマルなドラムンベースといっても様々なアプローチがあると思う。この路線、可能性しか感じないので期待しています。

Joachim Spieth - Ultradian [Affin]

Affinから出たJoachim Spiethのアンビエント・アルバム"Tides"はおすすめ。上から下まで全部の帯域に圧のある轟音のようなシンセパッド持続音が、時間経過とともに表題のとおり潮のように押しては返す、宇宙的な瞑想作品。なかでもこの曲だけが唯一ビート感のあるトラックで、DJでも使える。

Kike Pravda - Curved Force [Clergy]

Clericの主宰するClergyレーベルから出た23曲入りコンピ"Clergy Visions 01"はヤバく、モダン・ロウ・テクノの代表的アーティストを端から集めてきたようなラインナップだけでも本気度が伝わってくる。Slam、Setaoc Mass、Sleeparchive、Tensal、Moddullar、Kwartz、Vegim、Endlec…この人選で良くないわけがないんだけど、ひとつ挙げるならスペインのKike Pravdaのヒプノ系の重いトラックが使いやすくて良かった。

Costello - Chrome (TWR72 Remix) [Costello]

程よいオーバードライブが気持ちいいミニマル。終始前のめりのグルーヴがカッコよく、控えめのブレイクでのテンションの上げ下げもクールだ。

Keikari - Perspectives [Secession]

クロアチアのVolsterが立ち上げた新レーベルSecessionの2番はKeikariやRyogo Yamamoriらを迎えたV.A.盤。正直まだレーベルカラーは見えてこないけど、ダークで重いテクノを探っている感じはある。

PWCCA - Adaptacion Evolutiva [Inducted Waves]

マドリッドのDr CyanideことPWCCAのレーベルInducted Wavesの7番。よく知らなかったんだけど、Oscar MuleroのWarm Upなどのダーク・インダストリアル・テクノ界隈で長く活動しているアーティストだそう。ピークタイムを見据えたかなり攻撃的な音像で好み。

Spotifyプレイリストも更新しておきました。


「テクノ新譜試聴メモ」は、R-9が習慣的に行っている新譜チェックのなかから、気になったトラックについて個人的な覚え書きを残しておくものです。原則としてBeatport上で当月内にEPないしアルバムとして新規にリリースされたものが対象。通常は楽曲単位での紹介、まれにEPやアルバム単位で紹介することもあります。

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